藤山:この連載、次回は「読者のお悩み相談」の予定なんですけど、それに先立ちまして、鈴木さんのお悩みをうかがってみたいのですが。
鈴木:私の悩み?なんだろう……。
藤山:悩みはないですか?
鈴木:悩みというのもヘンだけど……。
藤山:どうぞ。
鈴木:住宅業界全体が、お客さんに提供するプラン(間取り)をもう少しマシなものにできないのかという歯がゆさはあるなぁ……。
藤山:それが悩み?
鈴木:悩みというより、気がかり。工務店もハウスメーカーも、もっと積極的に新しい取り組みをしていけばいいのに、新しくなるのは設備機器ばかりで、暮らし方の提案は相も変わらず古いまま。そういう体質がずっと気になってる。いまだに、LDKというフォーマットにはめ込んだ間取りをつくるじゃない?玄関は玄関、トイレはトイレとしてつくる。それ以外の機能は一切なし。キッチンの幅は相変わらず2,400㎜だし。全体的に停滞しているなぁと感じる。
藤山:どうしてそうなるのでしょう?
鈴木:やっぱり、早く早く処理したいというのが大きいからでしょう。定型にはめ込んで手早くつくってさっさと売る。残念ながら、そういう人たちがいちばん多くつくっているんだよ、日本の家は。
藤山:マンションの引渡日が先に決まっていて、工期は一日たりとも先に延ばせないみたいな
鈴木:それも原因の1つだよね。最近、面白半分で不動産会社の家探しサイトみたいなものに登録してみたわけ。すると、次から次へと建売住宅の案内メールが来るようになった。それがことごとく、見るのも嫌になるくらい古くさい家ばかりなの(笑)。いよいよ家を買うかと思い立った普通の人たちは、いまだにこんな家しかあてがわれていないのかと知って愕然とした。もう少しどうにかしてあげられないのかなぁ。余計なお世話だろうけど。
藤山:だけど、古くさい家ばかりでイヤだなと思った人は鈴木さんみたいな設計者に助けを求められる選択肢があるわけだから、それはそれでいいんじゃないですか。共存共栄ということで。
鈴木:でも、個人で出来ることって数に限りがあるじゃない。あと、そこまで積極的ではないお客さんは、どうしても受け身になって出来合いのものを買って済ませようとするよ。そういう人たちをなんとかしてあげたいのだけど……。知ってる?いま、一世帯が4人以上の家というのは、世帯全体でみると20%くらいしかないんだよ。
藤山:単世帯や2人世帯が増えていますよね。最近の統計だと、単世帯がついに3割を超えるようになったとか。
鈴木:そうそう。だけど、不動産会社が提供する家は、相変わらず4人家族をイメージした間取りばかり。建売もマンションも。
藤山:5年くらい前、NHKの「きょうの料理」の材料表示が4人分から2人分になったという話がニュースになりましたけど、家族の形態って確実に変化していますからね。