鈴木:だけど不思議なもので、住宅の設計が得意な建築家に限って、みんな天井の低い家が好きじゃない?かのフランク・ロイド・ライトだって、背の高い米国人の別荘だというのに窓際の天井なんて2mしかないんだよ。それはもう低く低く抑え込んでいる。で、またそれがすこぶる格好いいんだ。
藤山:天井は低いほうがいいというのはよく聞く話ですね。
鈴木:けれど、その感覚って一般の人にはまず理解されない。もう10年くらい前にリフォームしたお宅だけど、そこは偶然にもライトの信奉者が設計した家だったの。そういう家を自分らみたいな建築屋が見ると、「さすが、ライトの意図をくんでいるだけあって素敵な家だなぁ」って至る所に感動する。でも、実際住んでいる人に言わせると、われわれが手放しで感動した部分がことごとく気に食わないというわけ(笑)。
藤山:天井の低さとか?
鈴木: そう。たしかに、窓際や廊下の天井は2mくらいに抑えられていた。だけど、そこからリビングに入るとパーッと天井が高くなったように見えて非常に気持ちがいい。それをわれわれは素敵だなと思うわけ。でもそこの奥さんは、「うちはね! なんでか知らないけどね!低いのよ! 天井が!」って本当に力を込めて嫌そうに言うの(笑)。そこまで言われると、「素敵ですね」なんてとても言えない。
(つづく)
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