ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第78回】読者のお悩み相談 リフォーム編(2)

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悩みリフォームレビュー

藤山:ジャネットさんのほうはどうですか?

鈴木:ジャネットさんのご自宅も考え方は同じ。 いま和室になっているスペースが、キッチンに対してもっとオープンにつながっていればよかったかもしれない。ただジャネットさんの家は、あと10年くらいしたらこの和室が自分の寝床になっているかもね。

藤山:ああ、そうか。そういう家ってよくありますね。寝室はあるのだけど、夫婦のどちらかが別の部屋に寝るパターン。

鈴木:そもそも論になるけど、ジャネットさんのご自宅は、いま和室にしている部分をキッチンにしておけば、もっと使いやすい間取りになったのではないかと思うけど……。キッチンが奥になるのを避けたのかなぁ。

藤山:何か意図があったのでしょう。

鈴木:この間取りが残念なのは、玄関に直結しているリビング・ダイニング、そしてキッチンを通過して洗面脱衣室に行くルートがあまり良くないことだね。私なら畳の部屋をつくるとしても、畳コーナーを南側、いまキッチンがある場所に移動させるかな。で、そこをダイニングとして使う。畳の上で食事をするのが好きか嫌いかは別として。

藤山:位置を逆にするだけでいいのですね。

鈴木:そう。もし、いまの間取りをリフォームするとしたら、私なら洗面脱衣室へ行く通路を確保した、図のような2通りのプランを考えるだろうね。

 

藤山:ポイントは「通路」ですか?

鈴木:そうそう。部屋の広さを浸食する通路をどこに設けるかが、間取りのカギを握る。

藤山:そういえば、みみなさんの相談に、「リビングも20畳あるわりには狭く見えます」「リビングとキッチンまでの空間が無駄のように思える」とありましたが、これも通路が原因ですか?

鈴木:みみなさんのご自宅は、図面に「LDK19.5畳」とあるじゃない?でも、こういうとき気をつけたいのは、「LDK○畳」のうち、必ず4畳半~6畳はキッチンに割かれているということ。そして、リビングやダイニングからキッチンに移動する通路もLDKの面積に含まれているということ。

藤山:「通路」や「廊下」とは書いていないけれど。

鈴木:たいてい書いていない。だから、通路がどれくらいの面積を食っているか自分の目で確かめないといけない。みみなさんのご自宅は、キッチンに4畳半、廊下(通路)に4畳近く使っているから、残りは11畳くらい。となると、リビング・ダイニングは6畳2間もなくて、そう聞くとそんなに広いわけでもないなぁと分かるわけ。

藤山:19.5畳と聞くと広そうですけど。

鈴木:そこに数字のトリックがある。

藤山:「リビングも20畳あるわりには狭く見えます」というのは、ある意味当然なんですね。

 

鈴木:狭く見えるのではなく、実際に狭い。ジャネットさんのご自宅もそうだけど、細長い形の建物はどうしても動線上不利にならざるを得ない。

藤山:部屋のなかに通路ができてしまう。

鈴木:設計者の感覚だと、一般に住宅というのは1つの場所に最低4.5畳必要という基準で発想していく。調理するのに4.5畳、食べるのに4.5畳、くつろぐのに4.5畳、全部足して13.5畳あればどうにか住める。もう一部屋ほしい場合は、さらに4.5畳足して18畳。9坪だね。これが一つの基準になる。この基準にしたがえば、みみなさんの家もジャネットさんの家も一見大丈夫そうなんだけど、13.5畳がスムーズに機能するのは「田の字プラン」の場合だけ。各部屋を田の字に並べると通路が必要なくなるから、13.5畳でもうまくいく。だけど、細長い敷地では各部屋を直列に並べざるを得ないから、どうしても通路が必要になって部屋が削られる。

藤山:昔から、「間取りは田の字プランがよい」といわれるのはそういう理由からなんですね。

(つづく)

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鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

 

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