

藤山:住宅の図面の中に「ワークスペース」という文字を見るようになって久しいですが、こういう場所が一般化したのはいつ頃からでしょうか?
鈴木:昔から「家事室」「ユーティリティー」という名称があったけど、それとはちょっと意味合いが異なるよね。ここでいうワークスペースとは主に奥様のパソコン置き場。小さな子供がいる家庭では、子供の宿題を見てやったり、ミシンをかけたり。そんなことをするスペース。
藤山:メインはパソコン。
鈴木:いやいや、いまそう言いながら気づいたのだけど、そもそものきっかけはパソコンではなくファックスだったかも。家庭用のファックスが普及して、PTAの連絡などがファックスで送られてくるようになって、ファックス置き場を中心としたワークスペースが求められ始めたような気がする。90年代の後半くらいかな。
藤山:子育て関連のあれやこれやを処理する場所として。
鈴木:そうそう。格好良くいえば、「奥様の書斎」。
藤山:お父さんの本格的な書斎は絶滅寸前ですが、代わりにお母さんのワークスペースが生まれた。
鈴木:いまは共働きの家庭が多いからね。お母さんは会社で働き、家で家事もやり、PTAの書類もつくり……大変なんだよ。
藤山:お父さんより忙しい。「書斎くらいちょうだいよ」と。
鈴木:かたや、お父さんは子供と一緒にリビングでテレビゲームに興じている。ゲーム世代のお父さんは、書斎で本なんか読まないんだよ。たぶん。
藤山:お客さんは、最初の打ち合わせ段階からワークスペースを要望されていますか?
鈴木:そりゃもう、マストアイテム。お客さんが書いてこられる要望書のなかに、必ず「ワークスペース」あるいは「PCコーナー」とある。パソコンを置くスペースがほしいといわれるから、「それはパソコンだけじゃなくて、子供の学校のものを準備したりするワークスペースって意味でしょ?」って聞くと、「そうそう、それそれ!」。「あんた、よく分かってんじゃない」って顔される(笑)。