

藤山:鈴木さんは、いまベッドで寝られています?
鈴木:ベッドですね。
藤山:畳の上より、ベッドのほうが好きですか?
鈴木:いま住んでいるマンションに畳の部屋がないから、消去法でベッドにしているだけ。畳の部屋があればふとんで寝ていたかもしれない。特にこだわりはないかな。
藤山:鈴木さんのお客さんはいかがですか。新築やリフォームの相談に来られる方は、新築前、みなさんベッドで寝られています?
鈴木:いやいや、全然そんなことはないよ。むしろ、ベッドじゃない家のほうが多いのではないかな。マンション住まいの人は、和室にふとんを敷いて寝ている人のほうが多いような気がする。
藤山:それは意外。ふとんは毎日押入れにしまわれているのかな?
鈴木:基本的には、しまっているみたいだよ。なぜかというと、マンションの和室ってたいていリビングの隣に配置されているから、昼間はふとんをしまっておかないと、リビングがリビングとして成立しなくなるんだよ。
藤山:たしかに。万年床が敷いてあるリビングって、独身男性の一人暮らしみたいですからね。そもそもリビングの隣の和室って、寝室としてつくられているわけではないでしょ?
鈴木:そうそう。それなのになぜ、和室にふとんを敷いてしまうかというと、そこが暖かいからなんだよ。マンションの場合、寝室に想定されている個室は北側にあることが多いけど、北側の部屋は冬寒いから長時間居たくない。しかも、結露が発生しやすい、狭くて圧迫感があるなど、部屋としての弱点も多い。だったら、見た目は悪いけど南側の暖かい和室で寝たほうがいいじゃない、となるわけ。で、北側の個室は収納部屋として、いろいろなモノが無造作に突っ込まれていく。
藤山:いま、マンションでふとんを敷いて寝ている人たちも、いざ戸建住宅を新築する際は、みなさんベッド派に宗旨替えしますよね?
鈴木:「やっぱり、ふとんのままがいい」という人と、「今度はベッドかな」という人に分かれるかな。ふとん2にベッド8くらいの割合。
藤山:へぇー、これも意外。私はてっきり、10対0で全員ベッドを選ぶんだと思っていました。
鈴木:どうして?
藤山:ちょっと前まで建築雑誌の編集をしていた関係で、設計者から住宅の図面を提供していただくことがよくあったのですが、図面を見ると、どの住宅も主寝室にはベッドの形が点線で描いてあるんです。だから、「新築=ベッド」なんだと勝手に思い込んでいました。寝室に畳が敷いてある図面なんて見た記憶がないです。
鈴木:言われてみれば……。寝室に畳が敷いてある図面は見たことないかも。
藤山:「和室」って描いてあるところが、実は寝室だったりするんですかね。
鈴木:それはあるかもしれない。ちなみに、「ふとんがいい」と言われるのは、ご主人のほうが多いね。すると奥さんがすかさず、「今度はベッドでしょ!」って突っ込みを入れる。
藤山:どうして、奥さんはベッドなんです?
鈴木:ほら、ふとんの上げ下げとか、外に干したりしまったりする作業って毎日大変じゃない。そういうのは奥さんの仕事になっている家が多いから。今度は管理がラクなベッドにしたいわけよ。
藤山:ちなみに、私はかれこれ20年以上ふとんを敷いて寝ています。
鈴木:そうなの。ベッドで寝たいとは思わない?
藤山:全然思わないです。というより、古い木造のアパートですからベッドを置いたら全然サマにならないんですよね。
鈴木:ベッドかふとんかは、ほとんど習慣の問題だよ。慣れればたいていどちらでもよくなる。いずれも一長一短あるから、介護が必要になるなどの事情がなければ、好みで選んでいいのだと思うよ。