「狭小収納」でもスッキリわが家。達人の神ワザ集【第1回】

「リフォーム」「断捨離」なしでも片づく!

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「散らかる」は「片づけがめんどくさい」の結果

 これまで6000軒で片づけをしてきたという家族の片づけコンサルタントのseaさん。片づけられない、という悩みの原因の1つとして、「片づく」のイメージに誤解があるから、と話します。

「片づいている状態というのは、モノが全くない、一瞬の静止画の状態ではありません。モノを出して、使って、元に戻してという循環がうまく回っていく、動画のような状態をめざすべきなんです。
 散らかるというのは、片づけがめんどくさい=出したモノや新しく入ってきたモノを戻せない仕組みの結果。だから、片づけでは、どれだけ『めんどくさい』を取り除いてあげられるかを考える必要があります」

 片づけるのがめんどくさいと感じてしまい、障害になりやすいのは次の5つパターン。

1.収納がぎゅうぎゅうで入れにくい
2.戻す場所にたどり着くまでに障害物がある
3.戻す動作が窮屈(かがまなければ入れられない、など)
4.戻す場所までが遠い
5.戻す場所がバラバラ

 これらが1つでもあると、つい戻すのを後回しにしがち。それが散らかる要因になるので、何が「片づかないモノ」の障害になっていて、どうやって1つでも解消するかを考えると、片づいた状態を維持しやすくなるのです。

 例えば「脱いだアウターやたたんだ洗濯物を子どもが自分の部屋に持っていかない」要因が「戻す場所までが遠い」だとわかれば、「リビング横の和室にハンガーラックを置く」「日常的によく着る家族の衣類をまとめられるファミリークローゼットをつくる」というように、対策を検討しやすくなります。

モノを減らすのではなく「まとめる」

 多くの人は片づけの悩みを「モノが多すぎるからではないか」と考えます。しかしながら、断捨離などで「モノを減らす」前にまず、モノをしっかり分けて「まとめる」ことが重要だとseaさんは話します。

「使うモノと使わないモノをきちんと分類できるかどうか。片づけられない方の特徴として、ここがふんわりしているケースが多いと感じます。例えば『着られるのなら着たい』『使うかもしれない』と感じているモノまで『使うモノ』に入れてしまいがち。でもそれは『使わない、けど今は捨てたくない=迷うモノ』なんですね。ここにしっかり線をひいて『使うモノ=これさえあれば日常が回る』でまとめることが大切です。そうすれば、『使うモノ』はぐっと量を絞ることができます。使うモノは戻しやすくしまって、迷うモノを含めた『使わないモノ』はバックヤードにしまえばいいのです」

 まずはリビングやキッチンといった、そのスペースで日常的に使うモノとそうでないモノを見極めて、分類すること。片づけスキルを上げる第一歩はここからなんですね。

90%の人が収納を使いこなせていない

納戸before。手前に雑然とモノがあるため、奥のラックから取り出すのにひと苦労。

片づけやすく、しまいやすくなった納戸。ラックで高さを活用できているため、モノの位置が一目でわかります。

「でも、バックヤードにモノをしまう場所がないから困っている」という意見に対してseaさんは、
「私が見てきたケースでは、収納スペースにまだまだ余力があると感じる場合がほとんどです。10軒あったら、8、9軒は、ポテンシャルを半分かそれ以下しか使えてないという印象」
と話します。特に、将来の子ども部屋や、逆にお子さんが独立した後の子ども部屋など、現状役割がない部屋を収納として使いこなせていないケースが多いそうです。

 その理由として考えられるのが、「納戸や押し入れなどの収納スペースは日常生活で過ごす場所ではないため、つい雑然と置いたり、とりあえず押し込んだりしがち」だから。しまい方をコンパクトにするだけでも、かなりのスペースが生まれるのだそう。

 しまい方を見直すことが多いモノとして、

・客用布団
・お下がりとして譲るための子ども服
・おもちゃや子ども用品とその外箱
・家具(使わなくなったダイニングチェア、小さいテーブル、ペットのケージなど)
・古いコンピューターゲームとソフトなどの関連品

 などがあります。

 これらは、同じモノをできるだけ1つにまとめる、重ねる、たたむ、圧縮するなど、少し工夫するだけでスペースは大きく広がります。

「あなどれないのが思い出の品。キーホルダーやパンフレット、お土産や拾った貝殻などがあちこちにちょっとずつしまわれていたりしますが、思い出は思い出ボックス、ゲームはゲームボックスなど、カテゴリーが同じものはひとまとめにすることで、結構コンパクトにすることができます。特に思い出の品は随時増えていくものなので、ふんわり仮置きしないよう、場所とキャパを決めるといいですよ」

 また、「使う・使わない」を分類している時にも効果的なひと工夫があると、seaさん。

「『結局使わなかった』というモノが何だったか、よく覚えておくことをオススメします。例えば後で見るかもしれないと取っておいた通販のカタログや、携帯電話を買い換えた際の紙袋一式など、置いておくだけで終わったモノは、次回は最初から『使わないモノ』と即判断すればいいわけです」

 逆に、修理に出す時に必要になる「家電の箱」や、お下がりとして譲るための子ども用品の箱などは、中に緩衝材が入っているため、たたまずに保管してOK。必要があって保管しておくのと、取りあえず取っておくというのでは、スペースを活用する価値も変わります。
 本当に保管する必要があるかどうか、保管する場合はもっとコンパクトにできないか、と、一度検討してみるといいですね。

「生活する場所は、使うモノだけを置いてゆったりさせる。バックヤードは空間効率を上げて無駄なく収納する。このメリハリだけで改善できることが多いので、ぜひ試してみてください」

 正しく収納すれば、リフォームや断捨離をしなくてもスッキリ片づけることはできそうです。
 次回は収納の実践編、片づけの「順序」について伺います。

≪お話を伺った方≫

sea(しー)さん

家事代行マッチングサービス「タスカジ」ハウスキーパー、家族の片づけコンサルタント。
大学卒業後に始めた家事代行サービスの仕事にどっぷりはまり、20年以上にわたって個人宅の片づけや掃除を行ってきた。いままでに片づけた家は6000軒以上。家事代行マッチングサービス「タスカジ」では「seaさんが片づけてくれると、なぜか家族の仲までよくなる」と口コミで評判になり、「予約の取れない家政婦」と呼ばれるようになった。メディア出演や執筆、片づけ講座の企画・開発など幅広く活動を行う。新刊『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。』(ダイヤモンド社)が発売中。
https://taskaji.jp/user/profile/2551 
https://www.amazon.co.jp/dp/4478110697/

文/中原絵里子
画像提供/Shutterstock、タスカジ

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