「季節」を呼び込む演出テク

【第3回】荒井詩万流インテリア哲学を大公開!

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インテリア季節事例レビュー

インテリアコーディネーターの荒井詩万さんにうかがう、リビングに季節を呼び込む演出テクニック。第3回は、荒井さんがコーディネーターとして活動するうえで大切にしている視点や考え方をご紹介します。荒井さんのお話のなかには、「自分好みの部屋」づくりのヒントがたくさんありました。

自分好みの部屋”づくりはライフスタイルの確認から

画像提供=荒井詩万

インテリアコーディネーターとして、さまざまなお住まいを訪問されている荒井さん。お客さまは30~40代のファミリー層が中心ですが、最近は、30~40代の独身女性からの依頼も増えているそうです。

「パッとしない部屋を、コンセプトのある過ごしやすくおしゃれな部屋に変えたい。そのためにプロにお願いしたいという方が増えてきていると感じています」では、荒井さんはどのようにして、そうした方のご希望を叶えているのでしょうか。「インテリアのコーディネートというと、『どんな色にしますか?』『どんなインテリアにしたいですか?』と具体的なことから決めていく印象があると思います。しかし私は、そうした具体的なことを決める前に『そこでどう過ごしたいですか?』『どんな暮らしをしたいですか?』など、ライフスタイルを先にうかがいます。この問いは、『どう生きたいか』にもつながることかもしれませんね。そこを根っこにして、具体的なイメージを広げていきます」

画像提供=荒井詩万

そのため、お客さまには、「休日はどういうふうに過ごしてらっしゃいますか?」「最近どちらに旅行されましたか?」「どんな雑誌を読まれていますか?」など、一見、インテリアには関係ないような質問をしていくそうです。

「そうして聞いていくと、例えばご家族でも何か1つ共通点が見えてきます。『こういうふうに過ごすのがお客さまは幸せを感じるのだな』ということがわかってきて、それをヒントにコンセプトを決めていきます」

コンセプトを立ててから、「ナチュラルな感じに」「今、はやりの男前で」など、お互いでイメージをすり合わせます。

「このとき口頭だけだと伝わりにくいので、お客さまには、雑誌の切り抜きなど好みの部屋の画像をいくつかご用意いただくようお願いしています。それらを並べてみると、やはり共通した好みが見えてきます。こういうデザインがお好きなんだな、色の好みはこうだなと掴んでいき、そうした情報を踏まえてプランニングに入ります」2回目の打ち合わせには、そのプランニングしたスケッチを携えて、お客さまにプレゼンテーション。プレゼンテーションは、ほぼ一発でOKが出るそうです。

例えば、こんなコンセプト。「ドレッシングラウンジ」

画像提供=荒井詩万

実際にどんな「コンセプト」を立てているのか、最近の事例をうかがいました。家主は、賃貸住宅にお住まいの、一人暮らしの30代の働く女性。

「今までは、“とりあえず”という感じで、家具を配置されていました。お話をうかがっていくと、とてもおしゃれで、ファッションが大好きとのこと。有名ブランドの靴やバッグもお持ちで、そういうものを見るのもお好き。お仕事から自宅に戻ったときに、テンションが上がる部屋にしたい、とのご希望でした」

そこで荒井さんは、リビングダイニングの一角にドレッシングスペースをつくり、最近買った新作のバックやときめいた靴など、お気に入りを並べることを提案。コンセプトが「ドレッシングラウンジ」です。そこから連動して「キラキラ感がある感じ」「エレガントな雰囲気で」と、イメージをすり合わせていきました。

「バッグなどは本来、別室のクローゼットなどに収納するものですが、そうではなく、ショップのようにディスプレイすることで、大好きなブランドがいつも眺められ、心がときめく部屋になりました。リビングダイニングが、お客さまの大好きなものが詰まった大きなクローゼットのようになり、とても気に入ってくださっています」

プロに頼むことで、「とりあえず」「なんとなく」「イマイチ」な部屋が、あか抜けた部屋になるのは間違いなさそうです。

「自分好みの部屋にしたい」と思っていても、「どうもイマイチ」なのは、「自分がどんな暮らしをしたいか」ということを、しっかり自覚していないからかもしれません。そういう場合、自分の仕事や趣味、心地いいと感じるもの、楽しいのはどんなときかなど、自分の「好き」や生活を、見つめ直してみてはどうでしょうか。もちろん、プロの力を借りれば、自分では気づかなかった自分の好みや暮らしの志向、生き方などが見えてきそうです。カウンセリングのように丁寧な荒井さんのヒアリングは、部屋だけでなく人生も変えてくれるかもしれません。

お話を伺った方

荒井詩万さん

インテリアコーディネーター、CHIC INTERIOR PLANNING主宰。住宅やマンションのコーディネート・リノベーションをはじめ、イベント企画展示、空間プロデュースなどを多数手がける。TV・ラジオ出演、雑誌の企画監修、セミナー講師なども多数。著書『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』(サンクチュアリ出版) 

取材・撮影協力=町田ひろ子アカデミー

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)