ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第81回】読者のお悩み相談 結露その他編(1)

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季節悩みリフォームレビュー

藤山:きょうはお悩み相談の後半です。まずは、結露についてのご相談からいってみましょう。

たこすさん

「昭和40年代建築の団地に住んでいます。管理状態がよく、定期的に大規模改修があります。昨年すべての窓が二重サッシになり、隙間風や騒音が入ってこなくなって嬉しかったのですが、気密性がよくなりすぎて冬場の結露がひどいのです。壁もカビてきているので、何とか対策をしたいと思っています。いい考えを教えてください!」

鈴木:これは、古いマンションの改修でよくある話だね。二重サッシにしたことで、その家の弱点がそれまでのサッシ廻りから壁に移動した。

藤山:気密性が高まったことで湿気の逃げ場がなくなって、壁が結露するようになったと。

鈴木:そもそも結露が発生する条件を整理しておくと、まず一つは室内の水蒸気量、もう一つは内外の温度差。水蒸気を含んだ空気が、壁や窓の表面温度に触れて露点温度以下になると結露が発生する。ということは、相対湿度を下げるか、温度差を解消するか、このどちらかができれば結露は発生しにくくなる。ただ、相対湿度は室内に人がいて呼吸をしているだけでも上がるから、このコントロールは一筋縄ではいかない。なので、通常は温度差の解消に取り組んだほうが手っ取り早い。そのための手段が、いわゆる断熱性能・気密性能の向上。室内と屋外を隔てる壁、床、屋根などに断熱材を入れ、かつ気密性を高めることで温度差を解消する。

藤山:とはいえ、古い団地の断熱改修となると、工事はそこそこ大掛かりになりますよね。お金もかかります。

鈴木:仮に、壁を全部剥がしてフルリフォームできるのなら、コンクリートの躯体に発泡系の断熱材を隙間なく吹き付ければ万事解決。でも、そこまでお金をかけられる人はなかなかいないかもね。

 

藤山:温度差を解消する方向での対策は行き詰まりますね。

鈴木:そうなの。だから古い団地などの場合は話が振り出しに戻って、いったん保留にした「相対湿度を下げる」方向で何かできないかを考えていくことになる。

藤山:実は今回の相談者で、すでに結露対策を相当がんばっている方がいらっしゃるんです。その方のお悩みをここでご紹介します。

miyaの妻さん

「冬になると北側の部屋の冷たい壁、床、そして玄関のドアが結露します。窓には断熱のビニールを貼り、カーテンは床に届くよう長くし、クローゼットや壁に扇風機の風を当てたり、断熱吸湿効果を狙って段ボールや新聞を壁や床に立てかけたり貼りつけたりしますが、それでも1カ月ごとに段ボールなどを取り換えなければならないほどぐしゃぐしゃに濡れてしまいます。無駄に暖房をいれることはしたくありません。費用対効果を考えた安価な対処法を教えていただけると嬉しいです」

鈴木:この方はよく分かっていらっしゃる。

藤山:やるべきことはすべてやってますって感じですね。でも、段ボールがぐしゃぐしゃになるほど濡れてしまうというのは相当へこみますよ。

鈴木:これだけ手を打って改善しないというのは、そもそも室内に大量の湿気があるからではないかな?もし、お宅におじゃまできるのなら、その水蒸気の発生源をまず突き止めたいね。

藤山:部屋の中で洗濯物を干していたりして?

鈴木:そういうものが発見できれば、まずはその改善から。

 

(つづく)

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鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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