鈴木:分かってないなぁ(笑)。むしろ、そこに日本中の奥様方の不満が渦巻いているんじゃない。現状、場所がなくてダイニングテーブルを配膳台代わりに使わざるを得ないから、なんとかその状態を脱却したいとみんな願っているの。作業途中のものをダイニングテーブルに置いたら、食事の前に片づけなきゃならないでしょ。
藤山:たしかに。
鈴木:良いキッチンと悪いキッチンの判別法はそこだよ。配膳台の有無にかかっている。
藤山:レイアウトではなく……。
鈴木:そう。そういう意味では、じつはアイランド型のオープンキッチンを「使えるキッチン」として成立させるのは容易ではない。アイランドに配膳台に相当するスペースを確保するには、かなり長いアイランドをつくらないと納まらない。普通の住宅規模だとこの案は非現実的。だから、次なる手としてアイランド背面の壁側に配膳台スペースが取れないか探るわけだけど、そこにはたいてい、炊飯器、電子レンジ、トースターなどの機器類が陣取っているから新たなスペースが見つからない。
藤山:打つ手なし?
鈴木:アイランド型が前提だとなかなか難しいね。やはり、キッチンは壁にくっつけたほうが配膳台のスペースは取りやすい。でもそうすると、今度は別の問題が再燃する。「私は壁に向かって皿を洗うのがイヤなんです」。
藤山:設計の打ち合わせのなかでも、キッチンだけはどの家庭も白熱して長くなるといいますけど、それは、そういう心情的な部分にも原因があるのでしょうね。
(つづく)
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