藤山:その一瞬を目指してリビングのフォーメーションを固めてしまえば、どこか実生活と乖離した、夢だけでつくられたプランになるおそれがある。
鈴木:とはいえ、建売住宅をはじめとするほとんどの住宅が、判で押したようにリビングの南側に大きな掃出し窓を設置する。それがうまく機能する家ならいいのだけど……。
藤山:収納や片づけという観点では、鈴木さんの著書(「片づけの解剖図鑑」エクスナレッジ刊)で、「住宅に必要なのは窓ではなく壁なんだ」と強調されていますよね。特にリビングは、窓と壁のバランスが大切になる。大きな窓を付けると、夏暑くなりやすいだけでなく、モノを置く壁面も失ってしまう。
鈴木:あの本に書いた「壁面の量が収納量を決める」という解説は評判がよくて、読者からも「目から鱗でした」というお手紙をいただくことが多い。それだけ、モノを置くには壁が必要という条件は、意外と忘れがちなことなんだと思う。
藤山:新築の打ち合わせでは、そういう話をされるわけでしょ?
鈴木:しますね。「大きな窓を付けてもよいですが、テレビを置く場所がなくなりますよ」とか。そうすると、「うーん、テレビかぁ。そうだなぁ……」ってそこで1回いきづまる。「じゃあ、テレビはここに置くからここが壁になって、そうするとソファがこっちにきて……」なんてやっていると、「あっ、庭が全然見えない」ってもう一回行きづまる(笑)。
藤山:実際、そうやってあれこれ悩まれたお客さんは、数年後どんな感じですか?庭の管理もしっかりされています?
鈴木:いまは、共働きの家庭がほとんどでしょ。お父さんもお母さんも一生懸命働くんだ。そうなると、庭なんてかまっていられなくなる。
(つづく)
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