65歳からの「シルバーリフォーム」新常識 第2回

理想の寝室は「スイートルーム」。浴室は「快適性」より「安全性」

空間
その他
関心
老後介護リフォーム

前回は、玄関・廊下・リビング・キッチンについて、介護される人にも介護する人にも快適で便利な介護リフォームのコツを解説しました。今回は、小川千賀子さんに寝室・洗面脱衣所・浴室・トイレに関して「65歳からのリフォーム」のコツを教えてもらいます。まさにいまご自宅の介護リフォームを検討されている方にも、将来は介護リフォームが必要だなと考えている方にも大いに参考になるコツが満載です!

寝室 ――スイートルームのように、ベッドは広々と

1.ベッドは両サイドにスペースをとる
ベッドは、部屋の壁に側面をつけて配置するのではなく、両サイドに十分なスペースをとって配置しましょう。人が動けるスペースがベッドの両側にあると、どちら側からでも体を支えることができるうえ、食事の介助もできるので、とても便利です。

2.トイレの位置にひと工夫
寝室とトイレを隣接させ、夜中でもすぐにトイレに行ける間取りにするのが理想的。将来、寝室にポータブルトイレを置いたりすることを検討しなくていいように、リフォームの際に検討しておきましょう。

3.収納を簡易シャワーにすることも考えて
トイレと同様、浴室も寝室のすぐそばにあるのが理想的です。当面必要ない場合でも、押し入れなどの収納があった場所に簡易シャワーを取り付けることを考慮し、もし余裕があればあらかじめ配管工事をしておくと、将来助かることがあるかもしれません。

洗面脱衣所 ――ヒートショックなど安全面に注意!

1.洗面ボウル下は空きスペースに
年をとって足腰が弱くなったら、椅子や車いすに座って洗顔や歯磨きをすることもあるでしょう。そんなとき洗面ボウルの下が収納だと足がつかえて体を洗面台にぴったりつけることができず、なにかと不便です。座って作業ができるように、洗面ボウルの下には空きを設けておくと便利です。

2.ヒートショック対策を忘れずに
洗面脱衣所の介護リフォームをする際に、もっとも気をつけたいのがヒートショック対策です。窓がある場合は冷気が入らないように二重窓にする、暖房器具を設置できるよう足元にコンセントを用意しておくなどの対策をとりましょう。

3.転倒防止のためにも椅子の設置を
手すりの設置に加え、椅子を置いておくとよいでしょう。靴下の脱ぎ着なども椅子に座ってできるので転倒防止になり、歯磨きや髭剃りなどをするときも重宝します。

4.水栓は引き出せるタイプが便利
高齢になった場合、蒸しタオルで体を拭いたり、洗髪をしたりして入浴に代えるときもあります。洗面脱衣所で洗髪することを想定し、水栓は引き出せるシャワーヘッドがついているととても便利です。

浴室 ――事故の多い場所だからこそ、安全対策を!

1.扉は引き戸がオススメ
浴室の扉は、浴室側に開く内開きタイプや折れ戸が多いと思います。でも、もしも高齢者が内開き戸や折れ戸の前で倒れたら扉が開かず、救助に手間取ることにもなりかねません。浴室の扉はいつでも開けることができるよう引き戸にするのがオススメです。

2.万一にそなえ浴室内インターフォンを
浴室は、滑りやすかったり、ヒートショックの危険性があったりと事故が起こりやすい場所。何かあったときすぐに浴室の中から誰かに助けを求められるよう、浴室内にインターフォンや、呼び出しベルをつけることを検討しましょう。

3.手すりは入口から浴槽まで
濡れた床で滑ったり、なにかの拍子に体がふらついたりすることも考え、浴槽までの壁に手すりをつけておくとよいでしょう。

4.浴槽は実際に入って選ぶ
浴槽の広さや長さも重要なポイントと小川さん。
「男性にはちょうどよい浴槽の長さでも、女性には大きすぎることがあります。座った姿勢で浴槽の端に足が届かないと、お尻が滑った拍子に全身が湯船に沈み込み、思わぬ事故につながることもあります。ご夫婦で浴槽を選ぶときは、必ずショールームに行き、実際に浴槽に入ってみて自分の体に合うものを選ぶことが大切です」

トイレ ――新しい設備や機器は早めに導入を

1.手すりは「取り付け位置」と「左右」を確認
身長が高いか低いか、右利きか左利きかなど、人によって手すりの適切な位置は違ってくるもの。説明を聞くだけではなく、ショールームで確認したり、手すりのサンプルを見せてもらったりして、自分に合ったサイズや太さの手すりを選ぶと同時に、実際にトイレでシミュレーションをして適切な取り付け位置を確認するようにしましょう。

2.入口スペースは広く、扉は引き戸に
トイレの介助が必要になることも考え、入り口やトイレ内のスペースはゆったりとりましょう。また、車いすでの移動やトイレ内のスペースの有効活用を考えると引き戸にするのがオススメです。

3.暖房器具を設置するなどのヒートショック対策を
洗面脱衣所や浴室と同様、トイレにもヒートショック対策が重要です。トイレに設置できるコンパクトサイズの暖房機器などを設置することを考えましょう。

4.新しい設備や機器の操作方法になじんでおこう
最近のトイレは「便座を温める」「流す」「お尻を洗う」「フタを閉める」などがすべて自動化されていてとても便利。でも、新しい設備や機器は使い慣れていないと、いざというとき使えなかったり、間違った使い方をしたりするもの。これから使うものをしっかり考えて決め、早めに使いこなしておくことが大切です。

 2回にわたって「部屋別 介護リフォームのコツ」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。「自分の将来のために、いまから考えようか」「両親のために、そろそろ考える時期かな」と思われた方も多いのでは? これまでご紹介した介護リフォームのコツを参考に、介護される人にも介護する人にも快適で便利な家づくりをぜひ考えてみてください。

お話を伺った人

小川千賀子さん

一般社団法人 日本インテリアアテンダント協会 理事長
株式会社デザインクラブ 代表取締役社長
ディベロッパー、リフォーム会社勤務などを経て、1998年に株式会社デザインクラブを設立。2013年、一般社団法人 日本インテリアアテンダント協会設立。ユーザー側の立場で専門家とつなぐ役割を持つ「インテリアアテンダント」を職業として確立し、ユーザーに介添することで家づくりにおけるトラブルを未然に防ぎ、住まいづくりをもっと楽しくすることを目指す。著書に『女性の生活目線でわかった! 99%失後悔しない「65歳からのリフォーム&家づくり』(日本文芸社)、『住まいをもっと楽しくするイマドキの方法』(カナリア書房)などがある。

文=桑原奈穂子 撮影=加々美義人 写真=shutterstock

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)