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鈴木:今朝、現地調査に行ってきたお宅もまさにそのパターン。依頼者のお父さんが建てられた戸建てをリフォームしてほしいという案件なんだけど、家の中に入ると、南面に大きな掃出し窓、さらに大きな吹抜け、吹抜けの上にはトップライトと高窓まであって、日が燦々と降りそそいでいる。まだ6月だというのに地獄のように暑いわけ(笑)。
藤山:でしょうね。
鈴木:せめてトップライトとその近くにある高窓を開けて、室内の熱気を逃がせればよいのだけど、そう提案したら「窓を開けるとハチが入ってくるからダメ」って。という前提条件で、「先生、なんとかしてくれ~」。
藤山:一からやり直し(笑)。
鈴木:そういう話はよくある。
藤山:そうでしょう。
鈴木:昔、見学に行った住宅はもっとすごかった。2階の南側に、奥行きは浅いけど幅の広い寝室が設けられていて、よせばいいのに南面を天井まで窓ガラスにしていた。設計した建築家が家の中を案内しながら、得意気にこう言うわけ。「このベッドルームでは、星空を見ながら眠りにつけます」。それはそうかもしれないけれど、夏場は間違いなく早朝からまぶしくて寝ていられないよ。昼間は室温が上昇して蒸し風呂状態になるだろう。体調が悪くてちょっと横になりたいと思っても、このベッドでは余計に具合が悪くなるかもしれない。そういう代物だった。
藤山:クライアントが気の毒ですね。
鈴木:その後何年か経って、その建築家に、「あの寝室、どうなりました?」って聞いたら、「いまは別の部屋に寝ていると言っていたかな」って。しれっと。
藤山:しれっと。
鈴木:おそらく、図面や模型を見せられた段階では、クライアントの頭の中にはよいイメージしか浮かんでいなかったと思う。
藤山:星空を見ながら眠りにつく私。
鈴木:でもそれって、全体の一面しか見ていないわけだから、現実には穴だらけじゃない?本当はその穴を建築家が先回りしてふさいでいくべきなんだけど、ヘタすると建築家まで一緒になって星空を思い浮かべてウットリしている。
藤山:実際、そうだったのでしょう。
鈴木:住宅の設計で見落としがちなのが、そうした暑い寒いにかかわる熱のコントロール。あと、音の反響。こういう目に見えない、写真には写らないものこそ、見過ごしていると、のちのち深刻な事態を招いてしまうからおそろしい。