「狭小収納」でもスッキリわが家。達人の神ワザ集【第3回】

家具選びは「空間選び」

空間
リビング・寝室・居室
関心
整理収納

衣類の片付けは
一連の流れを把握するところから

将来の子ども部屋を活用してつくった、壁一面のファミリークローゼット。
手前に見えるのが「一時置き場カゴ」。

 家の中にあって、最も循環する頻度が高いモノの一つが「衣類」。既存のウォークインクローゼットだけでは「アクセスが悪い」「足りない」ため、つい「めんどくさい」と、片づけないケースが多いようです。
収納スペースを増やすための視点や工夫にはどのようなものがあるのでしょうか。

「生活動線の中でよくアクセスする部屋の壁面が空いている場合は、背の高いラックを置いて壁面クローゼットにするのがオススメです。その場合、寝室などにあるメインのクローゼットは、オフシーズンの衣類や普段は使わないバッグなどをしまっておくバックヤードにしましょう。今使う衣類は、できるだけアクセスの良い場所に片づけるといいですね。
 洗濯物を外干しするのであれば、ベランダに近い場所にハンガーラックを増設すると、ハンガーごと取り込んでそのままかけられます。洗濯乾燥機を使うなら、洗濯機の近くに下着類だけでもしまえる引き出しがあると便利です」

「つい」放置しがちな衣類を先回りして定位置をつくる際、ちょっとしたアイテムが効果的なのだそう。

「ついつい椅子の背やソファなどにかけてしまいがちなアウターは、廊下や玄関のそばにフックを足してかけられるようにすると、帰宅後の自然な流れの中で片づけやすくなります。
 そして、日常の衣類を片づける場所に絶対に必要なのが、脱いだものを入れておく『一時置き場カゴ』です。脱いだパジャマや部屋着、クローゼットにしまう前にもう一度着たいニットなど、居場所がなくて浮いてしまいやすいものを投げ込んでおくためのもので、家族の人数分用意すれば、自分のモノは自分のカゴにしまう、と管理しやすくなります」

アクセントボード(マグネット対応)
マグネット対応なので、釘穴や糊残りを気にすることなく、気分や用途に合わせて飾るものを簡単にチェンジできます。
https://www.lixil.co.jp/lineup/livingroom_bedroom/accentboard/
Vietas(ヴィータス)
住まい全体の収納を「みせる」「つかう」「しまう」の3つのカタチで考えたここちよい収納。https://www.lixil.co.jp/lineup/livingroom_bedroom/vietas/

「誰の片づけを楽にするか」が家具選びのポイント

 もっと片づけやすい部屋にするために、家具や収納を追加する際に意識すべきこととして、「誰の片づけアクションを楽に、スムーズにしたいのか」を考えるべきだとseaさんは語ります。

「片づけ=めんどくさいを取り除く作業だとお伝えした通り、片づけやすい部屋にするには、誰のめんどくさいを軽くして、アクションしやすくするのかを決める必要があります。子どもに片づけ習慣をつけさせたいのか、家族のフォローをしている自分の負担を減らしたいのかで、どこにどんな収納を足すか変わってきますから」

 意外にも、家の狭さは片づけにおいて、必ずしもデメリットではないといいます。

ハンガーラックを増設して衣類の片づけをスムーズに。

「片づける際、モノと収納するスペースが近いというのはメリットでもあるんです。むしろ部屋数が多い戸建てのほうが、戻し場所が遠い・バラバラ、といった『めんどくさい』が生まれやすいので、収納の仕組みづくりには配慮する必要があります。

 典型的なのが階段の上り下り。2階にクローゼットや子ども部屋がある場合、帰宅した後のランドセルやバッグをしまうために階段を上るのはおっくうになります。その場合は一元管理も手だと思います。リビング横の和室などを着替え部屋にして、ハンガーラックやチェスト、カラーボックスなどを置き、そこに家族の日常の衣類やバッグをしまうことにするわけです。そうすると、少なくとも衣類の循環だけはコントロールできるようになります。

