藤山:もう一つ、風通しの確保も見過ごされがちです。
鈴木:そうだね。建物の南と北に窓を取っておけば、それだけで風通しが確保できると思い込んでいる設計者は少なくない。現実にはそのとおりにならないことも多いのに。
藤山:図面を見ると、建物の南の窓から北の窓へ、風通しの矢印がヒラヒラッと羽衣みたいな絵で描いてあったりしますよね、青色で。
鈴木:それ、とりあえず描いているだけという人もいると思うよ。さしたる根拠もなしに、なんとなく。「こうなるといいな」という願望(笑)。
藤山:以前、住環境の専門家が、「某老舗建築雑誌の『環境住宅特集』を見ていたら、掲載されている住宅の<風通しの矢印>が、どれもこれもデタラメであきれ返った」とおっしゃっていました。本当にその矢印どおりに風が流れるとしたら、ノーベル賞ものだと。
鈴木:光と風って、建築のなかではほとんど神話みたいな扱いになっている。一般の人はもちろん、設計者だって、光と風は何の疑いもなく全面的に良きものとして受け入れようとする。
藤山:たしかに。だから、必ずしも良いことばかりではないと意識しておかないと、思わぬミスを犯してしまう。
鈴木:光が入るということは、同時に熱も入ってくる。南西に面しているキッチンなら、そのせいでモノが腐りやすくなる。家相や風水でもキッチンは南西に置くなといっているけど、これって昔ながらの暮らしの知恵で、考えてみたら当たり前の話なんだよね。
(つづく)
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