ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第22回】あなたの知らない洗面・脱衣室(2)

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藤山:室内干し以外で人気のあるアイデアって、何かあります?

鈴木:室内干しに似ていなくもないけど、こちらから提案してほぼ採用されるのが、洗濯機の上につける棒だね。

藤山:棒?

鈴木:洗濯機の上に乾燥機をつけない家は、乾燥機のスペースが丸々空くじゃない?そこに棒を1本つける。するとその棒が、ハンガーを一時的にたくさん掛けられる場所になる。

藤山:ほう。

鈴木:洗濯機からシャツを取り出したら、ハンガーに掛けてそのまま上の棒に引っ掛ける。次のシャツを取り出したら、またハンガーに掛けて引っ掛ける。その次も、その次も……ってシャツを全部掛け終わったところで、まとめて外に干しに行く。この流れが実に効率的なんだ。ちょっとした省力化。家事労働の軽減になる。

藤山:なるほど。同じ作業もその場でやるのと、外の物干し竿のところまで行ってやるのとでは、気持ちも手間も変わるような気がするかもしれません。やっていること自体はそんなに変わらないのでしょうが。

鈴木:ずいぶん前に、あるお客さんからそういう要望を出されたのがきっかけ。なるほどぉと思って次のお客さんにその話をしたら、「それはいいわね」となった。で、次のお客さんにも、その次のお客さんにも……って感じで定番化した。人によってはハンガーを吊るすだけじゃなく、家族の人数分、そこにバスタオルを干している家もある。

藤山:いま、洗濯機と聞いてふと思ったのですが、ここ最近はドラム式の洗濯機が急に増えたじゃないですか。個人的にはドラム式の何がいいのかよく分からないのですが、鈴木さんのお客さんは何割くらいがドラム式を使われています?

鈴木:半々くらいかな……ドラム式と縦型で。ただ最近は、ドラム式から縦型に買い換える人が増えている。一時期ドラム式が多かったんだけど、最近また縦型に戻る傾向にあるみたい。

藤山:おお、それは縦型派としてはうれしい。私はドラム式の何がイヤかというと、洗濯物を出し入れするとき、腰をかがめるのが怖いんです。あの格好はギックリ腰を誘発するポテンシャルが高すぎる(笑)。腰が悪い人にとっては悪魔の姿勢です。

鈴木:それは一理あるね。ちなみに、設計上のメリットをいえば、ドラム式は「上が使える」というのが大きい。洗濯機の上に棚がつくれる。あと、イメージがよさげ。外国映画みたいで。

藤山:たしかに、上が使えるというのは大きいかもしれません。特に洗濯機をキッチンに納めたければ、ドラム式でなければ納まらないでしょうし。

鈴木:間違いなくそうだね。でも減ったよ、ドラム式は。逆に、ちょっと増えているのが2槽式。

藤山:えっ、新たに2槽式を買う人がいるんですか?

鈴木:いるいる。割合からすれば少ないけど、根強いファンに支持されている。メーカーも新製品を出しているしね。

藤山:それは知らなかった。2槽式のメリットって何です?

鈴木:ある意味、使い勝手がよいこと。全自動は便利なようだけど、なにもかも自動で最後までやってしまうから、細かな融通が利かない。たとえば、形態安定のYシャツを洗濯するとき、脱水までするとシワになりやすいから、いちばんいいのは脱水前に取り出してそのまま干す方法。そのとき、全自動だったらいったん止めてシャツだけ取り出さなければならないけど、2槽式なら洗濯の工程が終わればイヤでも取り出さざるを得ない。

藤山:おお、そこは盲点でした。

鈴木:あと、洗濯機を2度3度と回したいときに、全部終わるまで待たなくていい。

藤山:そうか。先発が脱水に入ったら、すぐに次発の洗濯に入れますもんね。

鈴木:少量の洗濯物でも気兼ねなく回せるというのもいいところかな。

藤山:頼もしいじゃないですか、2槽式って。

(つづく)

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鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

 

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