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【第21回】あなたの知らない洗面・脱衣室(1)

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藤山:前回は、玄関のあるべき姿について考えましたが、今回はその「洗面・脱衣室バージョン」でいこうかと思います。「理想の洗面・脱衣室」とは、どのようなものでしょうか。

鈴木:最近やたらと増えているのが、室内干しのニーズだね。

藤山:洗面・脱衣室に洗濯物を干したい、と。

鈴木:そう。室内であれば、なにも洗面・脱衣室である必要はないのだろうけど、脱水まで終わった洗濯物を洗濯機から取り出してその場で干せれば、それがいちばんラクだよね。室内干しのスペースをつくるなら、洗面・脱衣室が、結局はいちばん合理的といえる。

藤山:室内干しのニーズが高まっているのは、花粉症の影響もあるのでしょう。

鈴木:それは大きい。あとは共働き家庭のニーズかな。夜、帰宅して洗濯する場合、朝、出かける前に洗濯する場合、どちらも外に干すよりその場で干せるほうが時間的にも断然有利。

藤山:ただ、単なる洗面・脱衣室であれば1坪もあれば十分でしょうが、室内干しスペースを設けるとなれば1坪ではちょっと足りませんよね。

鈴木:まったく足りない。まだ小さな子供がいる家庭は洗濯物の量も多いだろうから、かなり広めのスペースを設けないと満足に干せない。長さ1m程度のパイプを掛けたくらいでは全然ダメ。3mでぎりぎりかなという感じ。理想としては、ピンチハンガーが4つ掛けられるくらいの長さがほしい。

藤山:そうなると、あと1畳分くらいは広くしないと満足な室内干しは出来ませんね。実際、どうされてます?

鈴木:よくやるのは、長さで1間半(2.7m)から3m、幅で60cmくらいのスペースを通常の洗面・脱衣室にプラスするかたち。そこに物干し用のバーを掛けて、その下は収納棚にする。これが、「鈴木式の室内干しスペース付き洗面・脱衣室」。

藤山:お客さんの評判はいかがでしょうか?

鈴木:「とても重宝してます!」って、誰からも喜ばれているよ。

藤山:ということは、新規のお客さんとの打ち合わせで、室内干しを設けた洗面・脱衣室の写真を見せたら、「うちもこうしたい」と言われたりしません?

鈴木:みんな言う(笑)。ただ、敷地が狭くて60cmの余裕すら取れない家では、ちょっと苦労するね。

藤山:その場合、どうするんですか?

鈴木:仮に洗面・脱衣室が1階にあって、その上に2階の部屋がなければ、洗面・脱衣室の天井を高くして、天井付近まで物干し用のバーを自動で上げられる装置を付けたりする。

藤山:高さの方向を利用する。

鈴木:そう。

藤山:逆に、室内には一切干しませんという人もいらっしゃいますか?

鈴木:それはもちろん。基本的には外に干すけれど、花粉が飛ぶ時期と梅雨の時期だけはガス乾燥機を使うから大丈夫という人がそのタイプかな。まあでも、室内干しのスペースを設けないにしても、洗面・脱衣室が1坪というのはちょっと狭いかもしれない。

藤山:考えてみたら、洗面・脱衣室ほど多種多様なモノが収納される部屋ってありませんよね。

鈴木:タオル、化粧品、着替えの下着、置く場所がなくてさまよっているモノとか……、なんでもかんでも集まってくるからね。

藤山:予備の洗剤に予備のシャンプー。予備系のモノも多いです。

鈴木:そのわりには小さめにつくられるのが、洗面・脱衣室のつらいところだ。

藤山:名前が悪いのかもしれませんね。顔を洗って服を脱ぐだけなら、1坪もあれば十分な気がしますから。「ユーティリティー」とか「洗濯室」って言葉もありますけど、それはまたちょっと違うような気もしますし……。

(つづく)

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鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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