経験者に学ぶ! DIYリノベで作る「自分が主役の暮らし」[第3回]

浮いた施工費でちょっと豪華に。それがDIYならではの愉しみ

空間
リビング・寝室・居室
関心
インテリアリフォームコスパ

マットな「白」をペイント!
空間に自然なぬくもりを

 前回ご紹介したとおり、川名さん宅では、和室と洋室を一つの空間にまとめました。
 しかし、もともと別々だった部屋を一つにまとめるには、壁や床などの色と素材をそろえ、統一感をもたせることがポイントです。

 その工夫について、川名さんはこう言います。
「もとの和室は砂壁で、古ぼけた印象。洋室はエンボス加工の壁紙で安っぽい印象だったので、両方とも変えたかったんです。
そこで、雰囲気が違う2部屋を調和させるために、まず壁全面に上からパテを塗り、平らにすることからはじめました」

 パテで壁の表面をフラットにすると、素材や風合いが統一されます。
 部屋の一体感にもつながるので、大事なひと手間です。
 パテで仕上げた壁は塗り壁の様な質感になり、“今っぽい”おしゃれな雰囲気にもなります。

 次に、ペンキの色選びについて、「選んだのは、マットな白です。ツヤありタイプは、少し人工的に見えるので、ナチュラルで、暖かさのある空間にしたくて、マットな質感を選びました。白色は、やさしく、清潔感ある雰囲気になります」。

 天井も同じ白色で揃えました。
「天井は、材木の元の色を生かすことも考えましたが、白だと、窓の光を部屋全体にまわして、リビング・ダイニング全体を明るく見せる効果があると思ったので」と、川名さんは語ります。

 さらに、「ペイントは、気軽に楽しめる作業なのでDIY初心者におすすめです。きれいに仕上げるには、塗りたくないところを養生する、マスキングが一番重要な作業です。塗り分けの準備さえ丁寧にすれば、あとは、塗るだけなので楽しいですよ」と、川名さん。

 気軽とはいっても、「経験もないのにペンキを塗るのは、ハードルが高い」と感じる方もいるでしょう。そういう時の対処法について、こんな話をしてくれました。

「私も最初は怖かったので、事前に友だちを誘って、ペイントのワークショップに出かけました。一度体験するだけでも自信がついて、行動を起こしやすくなりますよ。一緒に参加した友だちには、この家の塗装を手伝ってもらいました」

床は無垢のフローリングで
高級感をプラス

 壁と天井の解体、壁のペイントを経て最後にとりかかるのは「床」です。
 川名さんは畳敷きの和室を含め、1階全面を無垢のフローリングに張り替えました。

「プロに頼むと工事費や人件費がかかりますが、自分でやればそのぶん資材にお金をまわせるのがDIYリノベのよさです。私の場合、少し奮発して、無垢材を買いました。ツルツルした合板フローリングが好みに合わず、無垢材に憧れてたんです」

 使ったのは、ウィスキーの樽にも使われるオーク材です。広葉樹のため、硬くて傷がつきにくく、木目は重厚感漂います。
 白くて軽やかな壁や天井に、高級感ある床材を配することで、空間が引き締まります。

 フローリングは、「素材だけでなく幅もチェックポイント」と、川名さんは指摘します。
「一般的なものより幅が広い120mmを選びました。幅が狭いものは、シャープでモダンな雰囲気になり、幅が広いものは、ゆったりとしていて、海外住宅っぽさを演出できます。くつろげる部屋にしたかったので、広い方に決めました」

 自分が叶えたいインテリアテイストとの調和を考えながら、フローリングの素材と幅を選ぶのが、大切だとわかりました。

 ところで、無垢のフローリングでDIYをする時に注意すべき点は、「どの季節に施工するか」ということだそうです。
「無垢材は合板と違い、木が生きて呼吸をしているので伸縮します。例えば、乾燥した冬場に、フローリング材をギチギチに敷き詰めたら、梅雨などの湿気の多い季節になると膨張して逃げ場がなくなり、浮き上がってしまいます」

写真右上が、丸ノコガイド。

 もしも乾燥した季節に無垢材を貼る場合は、1mm幅の薄いシートを材の間に挟みながら敷き詰めていくといいでしょう。
 このわずかな隙間が、湿度が上がった時に、木材の逃げ場になるのです。

 役に立った道具についても教えてくれました。
「フローリング材を切る時は、『丸ノコガイド』という道具を使うと、誰でもまっすぐ切れるので、助かりました」

 リビング・ダイニングは約25平米ですが、壁を解体し、天井を抜き、塗装で統一感をもたせたことで、見違えるほど、広々とした空間に変身させることができました。
 完成した時の心境を、「これで、妻と子どもを迎えられるという安心感と、DIYの技術をリノベしていく中で磨いていった達成感でいっぱいでした」と、語ります。

気になる予算は?

 さて、DIYリノベで気になるのは、費用の問題です。川名さんのケースでは、以下のような内訳になりました。

 DIYリノベでかかったコスト
 ・工具(インパクトドライバー、丸ノコ、バール、パテベラなど)…6万円
 ・資材(木材、ビス、パテ、塗料など)…16万円
 ・金具、電材(ライティングレール、ブラケットライトなど)…6万円
 ・無垢フローリング材(オーク/約23平米)…11万円
 ・その他…5万円
 合計…44万円

 これに、プロに委託した電気工事費26万円を加えても、リノベーションの総額は70万円です。
 同じ内容でプロに頼んだ場合は約200~300万円かかるので、少なくとも「65%オフ」で仕上げることができました。

 とはいえ川名さんは、「安さだけを追求したいのなら、さらに半分ぐらいにコストを抑えることもできた」と言います。

「でも、安さを重視するより、自分が気に入る部屋を手作りしたかったんです。無垢のフローリング材を使い、こだわりを詰めこんだ、納得のいくDIYリノベができました。とはいっても、塗料は、業務用の安いものを使ったりと、メリハリをつけたので、コスト面でも満足してます」

 次回はDIYリノベで迎えた新生活を伺います。

お話を伺った方

川名恵介さん

1986年、東京生まれ。築25年の一軒家をセルフリノベーションしたDIYリノベの名人。奥さん、5歳になる息子さんとの3人家族。「自分の経験が誰かの役に立てば」という思いから、DIYブログ「99%DIY」や、You TubeなどでDIY情報を発信中。
https://99diy.tokyo/

文◎井口理恵 撮影◎平野晋子

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)