初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

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ライティングで変化する建築の美_後編

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昼と夜で街並みを一変させる照明

前回は、照明の種類や、照明による建物の見え方の違いをご紹介しました。後編では、冬の時期に楽しめる照明に着目します。

ヨーロッパを訪れる時期として選ばれるのは、だいたい夏の過ごしやすい季節。

冬は日照時間が短く、その分気温も下がるため、観光には不向きなイメージがあるかもしれません。ですが、この時期は、夜が長いからこそ味わえる魅力があります。そのひとつが冬期限定の街のライトアップです。照明をテーマとしたイベントも、数多く開催されます。ほかの季節とはまた違った冬の街歩きの楽しみ方を、照明を軸にご紹介しましょう。

特別感いっぱい!期間限定のライトアップ

まず、ご紹介するのは、ベルギーの首都ブリュッセルの中心部にある広場「グラン・プラス」。

「世界でもっとも美しい広場」と呼ばれている広場のひとつで、周囲の建物だけでも大変見応えがあります。1998年には世界遺産にも登録されているスポットです。

上の写真は、通常時のライトアップです。広場を囲む建物はどれも重厚な石造りでありながら、繊細な美しい装飾が施されています。照明が、それらの建物の魅力を十分に引き立てていますよね。加えて秋冬は、期間限定で違う色のライトアップを見ることができます。

こちらは10月下旬にライトアップされたときの様子。18時半から24時まで、数十分おきに通常の光色から深い青へと変化するライトアップが施されています。深みのある青い光により浮かび上がった建物がとても神秘的です。

ほかにも、音と光の演出が楽しめる「Light show」や、クリスマスイベントなどが、冬限定で開催されています。

Grand-Place de Bruxelles1000 Bruxelles

アートな照明に街中が華やぐ光の祭典

次にご紹介するのは、ドイツの首都ベルリンのイベント「Festival of Lights」。毎年10月に開催される、世界的にも有名な光の祭典です。歴史的建造物やランドマークを使った光のアート作品を、街中で見ることができます。

こちらは、ベルリンのシンボル的存在である「ベルリン大聖堂」を日中に撮影したものです。歴史を感じる重厚な存在感に圧倒されます。

そしてこちらは、フェスティバルでライトアップされた姿です。色や映像が数十分おきに変化し、いつまでも眺めていたくなるワクワク感があります。

フェスティバルは若手アーティストによる作品発表の場も兼ねており、各建築ではコンテストも同時開催されています。夜の街を散策しながら、一点一点目に入る作品を鑑賞していると、あっという間に一晩が終わってしまうでしょう。

Festival of Lights - Berlin
https://festival-of-lights.de/en/

続いてご紹介するのは、オランダのアイントホーフェンという街で開催される「GLOW」というライトフェスティバルです。アイントホーフェンは、照明や家電で名を馳せる世界的企業「フィリップス」が、電球工場を設立した街。そんな歴史的な工業都市ならではのイベントです。

こちらは、市内中心部の広場を使った360度のプロジェクションマッピング。デザインアカデミーも持つ同自治体が「デザインと照明の街」と呼ばれていることから、作品も建築と光、アートが融合する内容となっています。

アイントホーフェンのもっとも大きな教会、聖カタリナ大聖堂もダイナミックにライトアップ。光のグラデーションがとても美しい作品です。

写真を撮影した2018年のテーマは「Shadows&Light(影と光)」でした。「『影と光』は、明確なコントラストであるというイメージが強いが、相互のあいだにはさまざまなグラデーションもある。しかし逆説的に、だからこそ互いを引き立て、立体的で生命力のある世界を作り出している」というのがテーマの趣旨です。そこには、「人々の多様性も、異なる意見をミックスさせてこそ、逆説的に引き立てられる」といったメッセージも込められているように感じられます。

GLOW Eindhoven
https://www.gloweindhoven.nl/en

街全体がきらびやかなライトアップに包まれる、クリスマスの時期

キリスト教文化が根付くヨーロッパの国々では、クリスマスは一年を通じてもっとも大きなイベントのひとつです。年々新しい建物が増え、街並み自体はモダンに移り変わっても、クリスマスの時期は温かでノスタルジックな風景になります。

こちらは、ドイツのベルリンにある代表的なクリスマスマーケットの様子です。歴史的建造物である2つの大聖堂とコンサートホールの集まる広場が会場になっています。1,000個以上の装飾やきらびやかな照明が融合し、とても美しい風景に。「光の海の魔法」と呼ばれるこのマーケットは、毎年60万人が訪れるほどの人気があります。

WeihnachtsZauber GendarmenmarktGendarmenmarkt, 10117 Berlin

こちらは、ドイツのベルリンにあるカイザー・ヴィルヘルム記念教会です。上から見ると六角形になっている建物で、壁に埋められた青いステンドグラスが特徴的。モダンな魅力のある建築です。クリスマスはこの周辺でもマーケットが開かれ、一段とにぎやかになります。見上げるほど背の高いツリーと、青く輝く教会のコントラストは見事な美しさです。

Kaiser-Wilhelm-Gedächtnis-KircheBreitscheidplatz, 10789 Berlin

前編・後編と、ライトアップによる建築の魅力をご紹介しました。街中がきらびやかに輝く夜の美しい風景は、旅の記憶に深く刻まれるでしょう。旅行の際には、照明に彩られた街や建築の姿にも、ぜひ注目してみてください。

初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

松永香織さん

オランダ・アムステルダム在住のインテリアコーディネーター/ライター/バイヤー。約10年間住宅・店舗の設計、インテリアコーディネーターとして従事したのち、より本物の建築やデザインに触れたいとの思いから渡欧。これまでに15ヶ国の建築や見本市、ショールームを巡り、現地を通した建築・インテリアデザインのテクニックやライフスタイル情報をライターとして発信中。フリーランスのインテリアコーディネーターとして日本の住宅やリノベーションプランのデザインも手がけています。建築やインテリアを通して暮らしが楽しくなるヒントを日々集めています。

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