鈴木:小さな子供の様子を見ながら作業するのは当然として、子供とお父さんがリビングで遊んでいる様子を見ていたいとか、そういうところまで共有したい。爪先だけでも家族の動きに参加していたいわけ。
藤山:仲間はずれはイヤだと。
鈴木:私だけキッチンに立たされているなんて納得がいかない。カラダだけでも家族のほうを向いていれば、疎外感が多少は緩和される。
藤山:その反対に、家族となんでも共有するのはイヤだという人もいるでしょ?
鈴木:そりゃもちろん。一人で作業に集中したいという人もいる。これまで、お客さんから何度かはっきりそう言われたよ。「調理中の姿は誰にも見せたく ないんです」って。
藤山:恩返し中の鶴だ(笑)。
鈴木:そういう人が全体の2割くらいかな。
藤山:非対面式キッチンも一定の支持があるんですね。
鈴木:ちなみに、普段、旦那さんから少しでも遠ざかっていたいという奥様も、非対面キッチンの熱烈な支持者(笑)。
藤山:そうは言っても、キッチンに立つ人と家族の関係って、いつまでも同じではありませんよね。新築後何年か経つと、あれほどこだわっていた対面式のキッチンが、逆に居心地悪くなる人もいるのではないですか?
鈴木:じつはそうなの。だから、50代、60代でリフォームの依頼をされるお客さんは、非対面キッチンに対する抵抗感が薄れていてレイアウトの選択肢が広がる。子供の様子を見る必要がなくなったからとか、家族となんでも共有するのがイヤになったとか、理由はいろいろあるだろうけど、いずれにしろ対面式一辺倒ではなくなる。あと、音が気になるので対面式にしたくないという人もいるね。
藤山:調理中の音がリビングに漏れるのが気になる?
鈴木:その反対。リビングから聞こえてくるテレビの音が耳障りだとか、子供が弾いているピアノの音が気になるとか。そういうのがイヤになって非対面の壁付きキッチンを要望される。
藤山:若いときに一度対面式キッチンを経験されて、いろいろなことが見えてきたのでしょうね。
(つづく)
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