藤山:モノが置けるというのは、幅にしてどれくらいですか?
鈴木:80cm取れればいいほうかなぁ。
藤山:洗面ボウルの幅は?
鈴木:40~50cmくらいかな。
藤山:洗面ボウルの幅よりカウンターの幅のほうが大事?
鈴木:やっぱり、空いているところの広さが重要だよね。
藤山:洗面ボウル自体のこだわりってあります?
鈴木:スロップシンクみたいな深さのあるタイプにすると、つけ置き洗いの洗濯にも使えるので便利。靴などもそこで洗いやすい。ボウルの底が斜めじゃなくてフラットなタイプなら、ボウルの中にモノを立てたまま置けるというメリットもある。ただ、底がフラットな洗面ボウルを嫌がる人もいる。ボウルの角が曲面じゃないから掃除がしにくいというんだね。ここは本当に好みが分かれるところ。
藤山:洗面ボウルというと、大きな信楽焼きみたいなやつをカウンターの上に置きたがる人もいるじゃないですか。鈴木さんのお客さんはどうですか?
鈴木:木のカウンターの上に洗面ボウルや手洗鉢を置くのは、たいてい予算がギリギリでコスト削減のために行う提案かな。お客さんも「それでガマンします」という感じ。そういえば思い出したんだけど、女の子供が2人いる4人家族、要するにお父さん以外は全員女性という家庭は、洗面台に洗面ボウルを2つつけてほしいというリクエストがけっこう多いね。
藤山:へえ。
鈴木:娘が2人いると、朝の洗面室がラッシュで取り合いになるから絶対2つつけてくれって。
藤山:ああ、そういえば女性用の化粧室って、いつも行列ができていますよね。家の中でも同じ状態になるのでしょうか。
鈴木:「えー、こんなに狭い家なのに2つもいるんですかぁ」ってつい本音が出ちゃうんだけど(笑)、どうしてもという家は少なくない。
藤山:実際、2つとも使われてます?
鈴木:うん、竣工後に2つとも使っているか尋ねてみたら、「鈴木さん、便利よ~便利よ~」って、みんな満足度が異常に高い(笑)。ただ、不思議なもので、1つの洗面台に2つの洗面ボウルではなく、1階に洗面台を1つ、それとは別に2階の階段を上がったあたりに洗面台をもう1つって感じで2つつくると、2階のほうは、どの家も、誰も使ってくれない。
藤山:へえ。
鈴木:不思議だよね。同じ場所に洗面ボウルが2つあると超便利で、違う場所に洗面台が一つずつあると誰も使わないんだから。
藤山:たしかに。
鈴木:この謎における鈴木仮説は、「人は歯ブラシを置く場所を1カ所に固定しておきたい願望がある」だ。
藤山:そうかな(笑)。私のリサーチでは、新築後の後悔として、「2階にも水が出る場所をつくっておけばよかった」と言っている人はかなり多いですよ。
鈴木:そうそう。だから、こっちもそう思って先回りしてつくるんだけど、実際には誰も使っていないの。もはや、「ないと欲しがる、あっても使わない」というお客さんの要望七不思議の1つだな、これは。
藤山:残りの6つは、この連載が終わるまでにじっくり考えましょう。
(つづく)
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