ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第30回】局地的、子供部屋トレンド情報(2)

空間
リビング・寝室・居室
関心
悩みリフォーム子育てレビュー

鈴木:駐車場は敷地が広ければどうにでもなるけど、都市部の住宅密集地で3台分を確保するというのはなかなか大変。それでも子供たちが帰ってくる場所をつくっておかないと……という危機感がお母さんには強くあったんだね。

藤山:よっぽど寂しかったんでしょうね。

鈴木:実際、建て替える前の家は1台分しか止める場所がなかったから、子供たちが遊びに来ても、すぐに帰ってしまっていたんだって。

藤山:間取り自体はどうされたんですか?

鈴木:崖下の敷地で日当たりがあまりよくなかったから、リビングを2階に上げて、お母さんの寝室も2階に設けた。基本的には2階だけで完結する間取り。

藤山:一人ですからね。

鈴木:でも、1階には和室、予備室、土間などいろいろあって、すぐにでも二世帯住宅に変更できる間取りにしてある。

藤山:いつでも帰って来れるように。

鈴木:さらに、お母さんは息子さんが帰ってくるための作戦をもう一つ考えていた。建て替え工事の期間中、家で飼っていた猫を息子さんに預けたの。

藤山:どういうことですか?

鈴木:ほら、建て替え工事の間はアパートに仮住まいをしなければならないじゃない?でも、引越し先のアパートはペット禁止だったわけ。だから息子さんにいったん猫を預かってもらって、家が完成したらまた戻してもらうことにしたの。そうすれば、預かっている間に猫に情が移るだろう。情が移れば、猫と一緒に息子も帰ってくるのではないか、という魂胆。

藤山:ほう、考えましたね。で、結果は?

鈴木:いまのところ失敗している(笑)。ただ、1階の空いている部屋に息子さんの荷物をたくさん置けるようになったから、何か用事があると荷物を取りにクルマに乗ってちょくちょく帰ってくるらしい。でも、猫が帰ってこないんだって。

藤山:えっ?

鈴木:息子さんが返してくれないんだって。すっかりなついちゃって。

藤山:お母さん、裏目に出ましたね。

鈴木:こっちは猫用の小さい扉やトイレまで設計して準備万端だったんだけど……。とはいえ、娘さんの家族も頻繁に遊びにくるらしいし、お母さんはそんなに寂しそうな雰囲気ではないよ。やはり、駐車場が効いているみたい。

藤山:そういう意味では、ねらいは当たったわけですね。半分くらい目標達成。ところで話は変わりますが、子供部屋というと、最近のお客さんの要望の全体的な傾向とか、トレンドみたいなものって何かあります?

鈴木:最近の傾向ね……。少し前までは、子供が2人いる家庭なら2部屋しっかりつくるというのが当たり前だったよね。でも、近頃はその要求レベルがちょっとずつ下がってきたなという感じ。

藤山:2部屋つくらなくてもよくなった?

鈴木:というか、勉強机があって、ベッドがあって、本棚があって……みたいな、いわゆる子供部屋の基本仕様ってあるじゃない?

藤山:のび太の部屋みたいな。

鈴木:そうそう。そういう部屋ではなくて、とりあえず寝るスペースさえあればいいというレベルに落ち着き始めている。

藤山:子供部屋が寝るだけのスペースになったら、勉強する場所がなくなりませんか。

鈴木:最近はリビングで勉強するのが流行っているの。

藤山:あー、はいはい。そんな話をよく聞きます。

ひとの家見て、わが家を直せ

鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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