鈴木:そういうものは、IKEAでも無印でもいいけど、テレビ台だけは新築を機に買い換えたほうがインテリアの雰囲気が良くなりますよとアドバイスしている。
藤山:もちろん、新築やリフォームのタイミングで家具を揃えられればよいのでしょうが、昔から使われていた家具が新居に持ち込まれる場合、せっかくの真新しいインテリアが古い家具とマッチしないという問題が生じませんか?
鈴木:それ以前の問題として、新居に既存の家具を持ち込まれる人は、家具が1つだけではない。すでにたくさんの家具をお持ちなわけ。だけど、各々のテイストがだいたいバラバラなんだね。ダイニングはカントリー調、リビングは北欧風、寝室はシンプルモダン……といった具合に、既存のインテリア自体に統一感がないから、新居のインテリアの方向性を見出すのすら難しい。だけど、それは無理もないよ。長い間、少しずつ買い揃えられた家具というのは、そのときどきの流行や自分自身の嗜好の変化がダイレクトに反映されたものだからね。
藤山:たしかに、人の好みって10年単位くらいで微妙に変わりますよね。先日、20年ほど前に買ったCDの山を整理していたのですが、当時聴いて「失敗した」と思っていたCDが、いま聴くと「なにこれ!全然いいじゃん」って……。音楽もインテリアも「趣味もの」という意味では、長年同じスタイルで統一されているほうが、むしろ珍しいことなのかもしれません。
鈴木:そのとおり。
藤山:だとすると、住宅の設計者としては、顧客の趣味嗜好が変化してもインテリアがチグハグにならないよう、シンプルなフレームだけの建築をつくってあげたほうが無難という考え方もありますか?
鈴木:それも一理ある。おもしろくもおかしくもないけれど、白い壁だけの素っ気ない空間にしておけば、どのような家具が置かれても「大外し」することはない。だけど、そうすると今度は床の色をどうするかでちょっと悩む。
藤山:床の色?
鈴木:たとえば、床の色を明るくすると、濃い色の家具が置かれたとき、床と家具のバランスが悪くなる。かといって、あらかじめ濃い色の床にしてしまうと、今度は落ち着きすぎで、地味な、暗い印象を与える部屋になってしまう。どちらかといえば、ちょっと濃いめの床にしておくほうが無難だけど、濃い色のフローリングってたいてい高価なんだよね~(笑)。
藤山:コストが……。
鈴木:だから、やっぱり明るめの床もありかなぁ……でもなぁ……って、床の色だけで無限ループにはまっていく(笑)。「何にでも合わせられる」って、実はけっこう難しいんだよ。
(つづく)
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