外壁ビューティで家を長持ち [第1回]

キレイに壁を“守る”塗装の適切な塗り替え時期

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外壁が粉っぽくなったら要注意

「外壁のつやや潤いがなくなってきた」。

 新築から10年目ほどでは、外壁の見た目の変化はつやや潤いが感じられなくなった程度かもしれません。外観が多少色あせてきたからといって、外壁の機能が著しく劣化するような深刻なトラブルも、実感が少ないものです。

「外壁の塗装は見た目の美しさを保つだけではなく、塗料で皮膜を作ることによって外壁材の劣化を防ぐ効果があります。外壁材の劣化はひび割れや腐食といったトラブルにつながるため、定期的な塗り替えはとても大切です」

 こう話すのは、外壁リフォームをはじめ、高気密住宅の建築から水回りの小さなリフォームまでを手掛ける吉田工務店社長の吉田誠治さん。ただ、メンテナンス周期は塗料の種類によっても大きな差があると言います。

「例えばアクリル系樹脂塗料。コストパフォーマンスがよいので、お手頃価格の建売住宅によく使われる塗料です。この塗料は5年目くらいから徐々に劣化が始まり、つや(光沢のある塗料の場合)や潤いがなくなってきて、やがて変色し表面を触ると粉がつくようになります。これをチョーキング現象といいますが、塗り替えの時期を知らせる黄色信号になります」

うちの外壁塗料は何年もつのか

 塗料によって耐用年数は違うので、今塗られている種類がわかれば、次の塗り替え時期のおおよその見当はつくというものです。

 ただ、木材やモルタル、軽量コンクリート、コンクリート打ちっぱなし、タイルなど見た目で区別できる外壁材とは異なり、そこに塗られた塗料の種類までは、なかなか区別ができません。

自宅の塗料は何かを知ることで、次のメンテナンスの時期がわかる。

 また、外壁材の中には塗装を必要としない材料もあります。タイルはその代表格。美しさのキレが長く続き、塗り替えのコストはかかりません。初期費用は高めですが、長い目で見ればお得考えることもできます。

 まだ普及には至っていませんが、樹脂製の外壁材もあり、これも塗り替えの必要はありません。逆に、コンクリートがむき出しで打ちっぱなしのように見えても、実は透明の塗装が施されていることもあります。白木のように見える木材の外壁にも、これを保護する塗装や、味わいを深める目的から柿の渋が塗られていたりもします。

※LIXILでは、初期費用は高いが長い目で考えるとお得でキレが続くタイル外壁をおススメしています。
www.lixil.co.jp/lineup/tile/exterior_wall/

 注文住宅の場合、仕上げの塗料は何にするか、カタログを見ながら工務店や設計士さんなどと相談をされた記憶があるのではないでしょうか。

 建売住宅でも、仕様書には外壁の塗装剤の種類が記載されているはずですし、築年数を重ねすでに塗り替えをしたお宅の場合は、前回の塗装時の見積書や工事仕様書から調べることができます。

 もしこれらの資料が手元にない場合は、外壁塗装業者に診断を依頼すれば、使われた塗料の種類はもちろん、劣化の進行度などから次回の塗装時期を導き出してもらえます」

 塗料の種類による塗り替え時期の目安は?

塗料の種類 耐用年数
アクリル系樹脂塗料 5~10年
ウレタン系樹脂塗料 8~10年
シリコン系樹脂塗料 10~15年
フッ素系樹脂塗料 15~20年

コストパフォーマンスのよいアクリル系樹脂塗料は、ほかの塗料に比べ耐用年数がやや短い。メーカーのカタログ、一般社団法人日本窯業外壁材協会などのデータを参照して作成。

環境によっても劣化の差が

 外壁は、紫外線(太陽光)をはじめ、風雨、雪、気温の変化など、過酷な条件から私たちの暮らしを守っています。そのため、たとえ同じ塗料であっても、居住環境によって外壁の寿命には大きく差があります。

条件によっても塗料のもちが大きく異なるという吉田社長。

「幼稚園の建て替えを手掛けたことがあります。住宅であまり使わないピンク色の壁なので、経年による色あせを心配しました。しかし、比較的耐用年数の短いアクリル系塗料だったにもかかわらず、15年以上経つ今も鮮やかなままです。園長先生から、どんな高級塗料を使ったのかとお問い合わせをいただいたほどです」

 その幼稚園の立地や構造から、平屋の園舎で軒が張り出していること、園庭には高い木や周りに2階建て住宅が取り囲み、横殴りの雨が壁に当たりにくいこと、夏は樹木が程よい日陰をつくり、直射日光が当たりにくいことなどが要因と考えられるそうです。

 塗料の耐用年数は種類によって異なりますが、建物の立地環境によってもメンテナンス時期は変わってきます。次回は、外壁自体のメンテンナンスについて注意点をご紹介します。

≪お話を伺った方≫

吉田誠治さん

1964年生まれ。工務店で4年間の大工修行の後、父親が経営する吉田工務店に入社、建築の現場でもまれながら建築士の資格も取得し、2011年に二代目社長に就任。外壁リフォームはもちろん、高気密住宅の施工から小さなリフォームまで幅広く手掛けている。設計士の視線と現場の状況を柔軟に折り合わせ、施主の要望に応える。
http://yoshidakoumuten.sakura.ne.jp/

文◎三星雅人
写真◎平野晋子 Shutterstock

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