

鈴木:スリッパの起源については諸説あるけど、日本人の生活スタイルに西洋の文化が入ってくる明治以降に定着してきたものというのは確かだよね。ただし、日常的にスリッパを履くか履かないかは、うちのお客さんでも各家庭でまちまち。だから、スリッパの収納についても各家庭で考え方が変わる。ちなみに私は、冬でも家の中ではずっと裸足。靴下も履かない。
藤山:スリッパを履く習慣はないですか。
鈴木:ないねぇ。
藤山:わが家は、私だけ履いてます。
鈴木:なんで?
藤山:キッチンとか洗面の周りって水で濡れているでしょ? それを踏むのがイヤなんです。おそらく私だけなんですけど。
鈴木:ということは、各家庭でというより、個人個人でも履く履かないの違いがあるわけだ。
藤山:ただ、それとは別に、スリッパには礼儀作法みたいなものも組み込まれていますよね。仮に、その家庭でスリッパを履く習慣がなかったとしても、来客のときはスリッパを出して「どうぞ、お上がりください」というのが礼儀のようになっている。あれは、「こんなに汚いわが家を素足で歩かせるなんて失礼ですから、スリッパでも履いてください」という謙遜を表しているのでしょうか?
鈴木:まあ、事実スリッパの裏側は汚れるから、お客さんに履いてもらう意味はあるよね。だけど、お客さんが履いたスリッパをしまうとき、一方のスリッパの中にもう一方のスリッパを突っ込んでしまう家があるじゃない?
藤山:ああ、ありますね。
鈴木:そうすると、片方のスリッパの中は確実に汚れる(笑)。
藤山:おお、言われてみれば。その汚れたスリッパを今度は別のお客さんが履くわけか……。このあたり、礼儀作法の業界ではどういう見解を出しているのでしょうか(笑)。
鈴木:小笠原流とかね。でも、その汚れたスリッパを履かせられるほうは、おそらくそんなに失礼だとは思っていない。
藤山:まあ、そうかもしれません。
鈴木:だから、「スリッパとは何なんだ」と(笑)。
藤山:深いなぁ。この話は日を改めてまたやりましょう(笑)。スリッパの話が出たので、今度はシューズボックス、下駄箱についてうかがいましょうか。鈴木さんは、下駄箱の設計で気をつけていることって何かあります?