鈴木:ちなみに、高齢になればなるほどソファよりダイニングチェアに座っているほうがラクになる。この頃、自分でもそれを実感しているところ(笑)。年配のお客さんの家で打ち合わせをするときは、たいていダイニングテーブルに座ってやり取りするからね。
藤山:そういえば、サザエさんの家にはリビングもソファもありませんね。みんな、丸いちゃぶ台に集まってご飯を食べたり、カツオが波平に怒られたりしている。磯野家の生活はあれで十分成立していて、何の問題もなさそうです。
鈴木:「うちは3LDKだ」と思っている人の家も、よく見るとダイニングのそばにおまけのようなリビングが付属しているだけで、リビングがリビングとして十分機能していない家も多いのではないかな。
藤山:実質的に磯野家とほぼ同じですね。ちゃぶ台の足が伸びてダイニングテーブルに変わったくらいで。
鈴木:そうそう。だから、面積に余裕がないなら、無理してリビングをつくらないほうがしっくりくることも多い。そもそも、われわれが海外ドラマで見るようなソファのあるリビングって、6畳や8畳ではないからね。だいたい20畳くらいはあるんだから。
藤山:広さが全然違うのに、家具だけは海の向こうと同じように配置すれば、当然バランスが崩れます。
鈴木:おそらくパーセンテージでいうと、リビングのなかに家具が占める割合は、床面積の15%以内が適正値ではないかと思う。
藤山:15%ですか?
鈴木:たとえば、ソファのサイズを畳1枚分とすると、6畳の部屋ならソファを置いた時点で15%を超えてNG。実際、そういう家は圧迫感が強い。8畳なら15%以内に収まるけど、リビングにはソファ以外にもテレビ台やチェストなどが置かれるから、トータルではやはり15%をオーバーする。というわけで、8畳くらいのリビングなら、大きなソファは無理して置かないほうがいいというのが私の見解。
藤山:なるほど。
鈴木:そういえば、思い出した。
藤山:なんでしょう。
鈴木:この前知り合いが、住んでいた家を売りに出したというので現地に行ってみたの。横浜のランドマークタワーの近くにあるマンションで、広さは120㎡くらい。売値は9,000万くらいといっていたかな。その家のリビングは24畳くらいあった。それくらい広いリビングだと、さすがにソファを置くとサマになるなぁとあらためて実感したよ。
藤山:むしろ、ソファくらい置いていないと、逆に納まりが悪いでしょ?
鈴木:そうそう。空間がまったく締まらない。やっぱり、リビングにソファを置いたり、テレビ台を置いたりするなら、24畳とはいわないけれど、最低18畳以上はほしいかなぁ。それが無理なら、ダイニングとリビングを兼用する方向で間取りを考えるのも一つの方法。
藤山:磯野家タイプで行け、と。
(つづく)
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