梅雨の季節、気になる「ニオイ」対策 [第1回]

ニオイの原因・場所別NG行動

空間
キッチン
関心
季節お手入れ悩み

嗅覚は大脳辺縁系に直結。
場所の記憶を呼び起こすのはニオイ

 臭気判定士という国家資格を保有し、ニオイにまつわる調査や対策の専門家である松林さんによると、嗅覚は五感の中で唯一大脳辺縁系と直接つながっているため、記憶や感情と結びつきやすいのだそう。

「特定のニオイを嗅ぐことで場所の記憶が呼び起こされることは多いですし、ニオイの記憶は忘却曲線が長い、つまり忘れにくいと言われています。

 例えば、たまたま訪れた場所で古い木材のニオイを嗅いで、『祖父母の家と同じニオイだ』と感じたとします。祖父母の家が居心地が良くて好きな場所だったのであれば、同じニオイがする場所には好意的な感情を抱きますが、逆の場合はその場所を好きだと思えないでしょう。

 家にはその家独特のニオイがあります。毎日長く過ごす場所なので住んでいる人は気づきにくいですが、できれば自分の家のニオイは、後から思い出されたときに心地よいものであってほしいですよね」

 家に遊びに来てくれた人に嫌なニオイの記憶をつくってしまわないためにも、せめて不快に感じるニオイは対策をしていきたいもの。まずは場所ごとにニオイの原因として疑われるものを教えていただきます。

キッチンは「油」が原因の場合も

 三角コーナーの生ゴミなど、食べ物に起因するニオイが発生しやすい場所ですが、意外とニオイの原因になりやすいのが油なのだそう。

「調理をして飛び散った油が壁や換気扇、コンロ周りなどに付着していたり、揚げ物をした鍋をそのまま長く放置していると、空気中の酸素と反応して油が酸化し、ちょっと酸っぱいような独特のニオイが出ます」

 他にも、排水口から上がってくる下水臭が原因の場合も。これは排水トラップという排水のニオイを防ぐために水を溜めておく部分の水が切れてしまったなどの理由で、下水からの悪臭が漏れている可能性があります。コップ2、3杯の水を流してみても繰り返し臭うようなら、一度配管を見てもらう必要があります。また、排水口に汚れがたまってぬめりが出ていると、硫化水素のようなニオイがするそうです。

「排水トラップには色々な形があるのですが、キッチンだとパカッと取り外せるタイプのものも多いので、例えば燃えるゴミの日は掃除すると決めて、ゴミ受けを外して奥まで掃除すると効果的です」

 また、床下収納などに保存食やぬか床などを入れっぱなしにして忘れてしまい、数年放置した結果強烈なニオイを放っていたという事例もあるそうで、注意が必要です。

布製品はリビングの生活臭が染み込みやすい

 リビングでニオイの原因になりやすいのは、ペットやタバコ、人の汗や体臭、洗濯物の部屋干しなどが代表的。特に部屋干しの生乾き臭は不快なだけでなく、ニオイの原因は菌なので、体への影響も気になります。できれば乾燥機を使って部屋干しはしない方がいいのですが、それができない場合はできるだけ早く乾くように対策する必要があります。

「意外と見落とされがちなのが、カーテンやソファ。布製品にはニオイ分子が染み込んでいることが多く、カビだけでなく、焼き肉をしたときのニオイやタバコのニオイなどの生活臭も付着しやすいです。洗濯するのが一番ですが、洗えないものは消臭スプレーをかけておくといいですよ」

 他にも、水槽で金魚を飼っている方などは、水は腐るとかなり臭いので注意して扱う必要があるそうです。

水回りに家のニオイの約半分が集結

 家の中のニオイの約半分は水回りに原因があるという松林さん。ニオイの原因の半分がカビや菌だからなのだそうです。

「シンク下に湿気がたまってカビていたり、排水口に発生したカビや雑菌の影響で、硫化水素のニオイが感じられることもあります。一般的な家庭で発生する程度の硫化水素なら人体に影響はないのですが、不快感が強いので緊急度は高いですよね。排水口から上がってくる下水臭の原因が、古い配管が残っていたりつなぎ目がうまくはまっていないせいであれば、工務店や水道業者などに連絡して、対処してもらってください」

トイレのニオイは壁の下方を疑う

 トイレのニオイで一般的なのは、尿石と尿の飛び散り。特に便座の両脇の壁の、膝から下あたりは掃除が行き届きにくいため、ニオイの発生源になっている場合が多いそう。尿石に雑菌が付着するとどんどん汚れもガンコになってニオイも強くなっていくため、こまめに取り除く必要があるそうです。

「アンモニアは空気より軽いので、換気扇を回せばすぐに消えるはず。気になるニオイの原因は便器の中ではなく外にあることが多いのです」

玄関に漂う靴のニオイはとにかく乾かすことから

 一日活動していれば靴が臭くなるのは当たり前のこと。靴のニオイの原因は、足から出る汗や皮脂などの汚れと雑菌が混ざって繁殖するから。

「オーソドックスですが、毎日同じ靴を履かないことと、脱いだら靴専用の消臭スプレーをかけてしっかり乾かすことが一番です。あまりに気になる場合は、消臭機能のある靴下もあるので試してみるといいですよ」

 また、ブーツや革靴を下駄箱にしまい込んで扉を閉めっぱなしにしていると、ニオイ分子が下駄箱に染み込んでしまうこともあるそう。菌が発生する条件は「温度・湿度・栄養」。ジメジメしている場所はカビが発生しやすいため、消臭剤や備長炭、重曹を置くなどのニオイ対策をしておく必要があります。シューズインクローゼットは下駄箱ほど密閉性が高くないので、時々扉を開いて風を通すだけでも十分だそう。

 それぞれのスペースごとにニオイの発生源となりやすいものを教えていただきましたが、共通するのは「カビや雑菌が発生しやすい」場所ということ。
 これからの季節、湿度も温度も高くなるため、どうしてもカビや菌が活発になりやすくなります。どんな対策をすればいいのか、次回詳しく伺っていきます。

≪お話を伺った方≫

松林宏治さん

株式会社共生エアテクノ代表取締役。脱臭装置の設置、悪臭調査と臭気対策の提案・設計などを行うほか、「におい刑事(デカ)」の愛称で、テレビ、新聞、雑誌などでも活躍中。保有資格は臭気判定士、シックハウス診断士、におい・かおり環境アドバイザー。

文◎中原絵里子
画像◎Shutterstock

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