玄関・リビング・寝室 部屋別収納&整理術

「使う場所にしまう」で目指せ「時短収納」

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飯田式「収納」の思想とは?

 まず「収納」って何のことを指すのか、ちょっと曖昧ですよね。そこで私は「片づけから捨てるまでの一連の行動の総称」と定義しました。「収納」に含まれる一連の行動は、以下の3つに分けることができます。

飯田流の「収納」の目的は「楽に取り出して使い、楽に戻せること」

・整理……物を捨てること
・指定席作り……適切な「指定席(物を戻す場所の意味。生活評論家の故・町田貞子先生が提唱した言葉)」を作ること
・片づけ……出したものを戻すこと

 世の中には、私が定義する「整理=捨てる」だけに特化した収納術も数多くありますが、単独では成立し得ないものです。出したものを戻すためには、戻す先の「指定席」を作ってあげる必要があり、入り切らなくなった物は捨てることが必要になります。

 これら全てがつながって、はじめて「収納」というサイクルが動いていきます。この考え方はリビングでもキッチンでもオフィスでも共通です。パソコンのデータについても(取りに行くまで歩く必要はありませんが)この考え方を応用することができますよ。

「収納」の目的は「楽に取り出せて、楽に使えて、楽に戻せること」と考えています。ただ、「楽に」というのも曖昧な表現ですよね。皆さんに分かっていただくために「収納指数」というものを考えました。これは、物を取りに行くまでの歩数と、物を取り出すまでのアクション数を足した数です。

 例えば、掃除機がある物入まで8歩、そこで立ち止まり扉を開けてすぐ取ることができれば1アクションで、収納指数は9。扉を開けたあと、さらに引き出しを引く動作が加わると2アクションになり、収納指数は10になります。「収納指数」の数値が大きいほど面倒な収納ということになります。

 収納の目的は「収納指数」の数値をいかに小さくできるか、と言い換えることができます。

一生使う、飯田久恵の
「物が片づく5つのステップ」

 実際に出し入れしやすい=収納指数が少ない指定席をつくり、それを維持するための考え方は、全部で5つのステップに分けることができます。どのステップも先ほどの「整理」「指定席作り」「片づけ」のいずれかに当てはまります。

ステップ1 物を持つ基準を自覚する(整理)
自分にとって必要な物は、実はそんなに多くありません。「本当に必要な物は何か」を考えることからスタートします。
 ↓
ステップ2 いらない物を取り除く(整理)
限られたスペースの中で新たに必要な物のための「指定席」を作りやすくするために、ステップ1での考えを基に不要な物を選び、処分します。
 ↓
ステップ3 置き場所を決める(指定席作り)
全ての物に対して、戻す場所である「指定席」を決めます。「使いたい場所に置くのが最適」という考え方を基にすると、「歩数」が少なく、出し入れしやすい置き場所が決められます。
「指定席」を決めると、片づけを習慣化することができます。
 ↓
ステップ4 入れ方を決める(指定席作り)
「指定席」が決まった物を引き出しに入れる、棚に入れる、吊るすなど、アクション数が少ない場所を選び、楽に、快適に出し入れできるようにします。
 ↓
ステップ5 快適収納を維持する(片づけ)
物がいつも「指定席」に収まっているように、出して使ったら「指定席」に戻す、を徹底します。
 ↓
片付かなくなったら、ステップ1に戻ります。

出し入れしやすい=「収納指数」が最小となる物の指定席をつくり、出したら戻すを徹底すれば、いつでもすっきりした住まいになる

 この5ステップは一度やったら「ハイ、終わり」ではなく、繰り返し何度も行います。維持して習慣化することで、常に「収納指数」の数値が小さいまま生活することができます。

 この5ステップは、一度やったら「ハイ、終わり」ではありません。人の暮らしは変わります。子供が成長すれば新しいモノが増え、不要なモノが発生します。そうすると使いたい場所に使いたいモノが収まりにくくなり、「収納指数」が多い収納になってしまいます。

 そこでステップ1に戻って見直し、ステップ2、3、4と、順に見直していきます。ステップ2で、いらない物をどのくらい取り除くのが適切か分からない場合などは、ステップ3、4と進んでみて、物が入り切らないと分かったらステップ2に戻るなど、臨機応変に対応できるのが、この5ステップの考え方です。

 そう考えると生活に変化がある限り、繰り返す必要性がわかります。

「入れるための収納」は卒業!

入れるための収納に陥らず、あくまでも出し入れしやすくするための収納を。

 見かけだけが美しい収納は、世の中にたくさんあります。おしゃれな収納グッズを使ったり、インテリアとしてキレイなケースや引き出しを使うのは、見栄えが良くて、達成感もあるかもしれません。

 ただ、そんな趣味的な収納を始めた時は要注意。「楽しみのための収納」になっていないか、自分に問いかけてみてください。趣味なら全く問題ありません。しかし、あくまでも家事がしやすく、快適な空間を作ることが目的なら、一度だけ、時間と労力と場合によってはお金をかけて、楽に片付く仕組みを作ることをおすすめします。その方法が「モノが片付く5つのステップ」なのです。

「飯田式収納」は効率を最優先した実践的なものなので、ぜひ皆さんの生活に取り入れてみてください。

※「収納指数」はゆとり工房の登録商標です

お話を伺った方

飯田 久恵(いいだ ひさえ)さん

1949年生まれ。一般社団法人日本収納カウンセラー協会代表理事。日本で最初の収納コンサルタント会社「ゆとり工房」を1990年に設立、代表をつとめる。収納についての講演やセミナーを全国各地で開催。『一生、散らからない部屋の法則』(三笠書房)、『出し入れ楽チンクイック収納術』(PHP)他著書ならびに、NHK「ためしてガッテン」などのテレビ出演も多数。
http://www.yutori-cobo.co.jp/

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