「季節」を呼び込む演出テク

【第2回】「あか抜け部屋」づくりのテクニック

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インテリア事例レビュー

インテリアコーディネーターの荒井詩万さんにうかがう「リビングに季節を呼び込む演出」テクニック。第1回では、梅雨のうっとうしさを吹き飛ばすような、涼しげな小物や部屋づくりのアイデアを教えていただきました。第2回では、梅雨どきに限らず、季節をうまく取り入れた部屋のつくり方や部屋の印象の変え方を紹介します。

「クッション」と「絵」がリビング演出のお助けアイテム

左が夏、右が冬のクッションカバー。画像提供=荒井詩万

荒井さんは、梅雨どきにかかわらず、季節感をうまく出すアイテムとして、「絵」と「クッション」の活用を勧めます。「クッションと絵は手軽に中身を入れ替えられる優れもの。クッションカバーは、夏は麻(リネン)、冬はウールなど、素材を変えてみましょう。直接肌に触れるものなので、肌触りも大切に」荒井さんご自身も、春夏と秋冬の年に2回、クッションカバーを変えているそう。

画像提供=荒井詩万

そして置き方にも気をつけると、あか抜け感が出るといいます。ポイントは「3個置き」か「5個置き」。左右にそれぞれ2個・1個、あるいは3個・2個で置くと、動きが出てリラックスした雰囲気になるそうです。

絵についても「額だけ用意しておけば、中身を季節ごとに変えられます」といいます。ただ、そのためには、基本のつくりをシンプルにしておくことが大切だそう。「基本のつくり」とは、たとえば、壁をシンプルにしておくこと。スペースがあるからと、壁にはつい、カレンダーや子どもの絵、地図などを、「とりあえず」貼ってしまいがちですが、荒井さんは「壁には余白をつくっておきましょう。一番バランスよく見える壁の余白は8割です」といいます。

あか抜けた部屋にするには「引き算からスタート」

画像提供=荒井詩万

壁の余白を8割にするということは、壁に飾る部分は残りの2割ということになります。その2割に何を飾ればいいのか......?現在、いろいろなものを飾っている方は、何を飾るのがいいのか、悩んでしまいそうですね。

「その場合は、まず、壁にあるものすべて取り外してみましょう。そして、その中から“これは”というものをひとつだけ決めます」荒井さんは、このように「引き算からスタートすること」が、あか抜けた部屋作りのポイントのひとつだといいます。

「引き算は、壁のものだけでなく、棚に置いてあるものでも同じです。一度、棚に置いてあるすべてのものを取り出して、棚を拭いてきれいにしましょう。取り出したものは、素材や色でグループ分けをします。そして季節やそのときの気分で、どのグループを見せるかを決めて、それらを1カ所にまとめて置きます。たとえば、夏ならガラス素材。秋なら木の素材のものを集合させる。そこに赤いアクセントで暖かみを出のもいいですね」

入り口から対角を「見せ場」にする!

画像提供=荒井詩万

では、部屋全体をレイアウトするときには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。荒井さんによると、「視点をどこに置くか」がポイントだそうです。「部屋に入ったときに、パッと目につくものがその部屋の印象を決めるからです」と、荒井さん。

部屋に入って最初に目に入るのは、入り口と対角線の場所。第1回でも、「観葉植物を置く場合は入り口の対角のところに」とお伝えしたように、入り口の対角にあるもので、その部屋の第一印象が決まります。人は、遠くのものに目がいくからです。つまり、入り口から一番遠い場所である対角のところに、「ステキだな」と思うものを置けば、その部屋の印象はステキになるということです。

「けれども多くの人は、リビングであればTV、子ども部屋であればプラスチックのラックなどを置いています。これはとてももったいないこと。ここにお気に入りの絵や写真、観葉植物などを飾れば、部屋に入ったとたんに、そこに視線が行くので、気分もよくなるでしょう。一方、入り口の両脇というのは実は死角。ですから、そこに“あまり見せたくないもの”を移動させるといいでしょう」

荒井さんは「見せ場(フォーカルポイント)を1カ所つくる」ことも勧めます。前回の記事で、「小物は“三角形置き”が基本」とお伝えしたのと同じ原理です。

リビングの場合を考えてみましょう。壁には子どもの絵や家族写真にカレンダー、棚の上にはお土産でもらった小物、カウンターにはチラシや本や新聞が山積み......という状態は、ごちゃごちゃしていて見栄えがよくないのはもちろん、目線が泳いでしまいます。

「いろんなものがいろんなところにあると、目線が落ち着きません。多くの方が、掃除はしっかりしていたり、ステキな小物を置いていたりしていても、“なんかイマイチ”、“なんとなくスッキリしない”と感じるのは、これが原因です。しかし見せ場が1カ所だけなら、そこに目を集められます」

では、その見せ場はどこにつくったらいいのでしょうか。荒井さんによると、やはり、一番目につく「入り口から対角の場所」に集めるのがベストだそう。

たとえば、入り口から対角の場所にソファを置いて、その上に季節の絵を飾り、ほかのものは壁にはらないようにすれば、フォーカルポイントとなり、あか抜けた印象の部屋ができあがります。

お話を伺った方

荒井詩万さん


インテリアコーディネーター、CHIC INTERIOR PLANNING主宰。住宅やマンションのコーディネート・リノベーションをはじめ、イベント企画展示、空間プロデュースなどを多数手がける。TV・ラジオ出演、雑誌の企画監修、セミナー講師なども多数。著書『今あるもので「あか抜けた」部屋になる。』(サンクチュアリ出版) 

取材・撮影協力=町田ひろ子アカデミー

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)