ベテラン家政婦が指南するお手入れ術[結露編]第2回

「換気」と「窓用断熱フィルム」。結露防止の意外な落とし穴

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結露に悩むお宅の共通点とは?

 結露は室温と外気温の差が小さければ起きにくい現象です。したがって、こまめに窓を開けて換気をすれば、結露を防ぐことはできます。

 しかし、冬場の寒い時期に窓を開けて換気するのは一気に室温が下がるため、なかなかできません。窓を少しだけ開けておくとか、玄関の扉を開けて換気するという方法もありますが、これもあまり現実的ではありません。

「最近の住宅に義務付けられている換気システムを利用するだけで、ずいぶん違いますよ。私はマンションに住んでいますが、換気システムは24時間オンにしています」

 家政婦マッチングサービス「タスカジ」のアンバサダーで、お掃除のプロ・みけままさんは、自らの結露対策を教えてくれました。

 多くのお宅を訪れ掃除をする中で、結露で悩むお宅には傾向があるといいます。

 それは、断熱が十分でなく、ガスや灯油のストーブやファンヒーターで暖房し、換気をあまりせずに室内の空気が滞留していることだそうです。

 ただ、断熱が十分とはいえないお宅でも、エアコンで暖房するお宅は、結露があまり気にならないといいます。これは、エアコンの温風が室内の空気に流れを与えているからでしょう。

 それを裏付けるように、ガスや灯油のストーブやファンヒーターで暖房している部屋でも、サーキュレーターや扇風機などで室内の空気に流れを与えると、結露の発生はだいぶ抑えられるようです。

 LIXILの『住まいと結露の豆知識』にも詳しく紹介していますが、空気の流れを起こすことは、結露対策には重要といえそうです。

加湿器は結露の発生を助長する?

新型コロナウイルス対策にも効果があるとされる加湿器だが、空気中の水分量を増やすので結露の原因になる。(写真◎PIXTA)

 太平洋側の地域では、冬場は空気が乾燥します。そのため、かぜやインフルエンザなどの感染予防や、肌荒れを防ぐためなどの理由から、室内で加湿器を使う方も少なくありません。新型コロナウイルス対策でも加湿器の利用をすすめる専門家もいます。

 空気を乾燥させるエアコンには、加湿器で空気に潤いを与えることは有効ですが、石油やガスのファンヒーターやストーブは、燃焼時に二酸化炭素と水分が発生するので、加湿器を併用すると、空気中の水分量はより増えて、結露を発生させやすくなります。

 では、部屋全体を暖めるわけではないこたつや床暖房なら、結露を発生させにくいのでしょうか。外気温との差は小さいはずですが、実はそうともいえません。第1回でご紹介した通り、室温が低ければ飽和水蒸気量も少ないので、湿度が低くても結露が発生しやすくなります。そのような条件で加湿器を使用すると、やはり結露が発生しやすくなるのです。

 新型コロナウイルスをはじめインフルエンザやかぜ対策のうえでは、湿度を60%以上にするとことが望ましいとされているので、結露は発生しやすくなりますが、「こまめに拭き取る」ことを心がけましょう。

断熱フィルムを貼ったら
窓ガラスにひびが!

 ホームセンターでは、窓ガラスに貼ると結露を防止する効果のある断熱フィルムが売られています。

「結露を目にするのは、外との接点である窓ガラスです。ここに断熱効果があるフィルムを貼ると、結露は防げますが、まれに窓ガラスにひびが入ることがあります。実は我が家の窓も、断熱目的で貼ったところ、ひびが入りました。どうやら、マンションによく採用されているワイヤーが入った網入りガラスは注意が必要なようです」

 窓ガラスにひびが入るのは、耐熱ではないガラスの器に熱湯を注ぐとひびが入り割れるのと同じ原理によるものです。熱湯が注がれたガラスの内側は温度が上昇し膨張しますが、外側は内側に比べ温度が上がりません。すると、膨張する部分と温度が上がっていない部分とで引っ張り合いになり、その境目で割れてしまうのです。

 窓ガラスの場合は、直射日光を受けた部分は温度が上昇して膨張しますが、サッシに埋め込まれた部分などは日射が当たらず、またパッキン部材に触れている部分はさほど温度は上昇しません。それによりサッシに近い部分にひびが入り、その後、そのひびがどんどん広がっていきます。

 これは、日差しが強い夏季よりも、冬の晴れた日の午前中に起こりやすいです。それは、夜間にガラスが冷え切った状態で朝陽を受けることで、大きな温度差が生じるからです。

 断熱フィルムにおいては、熱を外(内)へ伝えないことが目的なので、断熱フィルム自体の温度とともに窓ガラスの温度も上がってしまい、サッシ部分との温度差がより大きくなります。そのため、ひび割れする可能性が高くなるのです。

断熱対策として窓ガラスに貼られた「プチプチ」。見た目が美しくないうえに、窓のひび割れの可能性も…。

 また、防犯に役立つ網入りガラスが案外もろいのは、膨張率の問題だけでなく、ワイヤー部分のサビも影響するようで、とくに古い窓は要注意です。

「依頼者さまの中にも、窓ガラスにシートを貼っているのを見かけますし、プチプチと呼ばれる梱包用の緩衝材を貼る方も少なくありません。冬場だけでなく、結局年中貼ったままというケースも。直射日光の当たる窓は、真夏の熱で劣化してしまうので、結露の季節が終わったら取り外すことをおすすめします。」

 では、結露はどうしたら安全かつ完全に防げるのでしょう。次回はみけままさんの依頼者さまのお宅で見つけた“結露なし住宅”について伺います。

≪お話を伺った方≫

みけままさん

家事代行マッチングサービス「タスカジ」で掃除のタスカジさんとして活躍中。大手ハウスクリーニング会社に15年勤務していた経験を生かしたテクニックで、家中の汚れをピカピカにすると評判で、レビュー評価が圧倒的に高く、熟練の掃除ワザでリピーターも多い。「タスカジ」内にとどまらず、一般向けの掃除講座の講師としても活動している。『タスカジさんが教える最強の「家事ワザ」』(マガジンハウス刊)はじめ著書、取材歴多数。
https://taskaji.jp/user/profile/8697/

文◎三星雅人
写真◎平野晋子 PIXTA

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