鈴木:でも、お客さんはずいぶん満足されたんだろうね。帰り際に両手を合わせて拝みながら、「ありがとうございました~、ありがとうございました~」って。
藤山:神扱い(笑)。
鈴木:いや、ほんと、そんな感じ。
藤山:さっきの横浜の奥様もそうですが、素人目にも「これはちょっと……」と感じてしまう家って、何か共通点があるんですかね?
鈴木:細かいことを言い出すときりがないけど、全体的には「その家に住んでいる自分の姿が想像できない」ってことなんじゃないかなぁ。工務店なり、設計事務所なりが、お客さんのイメージする生活に寄り添えなくて、自分の都合だけで話を進めてしまうと、小さな違和感が積み重なって、「そもそもこの設計案自体どうなの?」というところまで不安が膨らんでしまう。それでも、互いに信頼関係があれば少しずつ歩み寄れるのだろうけど、そこまで関係ができていないとね……。
藤山:だったら、いっそのこと別の設計者に聞いてみるかと。
鈴木:だろうね。そもそも、うちみたいな設計事務所にいらっしゃる人って、その時点ですでにセカンドオピニオンかサードオピニオンだから。
藤山:あ、そうか。すでにほかの会社をひと通り回ってきているわけだ。
鈴木:住宅展示場に行ってみたり、ハウスメーカーのカタログを取り寄せてみたりしたけど、なんか違うな~と感じた人が、「もっとほかに家はないの?」と探し始めて、ようやくうちみたいな事務所にたどり着く。
藤山:設計事務所ってちょっと怖そうだし、いきなりは行きたくないのかもしれません。
鈴木:そういうイメージがあるよね。一般の人には敷居が高く思われているのか、いまだにファーストオピニオンにはなり切れていないのが残念。もっと気軽に相談だけでもしてくれたら、この先袋小路に迷い込んでしまうかもしれない人に、あらかじめ道筋をつけてあげられるのに……。
藤山:まさに占い師。でも、それは私ですら思いますよ。「自宅の設計を設計事務所に依頼しようと思うのだけど、どういうところに頼んだらいいですか?」という人がいたら、ぜひアドバイスしてあげたい。世の設計者たちに、「藤山いい加減にしろ!」って怒られそうな話をいっぱい教えてあげられるのだけど(笑)。
(つづく)
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