リフォーム会社選び完全マニュアル

【第1回】「業者選び」が正否を決める

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「リフォーム商品」の特殊性

図表1 リフォームに関する相談件数の推移

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターに寄せられたリフォームに関する電話相談件数の推移。2008年以降は増加の一途をたどっています出典:「住宅相談と紛争処理の状況 CHORD REPORT 2017」(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)

あるリフォーム経験者の方が、こんなことを言っていました。「新車を買うよりも、同じ金額でリフォームをした方が生活を変える効果は大きいんじゃないかな」

リフォームが持っている力を、うまく言い表した言葉ではないでしょうか。

リフォームには小規模な補修工事から、キッチンや洗面化粧台などの住宅設備を新品に交換する工事、あるいは間取りの変更や増築のような大規模な工事までさまざまなものがあります。

その一方で、インターネットを検索してみると無数のリフォーム業者が存在していることがわかります。どうすれば希望通りのリフォームを実現してくれる業者と出会えるのか、途方に暮れてしまいます。また、リフォームには工事が終わって引き渡しを受けたときに、自分が購入した商品を初めて目にすることになるという特殊な一面があります。こうした商品の性質が原因で、施主とリフォーム業者の間でトラブルが起こることがままあるのです(図表1参照)

それだけに、満足のいくリフォームを実現するためには、業者の選定がとても重要なのです。そこで今回は、リフォーム業界の内情に詳しい公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの平井裕一朗さんに、「いいリフォーム業者を選ぶポイント」を伺うことにしました。

やりたいことに合った業者ですか?

リフォームを始めるとき、最初にやるべきことは、何をやりたいかをはっきりさせることだと平井さんは言います。「リフォーム業者には水周りなどの住宅設備が専門の業者、建材販売が専門の業者、屋根や外壁の塗装が専門の業者、あるいは間取り変更などの大規模な工事にも対応できる業者など、さまざまな業者が存在します。まずは、ご自分がやりたいことを明確にして、それを得意とする業者を選ぶことが第一のステップになります」

業者が何を得意にしているかは、ホームページを見ればほぼ見当がつきます。ホームページの「会社概要」や「会社の沿革」といったページに業者の「出身」が書かれているからです。たとえば、もともと住宅設備が専門の業者であれば、キッチンや洗面化粧台を新品に交換するといった小規模なリフォームが得意だと考えられます。一方、もとが工務店であれば、増築や間取り変更などの大規模工事が得意かもしれません。

やりたいことと業者のマッチングを誤ると、とんでもないことが起こる危険性があると平井さんは指摘します。「仕事ほしさから不得意な分野でも請け負ってしまう業者がいるので、要注意です。たとえば、大規模工事の経験がない業者に間取りの変更を依頼した結果、住宅の強度を保つために絶対に切ってはいけない柱を切られてしまった、などというケースも実際にありました」

最近はガス会社、電力会社、家電量販店やホームセンターなどもリフォームを請け負っているケースが見受けられますが、「餅は餅屋」が基本だと考えれば間違いないと平井さんは言います。

「もしも、知人に紹介された業者で断りにくい場合などは、ストレートに得意分野を質問してみるといいでしょう。地元の業者だったら、近所で口コミを集めてみるのもいいと思います」質問してみて納得のいく回答が得られなかった場合は、きっぱりと断ることも大切です。さもないと、後々トラブルになる可能性があります。

施工の数は意味がない?

図表2 リフォーム事業者の選定時の重視点(複数回答)

日経BPコンサルティングの調査モニターを対象としたインターネット調査(2010年10月実施・この結果はリフォーム経験者に聞いたもの)出典:国土交通省「リフォーム工事における消費者・事業者のニーズ」

リフォーム業者のホームページを開くと、施工例として過去に手掛けた物件の写真が掲載されているケースが多くあります。しかし、写真だけでその業者の“腕”を判断するのは素人には難しいことです。

また、リフォームの途中で業者が倒産してしまうケースもあり得るので、業者の経営状態のチェックもしたいところです。実際、多くの施主が、価格の透明性や信頼性、丁寧さ、技術力を検討材料として挙げていますが(図表2参照)、ホームページの情報だけでこれらを判断するのは不可能です。

「よく、年間施工実績○件などと、手がけたリフォームの件数を誇っている業者がありますが、新築と違い、リフォームは工事の規模の差が大きいので、施工件数にはそれほど意味がありません」(平井さん)つまり、洗面化粧台を交換するのも1件なら、1部屋増築するのも1件というわけです。では、多くの施主が気にしている業者の技術や信頼性を判断するにはどうすればいいのでしょうか。

「まず、地場や地域で長年仕事をしていることは、信頼のひとつの目安になると思います。あるいはリフォームコンクールの入賞歴なども、業者の技術の高さや信頼性を判断する指標になるのではないでしょうか」 実際、依頼先をたずねた調査では、「地元密着の工務店」が第1位になっています(図表3参照)。

図表3 リフォームの依頼先と検討時の問い合わせ先

日経BPコンサルティングの調査モニターを対象としたインターネット調査(2010年10月実施・この結果はリフォーム経験者に聞いたもの)出典:国土交通省「リフォーム工事における消費者・事業者のニーズ」

リフォームコンクールに関しては、住宅リフォーム・紛争処理支援センター主催のリフォームコンクールは今年で35回目という長い歴史を持っています。平井さんによれば、毎年の応募件数は500から700件もあり、そのうち約30件が入賞しますが、上位5件には国土交通大臣賞などの特別賞が授与されるそうです。

「特別賞の対象となった作品は、審査員が必ず現地に行って現場を確認します。さすがに、違法建築に国土交通大臣賞を出すわけにはいきませんから、きわめて厳格な審査を行っています」他にも、大手建材メーカーなどが主催するコンクールがあるので、それらの結果も参考になるでしょう。ただし、なかには主催者があいまいなコンクールもあるそうなので、主催者が信頼できる団体・企業であることを確認する必要があるでしょう。

さて、技術と同時に確認しておきたいのが業者の経営状態ですが、実は、これを見抜く裏技があると平井さんは言います。「工事費用の支払い条件が、ひとつの目安になると思います。500万円を超えるような大規模工事は別として、10万円、20万円程度の小規模なリフォームを依頼したのに、着工前に全額を払ってほしいなどと言ってきたら、その業者の資金繰りは相当悪い可能性があると見ていいでしょう」全額を支払ったとたんに逃げられてしまったというケースも実際にあるそうなので、支払い条件に不審な点がある業者は避けた方がよさそうです。

お話をうかがった方

平井裕一朗さん

公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター リフォーム情報部長 兼 消費者支援部担当部長。一級建築士。

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