ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第47回】ソファは座るためだけの家具ではない(3)

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鈴木:ソファにもいろいろあるけど、3人掛けの大きなソファは特に注意したほうがいい。敷地の狭い都市部の住宅では、リビングとダイニングが一つながりになる間取りがほとんどでしょ?実はそういうタイプの間取りは、ダイニングテーブル1つあれば、たいていの用事はそこで済んでしまう。ダイニングテーブルでご飯を食べ、ダイニングテーブルでテレビを見、ダイニングテーブルでお茶をすする。狭いリビングに無理矢理大きなソファを置いて、部屋を余計狭く感じさせる必要はないわけだ。

藤山:ええ。

鈴木:ちなみに、高齢になればなるほどソファよりダイニングチェアに座っているほうがラクになる。この頃、自分でもそれを実感しているところ(笑)。年配のお客さんの家で打ち合わせをするときは、たいていダイニングテーブルに座ってやり取りするからね。

藤山:そういえば、サザエさんの家にはリビングもソファもありませんね。みんな、丸いちゃぶ台に集まってご飯を食べたり、カツオが波平に怒られたりしている。磯野家の生活はあれで十分成立していて、何の問題もなさそうです。

鈴木:「うちは3LDKだ」と思っている人の家も、よく見るとダイニングのそばにおまけのようなリビングが付属しているだけで、リビングがリビングとして十分機能していない家も多いのではないかな。

藤山:実質的に磯野家とほぼ同じですね。ちゃぶ台の足が伸びてダイニングテーブルに変わったくらいで。

鈴木:そうそう。だから、面積に余裕がないなら、無理してリビングをつくらないほうがしっくりくることも多い。そもそも、われわれが海外ドラマで見るようなソファのあるリビングって、6畳や8畳ではないからね。だいたい20畳くらいはあるんだから。

藤山:広さが全然違うのに、家具だけは海の向こうと同じように配置すれば、当然バランスが崩れます。

鈴木:おそらくパーセンテージでいうと、リビングのなかに家具が占める割合は、床面積の15%以内が適正値ではないかと思う。

藤山:15%ですか?

鈴木:たとえば、ソファのサイズを畳1枚分とすると、6畳の部屋ならソファを置いた時点で15%を超えてNG。実際、そういう家は圧迫感が強い。8畳なら15%以内に収まるけど、リビングにはソファ以外にもテレビ台やチェストなどが置かれるから、トータルではやはり15%をオーバーする。というわけで、8畳くらいのリビングなら、大きなソファは無理して置かないほうがいいというのが私の見解。

藤山:なるほど。

鈴木:そういえば、思い出した。

藤山:なんでしょう。

鈴木:この前知り合いが、住んでいた家を売りに出したというので現地に行ってみたの。横浜のランドマークタワーの近くにあるマンションで、広さは120㎡くらい。売値は9,000万くらいといっていたかな。その家のリビングは24畳くらいあった。それくらい広いリビングだと、さすがにソファを置くとサマになるなぁとあらためて実感したよ。

藤山:むしろ、ソファくらい置いていないと、逆に納まりが悪いでしょ?

鈴木:そうそう。空間がまったく締まらない。やっぱり、リビングにソファを置いたり、テレビ台を置いたりするなら、24畳とはいわないけれど、最低18畳以上はほしいかなぁ。それが無理なら、ダイニングとリビングを兼用する方向で間取りを考えるのも一つの方法。

藤山:磯野家タイプで行け、と。

(つづく)

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鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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