藤山:谷崎よりゲーテだ(笑)。
鈴木:いまの若い世代の人でも、住宅密集地にある日当たりの悪い一軒家に育ったとか、生まれてこのかたずっとマンション暮らしとか、そういう人は、大きな窓をほしがるような気がする。それまでの鬱憤を晴らすかのように。
藤山:明るい家と暗い家、どちらがよいかと聞かれれば、それは一も二もなく明るい家でしょうが、話はそこで一件落着とはいきませんよね。明るくするにもいろいろな方法があって、いまの奥様のように窓の大きな家をリクエストされたら、そのぶん夏の暑さ対策を考えなくてはならない。実際、どうされています?
鈴木:基本的には軒や庇で日差しをカットするしかないけど、それ以前に、窓がどちらの方角を向いているかで対策が全然変わるじゃない?完全に南向きなのか、ちょっと東南向きなのか、西南向きなのか……。むろん、西側に近づけば近づくほど条件は厳しくなって、どんなに軒を深くしても意味がなくなる。
藤山:西日が直接差し込んできますからね。
鈴木:そうなると、大きな窓を付けること自体がナンセンス。設計者としては、「明るい家にするほかの方法を考えますから、大きな窓はおやめなさい」と進言するほかない。
藤山:窓を大きくする以外の方法を探る。
鈴木:普通はそうなるよね。
藤山:でも、普通じゃない設計をしてしまった家は多いでしょう。住宅街を歩いていると、たまに設計事務所が手がけたと思しき窓の大きな家が目にとまりますが、私などはついスマホの方位磁石のアプリを立ち上げて確認しちゃうんです。<窓の方角はどっちかな?>って。たまに、ちょっと西向きに大きな窓をつけている家があって、他人事ながら勝手に心配したりしている。
鈴木:「中の人、暑くないかな」って?分かるよ、それ。
(つづく)
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