 お子さんがある程度自分で考えられる年齢であれば、どこにどんな収納があれば自分の衣類を片づけられるか、交渉するのも一手です。しまうハードルを下げるため、少しでも近い場所に自分の衣類用のスペースを設けるなら、どこに何を置いたらめんどくさいと思わずに済みそうか、意思決定に巻き込むと、導入後も家族に決めたルールを守ってもらいやすくなります」

これなら子ども自身で「出す」「しまう」が完結できそう

 子どもが着替えたり勉強したりする場所は、成長とともに変わります。そのため、どういうモノの出し入れが発生するのか、「めんどくさい」が潜んでいそうなのはどこかを考える作業は、数年単位で見直していくと良いそうです。
 ツールとしては、カラーボックスやプラスチックケースのように、置き場所や使用目的を柔軟に変えられる収納や、突っ張りラックのように不要になったら片づけられるものがオススメだそうです。

クローゼットの中身を
「今のベスト」にアップデートする

 衣類の収納でもう一つ効果的なのが、クローゼットの棚卸し。コロナ禍で在宅ワーク中心になった人などは、日常的に着る服にも変化があったはず。そんな人も含め、今のベスト・オブ・ベストなクローゼットは何か、「ないと困る服」と「そうでない服」を仕分けしてみましょう。

「着られたら着たいとか、痩せたら着たい、思い出があるから捨てられないといった服は、『思い出の品』扱いにして、思い出の服ボックスをつくるのがオススメです。捨てたくはないけれど着ることはないものであれば、コンパクトにたたんで箱や不繊布の衣類収納ケースなどに入れ、アルバムなどと同じくバックヤードにしまう。小さいころの子供服なども、もう服ではなくて思い出アイテムなんです。
 そうした思い出アイテムをクローゼットから出したら、一番着たいものから順にクローゼットに戻していって、冠婚葬祭用の服などあまり着ないものは、すぐに着たいものを邪魔しない場所に逃がしていくといいですよ。そこでぎゅうぎゅうになってきたら収納を増やすのではなく、そのスペースに収まるように『今着るものか』を見直していきましょう」

ヴィータス パネル
リビング収納「ヴィータス パネル」は、暮らしの変化や使う人に合わせて変えられる収納。
https://www.lixil.co.jp/lineup/livingroom_bedroom/vietas_panel/

 この棚卸しをして分類し、しまうという作業に一人で取り組むのが大変な時は、家事代行サービスのように、モノの棚卸しが得意な専門家を呼んで手伝ってもらうという方法も効果的です。
 なぜなら、片づけで一番大変な工程は、モノの出し入れやしまい直しではなく「決める」作業だから。ここに抵抗感を抱く人も多いとseaさんは話します。

「捨てる捨てない、誰の出しやすさを優先する、今使うか使わないか、すべて“決める”作業なのですが、それを怖いことだと感じてしまうのは、『取り返しがつかなくなるんじゃないか』と感じるからなんですね。でも、暮らしやすくするための片づけって、想像以上に選択肢があるものなんです。相談相手がいることで、「どういう方法があるのか」を幅広く検討できますし、背中を押してほしいとか、不安を受け止めてほしいといったサポートを得ながら決める作業を進めることができます」

 誰にでも当てはまる100点満点の収納なんていうものはない、だから一歩でも楽ができるようになるということを突破口にするところから考えるといいのかもしれません。
 一人で考えていても決められなかったり、おっくうになるのなら、一時的にプロの手を借りてみると「めんどくさい」を手放すことができるようになるかもしれませんよ。

≪お話を伺った方≫

sea(しー)さん

家事代行マッチングサービス「タスカジ」ハウスキーパー、家族の片づけコンサルタント。
大学卒業後に始めた家事代行サービスの仕事にどっぷりはまり、20年以上にわたって個人宅の片づけや掃除を行ってきた。いままでに片づけた家は6000軒以上。家事代行マッチングサービス「タスカジ」では「seaさんが片づけてくれると、なぜか家族の仲までよくなる」と口コミで評判になり、「予約の取れない家政婦」と呼ばれるようになった。メディア出演や執筆、片づけ講座の企画・開発など幅広く活動を行う。新刊『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。』(ダイヤモンド社)が発売中。
https://taskaji.jp/user/profile/2551 
https://www.amazon.co.jp/dp/4478110697/

文/中原絵里子
画像提供/Shutterstock、タスカジ

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