鈴木:そういうこと。さっきのセミナーでも、「うちの会社でリフォームした事例です」といって受講者が写真を見せてくれるわけ。そのとき私が何を見ているかというと、キッチンを撮影するとき室内の照明をつけているかいないか。昼間でも照明をつけないと写真が撮れないようなキッチンは、その時点で大減点。では逆に、そのほかはものすごくよくできているけれど、唯一明るさだけが足りないキッチンがあるかといえば、それは皆無。最初から明るくつくられているキッチンは、機能性や動線など、ほかの要素にもうまく配慮されていることが多い。というわけで、意図的にやっている設計は別として、暗いキッチンはたいてい何もかもダメ(笑)。
藤山:自然光がコントロールできる設計者は、ある程度腕のある設計者と考えていいでしょうからね。鈴木さんの場合、光はどのように取り入れることが多いですか?
鈴木:窓を設けるときは、横長の窓を低い位置につけるのではなく、天井面まで窓を延ばす。そうすると、外からの光がうまく回って光が広がる。私だけでなく、分かっている人はたいていそういう窓の取り方をしているよ。どうしても横長にしたい場合は、それはそれでやり方があるけど……。
藤山:そういう光の要望って、お客さんからは絶対に出ないでしょ?
鈴木:キッチンに関する要望はほとんどが収納。お客さん自身も、まさか自分がキッチンに立ちたくない理由が、「薄暗いこと」にあるとは想像すらしていない。
藤山:「もうキッチンには立ちたくない」と叫んでいたお客さん、リフォーム後はどうなっています?
鈴木:面白いのは、用もないのにキッチンに居たがる人が増えるってことだね。「最近は窓辺に雑誌を持って行って読んでます」ってメールがきたり。「えっ、あの人が?」って感じ(笑)。
藤山:光の効果は絶大だ。
(つづく)
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