鈴木:セミナー受講者にもそういうタイプの工務店が多くて、自分からはお客さんの要望に気づかない。だから、「どうしたいですか?」って逆にお客さんに聞いちゃう。
藤山:いわゆる「お客様のご要望に何でもお応えします」ですね。「自分からは提案しません」の言い換え(笑)。
鈴木:お客さんがしっかりした方ならそれでもいいわけ。今度はゴミ置き場のスペースをきちんととりたいとか、調理器具の収納場所を変えたいとか、いまのキッチンのダメなところが分析できている人は、きちんと意見が出る。でも、特に意見が出ない――出ないというより「出せない」お客さんは、工務店側もどうしてよいか分からないから、新しいキッチンをポン付けしてさっさと終わろうとする。
藤山:それでは根本的な部分は何も変わらない。
鈴木:ほぼ5年以内に元の状態に戻る。なかには、造付けの棚を提案したり、散らかっているキッチンがリビングから見えないようなプラン変更を提案したり、それなりに工夫している会社もあるけど……。
藤山:きっと、それだけではまだ不十分なんですよね。
鈴木:まだ足りないね。キッチンのポン付けリフォームが20点としたら、せいぜい50点くらい。
藤山:残りの50点は何でしょうか?
鈴木:「いかにお客さんの気持ちを盛り上げてあげられるか」。それができて初めて100点のリフォームになる。収納量が満たされるとか、使い勝手がよくなるとか、それらはあくまで低下した機能の回復であって、生活の質的向上にはほど遠い。飛距離が全然出ていない。
藤山:鈴木さんが普段「設計には気分アップの要素が重要」と言われている部分ですね。
鈴木:だって、奥様から「うちのキッチンにはもう立ちたくないんです」と言われるんだよ。
藤山:お客さんがですか?
鈴木:そう。キッチンに立ちたくないって。友達同士の普段の会話でも、キッチンに立ちたくないよねぇという話はよく出るらしい。
藤山:原因は何でしょう?
鈴木:暗いから。
藤山:ほう。窓がないとか?
鈴木:そうそう。機能的な不満が渦巻いているところに、追い打ちをかけるように「光が入らなくて薄暗い」という環境が重なると、「うわー、もうこんなキッチン立ちたくないぞー」って発狂する(笑)。
(つづく)
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