鈴木:つぎの、「引出しタイプだと収納が少ない」というのは、既製品の洗面台の引出しのことかな?
藤山:おそらくそうでしょう。
鈴木:たしかに、洗面室っていろいろな形のもの、特に化粧関係、美容関係のものが多く収納されるけど、それらの高さや大きさってまちまちだから、引出しの中にそのまましまうと確実にデッドスペースができる。そういう意味では「収納が少ない」というのはたしかにそのとおり。かといって、洗面台の下ががらんどうで観音扉がついているだけのタイプも、それはそれで工夫をしないとデッドスペースができる。
藤山:結局、どちらもそのままでは使いづらいってことですね。
鈴木:既製品の収納はどのようなものでも、工夫次第で良くなったり悪いままだったり……だね。
藤山:ちなみに、この手の収納の工夫は丁寧に解説している書籍やウェブサイトがたくさんありますから、そちらを参考にしてもらうといいかもしれません。
最後、3つめのお悩み。
「洗面所もキッチンも値段にすごい差がありますが、何がそんなに違うのでしょうか」とありますが……。
鈴木:これは「リクシルさんにお尋ねください」がベストの答えだろう(笑)。
藤山:材料のグレードが違うとか、そういうことですよね、きっと。
鈴木:実をいうと洗面台もキッチンも、普段の設計で既製品を使うことがほとんどないから、私はそのへんの事情にあまり詳しくない。きちんと答えられなくて申し訳ないです。
藤山:では、つぎのお悩み。これも、「どっちが良いですか?」系です。
みっちーのパパさん
「節電意識が高まるなか、太陽光発電や薪ストーブに注目しています。本当に節約になるのは、太陽光発電それとも薪ストーブ、どちらでしょうか?」
鈴木:なるほど。このお悩みは郊外と市街地ではかなり条件が異なるからなぁ……。まず太陽光発電だけど、これは太陽光パネルをかなり広い面積で設置しないと期待以上の効果は上がらない。いまは中国製、韓国製のパネルも普及し始めてだいぶ価格が下がってきたけど、それでも設置にかかるイニシャルコストを売電で取り戻すのはなかなか難しい。「自分は電力会社から電気を買うのがイヤだ」みたいな確固たる主義主張があって設置するなら別だけど、元を取ろうとして設置するのはあまりおすすめしないです。特に都市部では隣家の日陰になる時間帯があるようだと発電効率がかなり下がるから。
藤山:節電はともかく、お金の節約という意味では期待しないほうがいいかもしれませんね。薪ストーブはどうですか?
鈴木:これは、基本的には趣味のものだと捉えたほうがいい。特に都市部では、煙突から煙が出るせいで近隣からのクレームが多い。使うときの時間、曜日に制約が出るよね。あと、煙突の掃除を怠ると火災の原因になるから、少なくとも年に1回、屋根に上って掃除をする必要がある。専門の業者に依頼して毎年3万円くらいの出費。それから、燃料となる薪が手に入りにくい。うちのお客さんで薪ストーブを使っている人はどうしているかというと、当初は山に行って「軽トラの荷台いっぱいに積んで○円」みたいな単位で薪を買っていたらしいのだけど、だんだんその費用がバカにならなくなって、近頃は自分で山に行って、貰えるところを見つけて、自分で適当な長さに長さに裁断して、運び、自宅の軒下にぐるっと一周積んで、乾燥させて使っている。毎年春くらいから冬の薪の仕込みを始めている。
藤山:伐採する木は、誰が所有している木なんですか?
鈴木:街路樹を剪定したときに処分した枝があるじゃない?あれをまとめてストックしている場所があるわけ。そこに出向いて、必要な分だけ自分で小さく切って持って帰る。それはタダなんだって。だから、燃料の薪を確保する作業をいとわない人、なおかつその作業を趣味として楽しくやれる人。そういう人でないと長続きしないかな。
藤山:では、太陽光と薪ストーブを比較すると?
鈴木:どちらも節約にはならないかも(笑)。でも、「憧れ」という点では、ぜひ薪ストーブにチャレンジしてほしい。火を眺めて過ごす時間ってすごく贅沢だからね。家づくりって節約のことだけ考えていたらつまらないもの。
藤山:たまには贅沢もしないと。
鈴木:もし、太陽光や薪ストーブに使うお金があるなら、そのお金を断熱工事のグレードアップや窓ガラスのグレードアップに回せば、真冬でもほぼエアコン1台で過ごせる家ができる。それがいちばんの節約じゃないかなぁ。だけど、現実には建物の性能そのものにお金を掛ける人は少なくて、つい目先の便利系設備機器なんかにお金を使ってしまう人が多い。
藤山:電気代を節約したければ建物の性能を上げましょう、ですね。
鈴木:意外と知らない人が多いのだけど、あらゆる冷暖房機器のなかで本当に効率がよくて節電になるのはエアコンなんだよ。エアコンがいちばん電気を食わなくて効率がよい。それをうまく生かすような家づくりができれば、なにより経済的ということだね。
(つづく)
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