10年目のキッチン 我が家は何をすべき?[第3回]

予算面でお得なのは「都度都度リフォーム」より「トータルリフォーム」

空間
キッチン
関心
ライフスタイルリフォームお金

リフォームはまとめてするのがお得

「施工費に関しては、まとめてリフォームした方が割安です。たとえば、トイレや洗面台、キッチンの交換は、作業に関わる人がほとんど一緒です。設備屋さん、大工さん、電気屋さんです。ですから、間を空けてバラバラにリフォームするより、一気に3カ所やった方が、効率的で安くなります。1カ所新しいものに変えると古いところが気になるものです。できるものなら一気にまとめてリフォームする方が割安だし、満足感も高いですね」

 こうアドバイスするのはNENGO工務店の一級建築士、吉﨑啓太さんです。キッチンだけをリフォームする際も、「ガスコンロのみ」などではなく、トータルに考えるのがいいとのことです。

キッチンのトップの高さと動線に注意

 では、リフォームで導入する設備は、どのように選べばいいのでしょうか。
「トップ(天板)の高さに関しては、ウェブでは<身長÷2+5(センチ)>が最適という記述も見られます。これは、日本人の平均身長から割り出した計算式で、間違いではありませんが、誰にも当てはまるわけではありません」

 <肘の高さ-10(センチ)>という計算式もあります。
 キッチンでは、包丁を動かしたり、シンクで食器を洗ったりする動作が基本となりますが、その動作の基点が肘であり、腕を下ろすという動作を繰り返し行なうことになります。
 そのため、肘の高さより少しだけ低い天板の高さが、使い勝手がいいという発想による計算式です。

「しかし、これも、誰にでも当てはまるわけではありません。結局は、段ボールの箱でも使って、自分で試してみる方が使用者に適した高さになりやすい」と、安上がりなシミュレーション方法を教えてくれました。

 キッチンの配置については、どう考えたらいいでしょうか。

「キッチンの配置は、動線を意識するのがいいと思います。たとえば、冷蔵庫→作業台→シンク→ガスコンロ→ダイニングテーブル、という一直線の配置です。食材を取り出し、切って洗い、火にかけ、食べるという流れです。コの字型、L字型、アイランド型など、一直線になりにくい場合も、人により自分のクセがあるはずなので、リフォームをする際、プロに伝えるといいでしょう」

天板は部分的交換ができないので熟考を

 吉﨑さんによると、ガスコンロにもリフォームのポイントがあるとのこと。
「ガスコンロの右側か左側かどちらでもいいのですが、ここが少し広めの方が、使い勝手がいいと思います。いろいろな調味料を置いて味付けをするスペースとして重宝するからです」

 シンクについては、「その人の調理のクセに応じて深さを変えたらいい」と、吉﨑さん。
「かなり深いシンクを選ぶ人もいます。ラーメン好きの人が湯切りしたり、寸胴鍋を置いたりするのに都合がいいようです。やりたいことはとりあえずプロに伝えましょう」

 でも、天板だけは、あとから部分的交換ができないので熟考すべきと吉﨑さんはいいます。

「ステンレスにするのか、人工大理石にするのか、クォーツストーンにするのか。メンテナンスを考えたらステンレスです。仕上げはすっきりとした見た目のヘアラインか、傷が目立ちにくいバイブレーションか。これは好みでしょう。また、シンクはステンレスなので、天板を人工大理石などにすると、ステンレスとの接着部分から将来的に水漏れする可能性もあります。天板がステンレスであれば、プレスによりシームレスに一体型でつくれるので、メンテナンスにもいいのです」

 最後に、洗面所やトイレなどと同様、キッチンにもヒートショック対策が必要で、できれば断熱も。それが予算的にかなわないようでしたら、床暖房を検討した方がよさそうです。

お話を伺った方

吉﨑啓太さん

一級建築士。大学時代は住環境システムを学び、卒業後、工務店に就職。主にキッチンやトイレのリフォーム現場で働きながら、専門学校に入り直して建築を学ぶ。株式会社NENGOに入社後、一級建築士の資格を取得し、NENGO工務店のマネージャーに就任。施主・設計・施工など現場に関わる人々のチーム力を大切にしながら、リノベーションや新築物件の施工に携わっている。

文◎森田健司(阿吽堂) 撮影◎加々美義人(人物)、小林彦真(ショールーム)
トップの写真(M邸)◎提供:NENGO

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