藤山:で、反響が常態化すると、話しをするのさえ嫌になってくる、という理屈ですね。マンションの地下駐車場などはその典型ではないですか。コンクリートで囲まれた駐車場に入った瞬間、音がワンワン反響しているのがよく分かります。
鈴木:いまどきの家は、壁にしろ天井にしろ、石膏ボードの上にビニルクロスを張って仕上げることが多いじゃない?石膏ボードも硬い材料だから、コンクリートほどではないにしろ、音が反響してキンキンする。逆に、昔の日本家屋は音の反響なんて全然問題にならなかった。床は畳、壁は障子やふすまといった紙、天井は木の板だから、音はほとんど反射しない。
藤山:全部、柔らかい材料ですね。同じ木材でも、チークのような広葉樹とスギのような針葉樹では、音の反射は異なりますか?
鈴木:広葉樹と針葉樹だったら、やはり柔らかい針葉樹のほうが音の反響は少ない。以前、スギのフローリングを張って、なおかつ部屋の形状がちょっと凸凹した複雑なかたちをした家を設計したことがあったのだけど、その家は音がいろいろな方向に反射する効果もあって、反響はほとんど気にならなかった。
藤山:部屋が複雑な形状をしていることもそうですが、あとは床にラグを敷いたり、ソファを置いたり、窓にカーテンをかけたりすると、そこでも音が吸収されて、一層落ち着いた部屋になりますね。
鈴木:そのとおり。一度、自分の部屋で試してみるといいよ。パンッと手を叩いてビ~ンとなったら、それは「フラッターエコー」が発生している証拠。音の設計としてはアウトだ。
藤山:手を叩いただけで分かります?
鈴木:分かります。パンッとやれば。
藤山:最近は自然素材を使った内装が人気ですが、漆喰を塗った部屋の反響はどうですか?
鈴木:漆喰は塗る前は液体だけど、乾いたらカチカチに硬化するから、やっぱり音はビンビン反響します。
(つづく)
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