シアタールームのニーズは男性だけ!?
映画や音楽、スポーツ中継など、迫力ある映像や音を自宅で心置きなく楽しみたい。シアタールームに魅力を感じる人は多いのではないでしょうか。
「シアタールームと言えば、昔は一部のコアな映画好きや音楽好きのものでした。しかし、最近では、時間に少し余裕を持てるようになってきた方が実現する “男の隠れ家”としてのニーズも高まってきています」と語るのは、建築計画家のジェイイシダさんです。
ご主人専用の書斎かつシアタールーム。隠れ家としてのシアタールームはもう特別なものではない。
実際に、シアタールームの設置は、圧倒的に男性主導のケースが多いといいます。
しかし、男性(夫)が“自らの隠れ家”としてのシアタールームにこだわる一方で、女性(妻)は一般的に、キッチンなど実用的な空間の充実を求めます。
家族それぞれの夢やこだわりがある中、限られた空間と予算で、どのように折り合いをつければよいのでしょうか。
「私たちは、家づくりのスタートとして、事前に医師のカルテのように調書をオーナー様に書いていただいています。ご夫婦でそれぞれ調書を書かれる場合もありますが、ディスカッションをして意見をまとめて書いていただいていることが多いですね。計画、設計、施工、それぞれの段階で打ち合わせを数多く設け、お互いに理解していただいて進めていくので、そのことが原因の夫婦喧嘩は皆無だと思います(笑)」(内村嘉治さん)
まずは、家族それぞれの希望や予算について、じっくりと話し合いを重ね理解を深めることが大切だといいます。
音楽スタジオの音響業者とのコラボをするほど、「音」の知識豊富なジェイイシダさん(左)と、チーフ・アーキテクト・リーダーの内村嘉治さん。
音漏れ対策としては地下室がベスト
地下室にシアタールームを設置。音漏れ対策は万全だが、予算に相当のゆとりがないと「夢」に終わるかも。
「予算的に苦しいと、家族から却下されるケースも、もちろんあります。でも、限られた予算でできる音漏れ対策にも、いろいろなものがありますよ」(イシダさん)
まず、予算に余裕がある場合、地下に設置するという方法が代表的だといいます。なぜなら、地下室は防音性が優れているからです。
「地下にシアタールームを設置すれば、音や振動を外に漏れないようにするのは簡単です。ただ、地下室を設置するのには、工事費の高騰もあって、少なくとも坪あたり200万円くらいの予算が必要です。掘削作業にかかる費用や、掘り起こした土を処分する費用はもちろん、地下水や雨水などの排水や防水のための費用など、施工時だけではなく、ランニングコストもかかります」(イシダさん)
戸建て住宅なら家の中心に設置
数十センチ地面を掘り、その残土を盛って半地下イメージの家を建て防音対策を施す。リビングにシアタールームを設け、ダイニングともつながっているが、移動式の遮音扉を付け、大音量で楽しむときは締めて外への音漏れを防ぐ。
思う存分大音量が楽しめるという地下の防音性は魅力ですが、コスト面を考えると、地下にシアタールームを設置できる人は、ほんの一握りと言えそうです。
地下以外では、どこにシアタールームを設置すればよいのでしょうか。
「まず、ご近所に迷惑がかからないこと。次に、家の他の部屋に迷惑がかからないこと。この二つの基本的な考え方をベースに、敷地、近隣、生活スタイル、家族構成なども考慮し、間取りや予算に合わせた設置場所を建築家などプロと一緒に考えていくと良いでしょう」(内村さん)
実際、一戸建ての場合、1階に設置することが多いそうです。さらにイシダさんはこうアドバイスしてくれました。
「音の発生源から距離があれば音は小さくなりますので、家の真ん中にシアタールームを設置すれば、他の部屋や収納、壁などを介すことができるので、外部への音漏れが少なくなります」
過去には、半地下のイメージで数十センチを掘って、そこに建物を建てたことがあるそうです。
「掘った土を家の周囲に盛るだけでも、かなり吸音してくれます。地下室に比べれば、予算もそれほどかかりません」(イシダさん)
窓は音を漏らしやすいため、多重サッシに。防音を優先し、壁を大きく取り、窓は明かり取り用と割り切りました。
写真のシアタールームは、奥様の楽器練習スペースでもあり、リビングも兼ねています。
このように、家族の理解があり、共用のスペースとして使えるなら、家族が嫌がる“男の隠れ家”にこもることもなくなります。
イシダさんによれば、プロは「依頼主の熱意が伝わると、限られた予算内であれこれ工夫をしてみようと頑張ることも多い」ということです。
もちろん、予算の桁が変わるような大幅な値引きが期待できると言うことではありません。豊富な経験とアイデアの引き出しをフルに活用して、予算内でよりよいものをつくろうと知恵を絞ってくれるという意味ですが、「シアタールームをつくりたい!」という熱意や思いを設計士に伝えることも大切なようです。
(後編に続く)
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