シリーズ男のリフォーム シアタールームの作り方[後編]

かつては「一人でこもる趣味の部屋」。今は「家族が集うリビングシアター」

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家は大きいより楽しいほうを優先

 趣味の映画や音楽、スポーツ中継など、臨場感ある映像や迫力ある音を自宅で心置きなく楽しめるシアタールーム。前編では、シアタールームを設置する方法、予算に合わせた設置場所などについてお伝えしました。

 一昔前と比べると、映像機器の高性能化は目覚ましく、液晶テレビの大画面化、高精度化、薄型化、そして低価格化もあり、機材面ではシアタールーム実現のハードルが下がったようです。ただ、建築設計家のジェイイシダさんと内村嘉治さんによれば「日本では、シアタールームを趣味の別部屋として設ける例はまだ少ない」そうです。

 それは日本の住宅事情に加え、最近の建築コストの上昇も無縁ではないとイシダさんは指摘します。

狭くても高機能な住宅を目指すユーザーが増え、家族がみんなで楽しめるリビングを重視する傾向のなか、シアタールームが注目されているとジェイイシダさん。

「ここ15年間で、建築コストは15~20%も上昇しています。このような状況で、“大きい家”より“楽しい家”を望む人が増えています。坪数が減っても、機能性を高くして、良いもの、楽しいものを求める方が多い。自分たちはもとより、来客があっても一緒に楽しめる家が求められているのが、最近の傾向です」

 こうした事情から、シアタールームは“男の隠れ家”ではなく、家族の団らんや来客との楽しい時間を過ごすリビングの付加設備として、設けるケースが増えてきているのだそうです。

「一昔前のシアタールームと言えば、プロジェクターでスクリーンに映し出すのが主流でしたが、今は大型の液晶テレビが主流です。大きめのテレビに5.1chサラウンドシステムを設ける例が多数を占めます。リビングを仕切ってシアタールーム化したり、セカンドリビングを設けたりすることで、リビングをシアタールーム的に利用する方法もあります」(内村嘉治さん)

リビングシアターという考え方

 憧れの“男の隠れ家”として、専用のシアタールームを設置することは、住環境や予算的に難しいのが現実です。

リビングにシアタールームを設置。高性能機材の価格がこなれて、実現のハードルは下がってきている。問題は音漏れ対策だ。

 しかし、リビング兼用の“リビングシアター”なら、スペース的にも予算的にもグッと身近なものになります。

 さらに、リビングの付加価値が上がり、家族や仲間と過ごす楽しみが増えるというわけです。休日に夫婦でじっくり映画を鑑賞するもよし、家族や気の合う仲間と飲食や会話を楽しみながらライブ映像やスポーツ中継で盛り上がるもよし。ライフスタイルに新たな楽しみが加わるのも、リビングシアターの魅力の一つです。

 建築費は上昇していますが、音響面では、高性能機材がずいぶん安く手に入る時代になりました。
 また、Wi-FiやBluetoothのおかげで、コードレス化も進んでいます。

将来、より高性能な機材がほしくなった時に対応できるよう、壁裏の配管、配線などの電気工事をやっておくといいという内村さん。

 ですが、マニアは、機材をつなぐケーブルにこだわる方も少なくありません。
 よりきれいな映像を求めたり、原音再生を望むクチには、これでは物足りなく感じられるかもしれません。

 現在手持ちの予算に限りがあるけれど、少しずつ理想のホームシアターを実現していきたいという場合には「コンセントや壁裏の配線など、電設工事は先行してやっておくといいですね」(内村さん)

 あとあとのことを考えて、最初にイメージやプランを練っておくことも大切なポイントのようです。

マンションでもシアタールームはできる

 シアタールーム設置で重要なのが、音対策です。遮音、防音、防振など、どのように対策の優先順位を考えれば良いのでしょうか。

その気になれば完全防音化して、マンション内にライブハウスを設けることも可能!

「聴きたい音量や音質の程度にもよります。音の種類にもいろいろあり、高音から低音まで対処の方法が異なります。例えば、太鼓やドラムに代表される低音の振動音はなかなか防ぎにくい。そうした防振音は、コンクリートなど比重が大きいので空気の振動伝播音を軽減します」(ジェイイシダさん)

「遮音と防音は、全般的な音域を吸収したり、跳ね返したり、伝播するのを軽減します。吸音材の密度、遮音シートのデータなどを判断しながら、最適な音対策を施していく。障壁が多いほど良いので、気密性が高いサッシを用いて二重サッシにするのも効果的です」(内村さん)

「マンションをリフォームしてホームシアターを設置する際、壁や天井の厚さは決まっているので、ドラム音などを防ぐのは簡単ではありません。しかし以前、ドラムが趣味のオーナーの依頼で、マンションにライブハウスを造った例もあります。時には、建築設計家と音響の専門家と一緒に対策をしていくこともあります」(イシダさん)

防音工事で難しいのは重低音。逆に高い音の遮音は簡単にできるという。

 この事例では「浮き床方式」と言って、コンクリートの床や壁、天井で囲まれた空間の内側にもう一層の床や壁、天井をつくり直したそうです。
 なんと、このライブハウスの階下は学習塾。
 その音漏れ対策がいかに完璧であるかがわかるというものです。

 ご近所トラブルを避けるためにも、外部への音漏れ対策は最重要課題です。
 また、良い音響を楽しむためにも、シアタールームの音対策は知識と経験豊富なプロを選ぶことも重要なポイントといえそうです。
 まずは、熱意をもってご自身の「夢」をプロに語ってみましょう。

お話を伺った方

株式会社ジェイ石田アソシエイツ
代表取締役・建築計画家 ジェイイシダさん
チーフ・アーキテクト・リーダー 内村嘉治さん

“素敵なライフスタイルづくり”と“自然と共に楽しめる建物”をモットーに、横浜・鎌倉・湘南・横須賀、東京を中心にデザイン注文住宅などを手がける建築家&設計士チーム。石田さんが手がけた鎌倉のマンション「鎌倉十番館」1階に週末専用オフィスを構える。

文◎渡辺タカコ インタビュー撮影◎末松正義

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