

藤山:窓の大きな家って、人気がありますよね。鈴木さんのところにいらっしゃるお客さんも、「窓の大きな家にしたい」と要望されませんか?
鈴木:窓の大きな家にしたいと言われる人は多いです。
藤山:なぜでしょう?
鈴木:それはやはり、明るさとか開放感とか……
藤山:窓が大きいと部屋が明るくなって……
鈴木:外の眺めもよくなる。部屋が広く感じられて気分がいい。壁に囲まれた家とは世界が変わるしね。昔、こんなことを言われたお客さんがいましたよ。「窓が小さくて快適な家より、夏暑くても窓の大きな明るい家のほうがいい」。60代の奥様でしたが、小さいころに育った家が昔ながらの日本家屋で、日中でも家の中が暗い。なんだか気が滅入ってずっと居心地が悪かったって。だから、新しく家を建てるなら、絶対に白くて明るい、大きな窓がたくさんある家にしたいと思っていたと。
藤山:子供のころの反動で。
鈴木:でも、大きな窓をたくさん付けたら、夏は暑くて大変ですよと忠告したの。そうしたら、「暗いのをガマンするのはつらいだけだけど、暑いのをガマンするのはまだ笑っていられるからそのほうがいい」って。
藤山:大したものです。
鈴木:おそらく、ボクらより上の世代の人って、日の光に対する憧れが人一倍あるんだよ。古民家とまではいわないけれど、いわゆる昔ながらの日本家屋に見られる深い軒とか縁側空間、谷崎潤一郎のいう「陰影礼賛」みたいな光と影の世界って、実際そういう家に住んでいた人にとっては、「そんなことはどうでもいいから、もっと明るい家にしてくれ」と(笑)。「もっと光を」が本音なんだね。