鈴木:シンクの中というか、シンクとワークトップの間に幅30cm弱、深さ3cmくらいの段差をつくって、そこに洗い終わった野菜などを置けるようにした。段差には勾配がついているから、野菜から落ちた水は自然とシンクのほうに流れていく。
藤山:なるほど。それはいいかも。
鈴木:あれはまさに、何十年もキッチンで作業している人が望んだ、心からのアイデアという気がしたね。
藤山:シンクの上に3分の1くらいかぶせる網みたいな板とは違うんですよね。
鈴木:それは狭いキッチンを有効に使うための苦肉の策じゃない?決して使い勝手がいいとはいえないと思うよ。こちらはあくまで、調理作業上の効率を考えた水切りスペースだから。継ぎ目のないオールステンレスで。
藤山:シンクはステンレスにされることが多いですか。
鈴木:ほとんどステンレスかな。そういえばステンレスで思い出したけど、その昔、熱湯をかけるとシンクが「ボコッ」ていうから、「ボコッ」ていわないステンレスのシンクにしてほしいと頼まれたことがあった(笑)。
藤山:カップ焼きそばのお湯を捨てるときに鳴る、あれでしょ?どうすれば鳴らなくなるのですか?
鈴木:厚みのあるステンレスを使うしかないと思う。
藤山:何㎜以上だとボコッていわなくなります?
鈴木:1㎜以上かな。ただ、1㎜以上のステンレスは搬入が大変だって工務店の人が嘆いていた。
藤山:近頃は、調理道具を壁にぶら下げる収納が流行っているじゃないですか?フライパンとか。
鈴木:ああ、あるね。
藤山:鈴木さんのお客さんも、ああいう収納法を好まれます?
鈴木:どちらかというと、ぶら下げる収納は少数派かな。全部しまいたいという人のほうが多い。常に出してあるほうが使い勝手はいいのだろうけど。
藤山:見せる収納って、管理が大変ですからね。
鈴木:いま、そういわれて歴代のお客さんを振り返ってみたんだけど……壁にフライパンをぶらさげたり、調味料をきれいに並べたりする人には、なぜか小柄な美人が多かったような気がする。
藤山:小柄な美人って(笑)。どういう因果関係ですか?
鈴木:もちろん、関係はないけど……。いや、共通点としては道具にこだわりがある人かな。1枚の鉄板をハンマーで叩いてつくった手づくりのフライパンとか。そういう薀蓄のある道具をたくさん持っている人は、壁に道具をひっかけたくなるのかもしれない。