ひとの家見て、わが家を直せ。

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【第55回】良いキッチン・悪いキッチン判別法(3)

空間
キッチン
関心
悩みリフォームレビュー

鈴木:キッチンというと、どうしても女性中心の話になりがちじゃない。

藤山:なりがちですね。

鈴木:でも、最近は男性も積極的に要望を出されるようになってきている。

藤山:料理男子ですか。

鈴木:男子というより、いい大人です。

藤山:女性と違う点があります?

鈴木:旦那さんがキッチンにこだわりを持たれていると、必ずといっていいほど対面式のアイランド型キッチンを希望される。年配の方でも。

藤山:それは、ご夫婦だけの住まいで?

鈴木:子供たちが独立したあとに、夫婦だけの住まいとしてリフォームする場合とか。キッチンはかなり本格的な仕様になるよ。

藤山:キッチンというより厨房?

鈴木:そう、厨房。憧れがあるのだろうね、ビストロっぽいキッチンに。

藤山:ああ、お店の雰囲気。

鈴木:そういうこと。

藤山:蕎麦屋のガラスの内側で蕎麦打ってますみたいな、演出も兼ねたアイランドですね。

鈴木:「お店みたいにしてほしい」ってはっきり言われる。特に50代、60代の男性に多いかな。「お店」とか「カフェ」とか、そういう言葉が打ち合わせ中に何度も飛びかう。

藤山:で、「ビストロ風にしてください」とお願いされた鈴木さんはどうするんですか?

鈴木:まず、黒板をくっつける(笑)。

藤山:本日のメニュー。

鈴木:次に、お店みたいな照明計画。あと、バーみたいにグラスを吊るせるホルダーをつけるとか。

藤山:目に浮かぶようです。要は、男はみんなバーテンダーになりたいんでしょ?私もちょっとなりたいですけど(笑)。

鈴木:そりゃそうよ。すべての男性の理想は「ウイスキーがお好きでしょ」のCMだからね(笑)。あれ、誰だっけ。小雪だっけ?

藤山:いや、いまは井川遥です。

鈴木:そう、井川遥が目の前でハイボールをつくってくれるようなバーで自分も飲みたいわけ。で、そのお店に自分自身が立ってもいい。そこまでいったら、もう人生の上がりだよ。

藤山:ちなみに、お店仕様のアイランド型キッチンって、シンクもコンロも両方ともアイランド側に入れるのですか?

鈴木:たいていそのパターンを要望されるね。

藤山:同じアイランド型でも、v排気が部屋のなかに漏れにくいというメリットがあるじゃないですか。

鈴木:あるね。確かに排気の処理はそのほうがラクだし効率的。しかも、見た目はアイランド型のキッチンがキープされているから、そのレイアウトはとても人気がある。設計事務所が手がけるキッチンに多いパターンかも。私もついついそういう図面を描いてしまうもの。それに、作業している人が、普通のおじさんでも格好良く見える。アイランド側の調理台と壁側のコンロを行ったり来たりしながら格闘している姿はなんともアグレッシブ。

藤山:昔の小室哲哉みたいな感じでしょ。キーボードを10台くらい並べて、前のヤツと後のヤツを同時に弾いたりするあれ。俺が回してます的な。

鈴木:若い人には分からないだろう、それ(笑)。

(つづく)

ひとの家見て、わが家を直せ。

鈴木信弘 藤山和久さん

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

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