ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第77回】読者のお悩み相談 リフォーム編(1)

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悩みリフォームレビュー

藤山:今回は「読者のお悩み相談」です。事前に募集したところ、ずいぶんたくさんの悩みをお寄せいただきました。

鈴木:どれくらいきたの?

藤山:50件ちょっとです。

鈴木:そんなに。

藤山:きょうはそのなかから、いちばん件数の多かった「リフォーム」についてのお悩みを4件取り上げたいと思います。まず、1件目と2件目を連続でご紹介いたします。

みみなさん

「南北に縦長の土地に注文住宅を建てたのですが、和室をつくることができず、リビングも20畳あるわりには狭く見えます。子供のお昼寝も遊ぶのもリビングです。リビングとキッチンまでの空間が無駄のように思えるのですが、現状で可能な子供と過ごす1階のレイアウトや、リフォームする際に取り入れたほうがよい間取りなどあれば教えてほしいです。(中略)いずれ子供が小学生になったら『子供おもちゃ』の場所に学習机を置く予定です」

 

ジャネットさん

「子供が小さい頃に家を建てました。1階で家事をする間に寝かせておくために和室をつくりましたが、リビングとつなげておけば広い部屋になったのにと思いました。子供の成長に伴い、間取りに不満が出てきました。どのように間取りを考えておけば後悔しなかったでしょうか?」あえて2つの相談を並べてみたのは、お二人が和室をめぐって正反対のことで悩んでいらっしゃるからなんです。和室をつくらなかったことを後悔されているみみなさんと、和室をつくったことを後悔されているジャネットさん。

鈴木:深いねえ、これは。

藤山:深いでしょ。

鈴木:ま、結論から言えば、お二人とも和室という「部屋」ではなく、畳を敷くだけの「畳コーナー」をつくればよかったのでは?ってことだろうね。みみなさんはこれからそうすればいいし、ジャネットさんはそうしておけば畳の間を気軽に別の部屋に変更することができた。

藤山:和室という「部屋」にこだわり過ぎたのが、よくなかったのかもしれませんね。

鈴木:畳と収納がセットになったユニット家具みたいなものがあるじゃない?3~4畳半くらいの小上がりをつくれるやつ。あれを買ってきて置くといいよ。

藤山:鈴木さんだったら、みみなさんのご自宅をどういうふうにリフォームされます?

鈴木:まず、この間取りを見て思うのは、玄関とリビングの間に収納があるけど、この両サイドの壁が「耐力壁」になっていて構造上動かせないのがネックなんだね。どうしてここに耐力壁をもってきたのか不思議。この壁さえなければ、収納の部分を通路にできるし、リビングの使い方も自由にアレンジできたと思う。だけど、現状ではこの壁があることでリビングが南側に寄り、ダイニングとの中間部分が子供のおもちゃを広げる場所になっているのかもしれない。では、現状の間取りをどうすればよいかというと、子供が小さいうちは、いまリビングとして使っている南側のスペースに畳を敷くのがベターだろうね。最初からここを小上がりにして畳を敷いておけば、ソファは買わなくてよかったかもしれない。で、いま南側に置いてあるソファとテーブルは、畳コーナーの横に移動させる。可能なら、テレビは出っ張った収納の中に納めるとすっきりする。

藤山:これくらいなら、素人でもDIYレベルでできる工事ですね。

鈴木:ホームセンターに行けば、畳コーナーをつくる材料を売っているだろうから、それを買ってきて並べればおしまい。ただ、いまのはリフォームの第一段階。相談のなかに、「いずれ子供が小学生になったら『子供おもちゃ』の場所に学習机を置く予定です」とあるでしょ?なので、そのときがきたら畳コーナーはやめて、図のようにもともとテレビを置いていたところをワークスペースに変えるといい。するとここが、子供の勉強机兼お母さんがパソコンを使ったりするワークスペースになる。リビング3点セットは90°回転させて図のように置く。ちょっと変則的だけど、この配置がいちばん納まりよさそう。

 

(つづく)

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鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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