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【第82回】読者のお悩み相談 結露その他編(2)

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季節悩みリフォームレビュー

鈴木:大量の水蒸気を発生させる元を断ったら、つぎにすべきことは換気。

藤山:換気扇を回して湿気を屋外に排出する。

鈴木:ただし、換気扇を回すと、室内の温かい熱も同時に逃げてしまう。相対湿度が下がるのはいいけど、室温も一緒に下がって寒くなるのは痛し痒し。これを防ぐには、「全熱交換器」のような機器を組み込んで熱の逃走を防ぐのが望ましいけど、果たして予算的にそれが可能かどうか。

藤山:お金が結構かかりますよね。

鈴木:ちなみに、いま私が住んでいるマンションの換気扇は、引っ越したその日から数十年、一度も止めたことがない。

藤山:一度も!

鈴木:そう。「24時間換気」が義務付けられる前から、洗面・浴室の換気扇はずーっと回しっぱなし。その効果がどれくらいか定量的にはいえないけど、少なくとも最も結露が発生しやすい北側の玄関ドアに結露はできていない。南側のサッシにちょっとできるくらい。

藤山:やっぱり、換気扇の24時間稼働はマストですか?

鈴木:マストだね。特に浴室とトイレはマスト。キッチンもできれば、ずっと回しっぱなしでいい。

藤山:換気以外にも相対湿度を下げる方法はあります?

鈴木:室内に吸湿性の高いものを設置するのも効果的。

藤山:吸湿性の高いものとは?

鈴木:たとえば、無垢材のフローリング。床をスギやヒノキといった無垢材のフローリングに変えると、それが水分を吸ってくれるので相当な吸湿効果がある。あと、よく言われるのが、壁を左官で塗るという方法。だけど、これは一般の人が期待しているほど効果的ではない。あくまで補助的なもの。

藤山:左官壁はダメですか。

鈴木:製品によってはほとんど吸湿しないものもあるし、そもそも吸湿できる絶対量が壁に左官材を薄く塗った程度では少なすぎる。だから、マンションリフォームには「合わせ技」が必要になるの。本当は断熱改修がベストだけど、それが無理な場合は、床を無垢材のフローリングに変え、壁を左官系の塗り壁に変え、窓を真空ガラスに交換し、換気扇を常時稼働させる。もし、暖房器具に石油ファンヒーターやガスストーブを使っていたなら、それはエアコンか床暖房に変える。

藤山:石油ファンヒーターやガスストーブは燃焼時に水分を出しますから、これも結露の原因になりますね。

鈴木:そうやって、いろいろな対策をトータルで打って初めて、どうにかこうにか結露が止まる。これが、これまで私がマンションのリフォームをしながら得た結露対策の結論。

藤山:でも、miyaの妻さんは「費用対効果を考えた安価な対処法」と書いていらっしゃいますよ。リフォームはちょっと厳しいのでは?

鈴木:だったら、いちばんいい方法を教えます。除湿器を置くことです。

 

藤山:それを先に言ってください(笑)。

鈴木: 冬は乾燥の季節だからお肌のことを考えて加湿器を置くという人が多いかもしれないけど、結露が多い家は逆だね。除湿器を置く。湿気を強制的に排除することで相対湿度を下げる。おそらく費用対効果という点ではこれがベターでしょう。

藤山:たしかに。

鈴木:実際にお宅を拝見したわけではないから的を射た答えになっていないかもしれないけど、一般的にはいま言った方法でやるしかないだろうね。お二人とも、参考になれば幸いですって感じかな。

(つづく)

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鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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