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狭小住宅は床面積が狭いため、モノを床に置くとたちまち空間がごちゃついて見えてしまいます。第3回は、狭小住宅だからこそ重要な収納のことについて、前回に引き続き一級建築士の葛西さんに伺います。
収納スペースを確保するよりもまず先にしておくべきことは、自分たちが生活するうえで必要なものがどれだけあるのかを把握し整理することです。
暮らしているうちにどうしてもモノは増えるもの。まずは持っているものを見直して、本当に使っているものだけを種類別に分けてみましょう。そのうえで何をどこで使うかを考えながら、最適な収納場所を考えていくことをおすすめします。
葛西さんの手掛ける住宅は、家の構造となる壁自体が棚のようなつくりになっています。これは収納場所を設けるためでもあり、家の強度を補うためでもあります。
「この構法は、独自に開発し特許を取得した『木造一方向ラーメン構法』です。従来の壁のあるスペースが収納になっていて、それが家を支えているのです。柱や壁も作らないし天井もそのまま吹き抜けなので、デッドスペースが生まれません。だからこそ狭い敷地を丸ごと住空間にできるのです。
狭い土地で家を建てるときの最大の問題は、大きな窓が作れないことと、収納が十分に設けられないことですが、その2つの問題が同時に解決できるのがこの構法のよいところです。部屋に大量のモノを収納する場合、重さで床がたわむこともありますが、この構法では構造部分がそのまま収納になっているので、どんなに重さがかかっても大丈夫なところもメリットです。
さらに収納スペースが天井まであるため、収納が足りないという話はほとんど聞きません。今までこの壁の収納スペースがすべてうまったというお宅は100軒中2軒だけで、それもかなりの収集家の方でした」
天井まで続く棚には、本や小物を置いたり、趣味のアルバムを飾ったり、洋服を掛けたりと、人によって使い方は様々です。
「棚の使い方にその人ならではの個性が見られるところがユニークですね。今は100円ショップや生活雑貨の店で、収納ボックスや組み立て式家具など、この棚をさらに有効に使えるような便利なグッズがたくさん売られています。そうしたものを組み合わせて、自分の使いやすいように収納スペースをつくれば、臨機応変に空間を生かせると思います」
モノがあることで狭いスペースがいっそう狭く見えてしまうので、狭小住宅ほど収納をしっかりと確保することが大事ですね。
狭小住宅でかさばるものを収納したいときに、ロフトを設けるケースも多いのですが、これにも注意が必要だそうです。
「ロフトに普段使わないものを収納するのはよいと思うのですが、その場合使いやすく設計しておくことが大事です。はしごだけだと結局使わなくなるケースが多いです。なるべく階段を作ることをおすすめします」
狭小住宅は限られた空間のため、色や素材づかいも大事になってきます。
「私の住宅では木は無垢のまま使うケースが多いのです。木はあたたかみがあってインテリアに合わせやすく飽きがこない素材です。さらに、耐久性が高く、湿気が多いと吸ってくれるため調湿効果があるというメリットもあります。
その他に、狭小住宅におすすめの色といえば、やはり解放感の白です。私の住宅でもとり入れています。白は明るさを補ってくれる効果もあります」
また、建築素材では、明るさと解放感が生まれる透明ガラスをとり入れることが多いそうです。
「よく使うのはバスルームです。狭小住宅だからバスルームは小さくなりがちですが、広く見せるために洗面所とバスルームの仕切りにガラスを使うのです。最初は丸見えになるガラスに抵抗感を持つ方も、目隠しシールなどで中を隠すこともできますから、使っているうちに慣れてしまうようです」
これまで3回にわたって狭小住宅を成功させる秘訣を伺ってきました。
狭い土地に住宅を建てようとすると、たくさんの部屋をつくれない、採光がとりにくいなど、様々な問題が生まれてきます。それでも、工夫しだいで住みやすい家を建てることができます。ぜひご自宅に合う方法をとり入れてみてください。
東京都生まれ。1982年 葛西潔建築設計事務所設立。
狭小住宅でも、採光・通気性を確保できる十分な開口と、木構造の必要とする耐震性の両方を叶えるために「木箱212構法」を開発。家族の生活の可能性を限定しない空間を提案している。
文◎濱田麻美
写真提供◎葛西潔建築設計事務所