藤山:ベッドといえば、主寝室にベッドを置く場合、お客さんたちの傾向として何サイズのベッドを置かれることが多いですか?
鈴木:シングルサイズを2つ並べるか、セミダブルを2つ並べるか……。いや、シングルとセミダブルを1つずつ並べる家もけっこう多いかな。子供が小さいうちはお母さんと一緒に寝たがるから、1つはセミダブルくらいがちょうどいいんだね。ごく稀に、キングサイズを買われている家があるけど、そういうのはたいてい若い新婚さんで、「つい、いきおいで買っちゃいました」という人。
藤山:鈴木さんの設計では、寝室にクローゼットを設けることが多いですか?
鈴木:クローゼットは寝室の隣に「部屋として」設けることが圧倒的に多い。寝室にクローゼットがある家は少ないかな。ときどき、母の代から使っている三面鏡を置きたいという方がいらして、その場合はもちろん置けるスペースを設けるけど、基本的にはベッドが置いてあるだけのシンプルな寝室にしている。
藤山:まさに、寝るだけですね。
鈴木:寝るとき以外はリビングで過ごしているという家庭がほとんどだから。
藤山:逆に、打ち合わせの初期から寝室の設計にこだわりを持っているお客さんもいらっしゃいます?
鈴木:それはほとんどないけど、あるお客さんから、軽井沢の「星のや」に泊まったら客室の感じがものすごく良かったから、うちも同じような寝室にしてほしいと言われたことはある。
藤山:あっ、それ、ほかの設計者からも聞いたことがあります。「星のや」みたいにしてほしいって話。具体的に何が良いと言われるんですか?
鈴木:建築的にどうこうではなく、「手の届きそうな非日常性」みたいなものが大きいんじゃないかな。ベッドの上に洗濯物が積み上がっているとか、飼っている猫がその上で吐いているとか(笑)。そういう日常から開放されるのが、旅先の宿のもつ大きなアドバンテージじゃない?そういうバイアスがかかって、客室に実際以上に良い印象をもってしまっている気がする。「○○ホテルみたいに」って要望される人は、大なり小なりそういう部分があるよ。
(つづく)
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