ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第56回】良いキッチン・悪いキッチン判別法(4)

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鈴木:だけど、アイランド側にシンク、壁側にコンロを配置すると、1つ困ることが出てくる。

藤山:何ですか?

鈴木:シンクとコンロの間の床に水がポタポタ垂れて汚れるの。まな板で切った食材をコンロの上のフライパンに入れたりするとき、床に水が垂れるでしょ。それが何度も繰り返されると、最終的には床がビシャビシャになる。

藤山:たしかに。でもそれって、床にキッチンマットを敷いておけば済む話では?

鈴木:そう思うじゃない。そう思って私も同じように提案するのだけど、世の中には案外、「キッチンマットを敷くのがイヤ」という人が多いの。

藤山:は?なんでマットを敷くのがイヤなんですか?

鈴木:洗濯の手間が増えるから。あと、せっかく新築でつくったきれいなキッチンなのに、なんで以前住んでいた古くさいマンションみたいに、またマットを敷かなきゃならないのっ?って、そういう怒りみたいものも含まれている。

藤山:怒り(笑)。

鈴木:マンションの床が古くさくてイヤだから、それを隠すためにいやいや敷いているという人も多いみたい。

藤山:考えてみたら、シンクとコンロが横並びのレイアウトだって、手前の床は汚れますね。キッチンのあるところ、常にキッチンマットが必要でしょ?

鈴木:それはまあそうだけど、そもそも、どういう家に住んでいようがキッチンマットというものに対する好悪が人によってかなり違うわけ。

・床を汚したくないからマットを敷くという人

・マットを敷くと格好悪いから一切敷きたくないという人

・その中間で、キッチンを使うときだけマットを敷くという人

3パターンくらいに分かれる。

藤山:最後の「キッチンを使うときだけ敷く人」って、普段、どういう使い方をされているのですか?

鈴木:使わないときは丸めてしまっておく。

藤山:へえー。そりゃまた律儀な。

鈴木:いつ他人に見られてもいいようにって。「マットが敷いてあるキッチンなんて、人様に見せられる姿ではありません。キリッ」って感じ。

藤山:キッチンマットがそんな扱いを受けているとは知りませんでした。

鈴木:打ち合わせのどこかのタイミングで、床のフローリングを決めるときがあるじゃない?

藤山:ありますね。

鈴木:そのとき、ほとんどのお客さんから聞かれるわけ。「キッチンや洗面台の前のフローリングは汚れますか?」「そりゃ、汚れます」「どうすればいいですか?」「同じ木でも水に強い硬質な材種を選ぶか、あとはマットを敷くとか……」「ええー、マット~?新築なのにマット~?」

藤山:新築なのにマット(笑)。

鈴木:そういうやり取りがこれまでも何度かあった。ああ、キッチンマットって人によっては本当にイメージ悪いんだなと思ったよ。かといって、フローリングを水に強い材種に変えるとコストが跳ね上がる。というわけで、第3の道として選ばれるのがタイル。お皿を落としたら割れてしまうけど、「水廻りには水に強いタイルがいちばんね」ってタイルを選ばれる人は少なくない。

藤山:うん、それが真っ当な選択かもしれません。

(キッチンの話は次回にまだまだつづく)

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鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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