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猫と一緒に生活するうえで、考えるべきポイントはなんでしょうか。前回に引き続き、猫専用アパートメント「Gatos Apartment」をプロデュースする木津イチロウさんに、猫と幸せに暮らす家づくりの工夫やアイデアについて、お話を伺いました。
リビングに一歩入ると、光が降りそそぐ吹き抜けの空間が目に飛び込んでくる。
ノラ猫との出会いから、5匹の猫と一緒に暮らせるアパートメントを自分で建てる! と決意した木津さん。
最初に意識したのは、人間がストレスなく、快適に暮らせることだそうです。
「私が手掛ける賃貸住宅は、100%“人間ファースト”でつくられています。それは、人がストレスなく暮らすことが、猫にとっても幸せにつながると思っているからです。そのために、糞尿のニオイがこもらない工夫や、世話をしやすい環境づくり、そして猫も人間も快適に過ごせる空間であることを大切にしています」
まず決めているのは、広いスペースの確保。
木津さんがプロデュースするアパートは、人間1人と猫2匹が住む場合、最低でも30平米は居住部分を設けるようにしているそうです。
そして、住む人や猫の数に合わせて、部屋を広くします。
20平米にも満たない狭小住宅が多い都内では、珍しいでしょう。
「同じ敷地でも、スペースを広く設ければ、当然、部屋数は少なくなります。でも、猫が部屋の中だけで過ごすこと、かつ人間も快適に住めることを考えると、必要な大きさです」
トイレの上に設けてあるのが、猫用トイレの換気扇。
猫砂のほか、さまざまなものを収納できて便利な棚。
また、木津さんの“人間ファースト”という思いを一番感じられるのが、洗面所に設置された猫用トイレ。
「猫は朝5時くらいに起きて、排せつすることが多いのです。例えば、リビングに猫のトイレが置いてあった場合、朝起きたら猫の糞のニオイが充満している、ということにもなりかねません。だからこそ、トイレの場所は特に考えました」
木津さんのお宅では、猫用トイレを洗面所に設置。その上には専用の換気窓もついていて、ニオイがこもらないような工夫がなされています。
また、洗面所の棚は、かさばりがちな猫砂を収納できるようなつくりにしているとのこと。
こうすれば、猫用トイレの砂替えをしたいときにすぐとり出せるし、猫砂をまとめ買いしたときにも、スペースに困りません。
バスルームの奥には外に出るドアがあり、一気に換気できる。
洗面所のドアにある専用の出入り口で、猫たちは自由に行き来することができる。
さらに洗面所の隣には、ガラスで仕切られたバスルームがあります。
その先には外に通じるドアがあり、開けると一気に換気できるようになっているのです。
「バスルームの横に猫用トイレを置いておくと、丸洗いしたいときにも便利なんです。こうしてお手入れしやすい環境を整えると、自然とまめにケアするようになるので、綺麗に保つことができるでしょう」
人間のトイレに、猫用トイレを置いている。
木津さんがプロデュースする物件では、人間のトイレ内に猫用トイレを置けるようにしていることも多いそうです。
「私がプロデュースした物件を見た人は、トイレの広さに驚きます。換気の面では、猫用トイレもまとめて置いてしまったほうがよいのです。猫の糞を、トイレに流すこともできますから」
猫を飼いたいけれど、なかなか一歩踏み出せない理由として、「猫がいると、旅行に行けなくなる」ということがあります。
木津さんはその悩みを解決するために、ある取り組みを行っているそうです。
「私のアパートでは、住んでいる人を招いてホームパーティーを行い、住人同士がお互いを知る機会をつくっています。こうすることで、気が合えば友達になって、旅行をするときに餌やりや糞の掃除など、サポートし合える関係になることもあるのです」
そのほか、住人同士のライングループをつくることも、おすすめしているといいます。
犬と違って散歩に連れていくことがあまりないですから、なかなかそういったコミュニティをつくる機会がないことも、猫好き特有の悩みかもしれません。
集合住宅でそうしたつながりができるのは、心強いですね。近所で猫を飼っている人を見つけたら、仲良くなるのもいいでしょう。
次回は猫にとって住みやすい空間について、注目していきます。
(第3回に続く)
猫専用アパートメント「Gatos Apartment」経営。
レコード会社でディレクターの仕事を十数年続けた後、転職。普通のサラリーマンとして生活をしていたある日、ノラ猫との出会いをきっかけに、猫との生活をスタート。人間が「人間らしく」、猫が「猫らしく」、楽しく住まうことが出来る環境を実現するために、猫と住める賃貸住宅のコンサルティングを手掛ける。
文◎濱田麻美
写真◎小野隆司