ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第13回】ある日、子供がペットを飼いたいと言い出したら(1)

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藤山:きょうはペットの話をしましょう。すでにペットを飼われている方ならご存じのことでも、これから飼うかもしれないという方にとっては、知らない話もいろいろあるかと思います。ペットを飼うとき、家にはどのような準備が必要か。まずは、犬からいきましょうか。

鈴木:犬の場合は種類にもよるけど、とりあえず脚をふく場所を考えるよね。どこで犬の脚をふくか。

藤山:散歩から帰ってきたら、まず脚をふかなければならない。

鈴木:そう。普通は玄関になるけど、玄関だと人間が腰を曲げて犬の脚を持ち上げる姿勢になるのでちょっとツライ。あと、雨の日は犬がぶるぶるっとカラダを振ると玄関じゅうに水が飛び散るという問題もある。

藤山:ええ。

鈴木:だから私の場合は、室内犬を飼うと決まっている家なら、計画段階から犬の脚洗い場か、入口前に深い軒先をつくるように提案している。

藤山:いまは大型犬でも、ほとんど家に上げていますよね。

鈴木:庭で飼っているうちは、おそらくこれといった問題はなかったと思う。でも、家の中に上げたとたん、犬と家の間にいろいろな問題が出てきた。「脚ふき問題」もそうだけど、もっと深刻なのが「脚すべり問題」。

藤山:ああ、脚がすべってうまく歩けないという……。

鈴木:犬というのは、フローリングの上だと脚がすべって踏ん張りがきかなくなる。「ほら、ポチおいで」なんて呼ぶと、カチャカチャカチャって音を立てながら一生懸命近寄ってくるけど、犬にしてみれば、これは相当しんどい状況。

藤山:人間でいえば、スケートリンクの上を普通の靴で走らされているようなものですかね?

鈴木:そこそこグリップのいいスニーカーで走っている感覚に近いんじゃないかなぁ。「でも、やっぱりすべるぞ」みたいな。

藤山:それは足腰に相当な負担がきますね。私が犬だったら一歩も動きたくない(笑)。

鈴木:室内犬が関節病を患って病院通いになるのは、ほとんどフローリングが原因だからね。

藤山:だったら、フローリングをやめればいいと思うのですが……。

鈴木:でもやっぱり、いまの新築はフローリングなんだよ。カーペットならまったく問題は起きないのだけどね。もっとも、犬を飼っている家はフローリングが足腰に悪いのを分かっているから、必ず相談をされる。「犬のためには、どういうフローリングがいいですか?」って。

藤山:何と答えるんです?

鈴木:おすすめは、無垢材のスギかヒノキ。しかも、ウレタン(UV)塗装をしていないオイル仕上げのもの。柔らかい樹種だから、脚の食い込みがいいし、表面も温かい。だけど反面、めちゃくちゃ傷がつきやすい。せっかくの新しい家が、竣工と同時に築10年くらいの家に様変わりする。

藤山:たしかに、傷はつきやすいですよね。

鈴木:お客さんにそのあたりの事情を説明すると、「さすがにそれはちょっと……」と敬遠される方がほとんど。だからスギが選ばれるのかというと、そうでもない。うちの事務所にはスギのフローリングが敷いてあって、もう何年も前に傷もつき終わっているから、「傷がつくといっても、この程度ですよ」と見せてあげると、「ああ、この程度ですか」と、いったんは納得される。でも、そのあとできれいなフローリングのサンプル集を見せたら、「やっぱりスギじゃないほうがステキね」と、ころっと寝返っちゃう(笑)。

藤山:もはや、犬のことはそっちのけだ。

(つづく)

ひとの家見て、わが家を直せ。

鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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