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初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

何気なく訪れる建築物も、歴史的な背景やストーリーを知れば、その場所をぐっと身近に感じられるようになります。ヨーロッパの建築を通して、街歩きがさらに楽しくなる建築の見どころをご紹介します。

次世代へつなぐ都市のデザインを知る_人々がより居心地よく感じる街へ (前編)

これまでは、さまざまな建築のデザインに焦点を当て、その魅力をご紹介いたしました。

今回からはさらに視点を広げて、「都市」「街」のデザインとその見どころを、建築のデザインと関連づけながらご紹介しましょう。前編では、人と自然との関わりを大切にしたヨーロッパの街の風景を見ていきます。

豊かな緑が心をいやし、街をより心地よく感じさせる

ヨーロッパの都市では、市街地の中に緑地や樹木などの自然を感じさせるスペースが積極的に取り込まれています。都心部に近いところでも規模の大きな公園や広場が必ずあり、まるで森のような規模のものも珍しくありません。街の中に樹木が多いと、自然の中に移ろう四季をぐっと身近に感じることができます。夏は豊かな緑が木陰を作り、秋には紅葉が目を楽しませる。冬は葉を落とし、芽吹を感じて春を喜ぶ……と、風景を通して季節の変化を感じられ、日々の暮らしに彩りが生まれます。

こちらは、オランダのアムステルダム市街地にある緑地スペースです。手入れのされた芝生と大きな樹木、散歩ができる歩道が整備されています。垣根のすぐ隣には車道があり、交通のための動線と、人々が歩くための動線が明確に分けられているのが特徴です。

天気がよい日、特に夏にはピクニックや日光浴をするために、たくさんの人々がこうした緑地を訪れます。 自然を求めて遠くへ行かなくとも、日常の範囲でくつろげる場所があちこちにあり、人々の心身をいやしています。 De Kruidenpluktuin van de Weteringbuurt Eerste Weteringplantsoen, 1017 RW Amsterdam

都市の中で自然を楽しめるのは、屋外だけではありません。公共的な建築物においても、室内にいながら外の空間とのつながりを感じられるデザインが採用されています。外部に眺められる緑の風景を取り入れられるように窓が配置されていたり、中庭やテラスなどを設けることで、気軽にすぐそばの自然に接することができるような工夫もなされています。

こちらは、第4回でもご紹介した、オランダ・スパイケニッセにあるガラス張りの公共図書館“ブックマウンテン”内のデスクスペースの様子です。

ガラス張りという特徴を活かし、豊かな自然が広がる外の風景を眺められるような空間が設けられています。利用者は自習や仕事ができるスペースとしても、ゆったりと読書を楽しむスペースとしても、自由に過ごすことが可能です。ふと目をやると安らぎを感じる風景が広がり、まるで室内ということを忘れてしまいそうな開放感たっぷりの図書館となっています。

Stichting Openbare Bibliotheek Spijkenisse Markt 40, 3201 CZ Spijkenisse

自然と触れ合いながら豊かな暮らしを送れる住宅建築

住宅建築においても、外部とのつながりを意識したデザインが積極的に取り入れられています。とりわけ特徴的なのは、敷地内の緑地やバルコニーを第二のリビングのように活用できるようなデザインです。バルコニーやルーフトップテラス、地上階で庭があるような物件は特に物件価値が高いものと認識され、人気が集まる傾向にあります。

日本では、物干しなど機能的な面で活用されることの多いバルコニーですが、ヨーロッパでは住宅での過ごし方を豊かに広げる用途として使われています。

こちらはオランダのアムステルダムにある、戸建の個人住宅の例です。日当たりがよく、リビングと直結した位置にベランダが設けられ、窓を開け放てばベランダとリビングが一体になるような間取りになっています。椅子やテーブルが置けるほどのゆとりがあるスペースが設けられているのもポイントです。腰壁がガラスであるため、室内からの開放感を損ねることもありません。

Kea Boumanstraat 周辺 , Amsterdam

こちらは、オランダのアムステルダムにある集合住宅地の住宅建築。

各住戸をずらしながら配置することで、プライバシーを保ちやすくしているデザインが特徴的です。また、こうした配置には、室内に日光を取り込みやすいというメリットもあります。集合住宅の上階では、自由に使えるバルコニーを持たない住戸も多くあります。ですが、このように共用の庭や緑地を設けることで、多くの人が自然と触れ合う暮らしを送れるよう配慮されているのが見て取れるますよね。

Lampenistenstraat 周辺 1019 TH Amsterdam

街並みを整える機能的な役割を持つ街中の自然

日本などの大都市を見ると、人工的な建築物が密集して息が詰まってしまうような風景になっていたり、居住環境に恵まれない住宅が生まれていたりすることも少なくありません。一方でヨーロッパの都市では、樹木や緑地、庭をクッションとして活用することで、街中に程よい余白を持たせています。

こちらは、ドイツのベルリンで撮影した住宅街の一角です。撮影したのは3月で、春を迎える直前でした。 ヨーロッパの住宅地では、このように敷地内に広い緑地スペースや中庭が設けられていることが一般的です。外庭は隣棟との距離を空ける目的、中庭は建物内のどの住宅でも日当たりを確保できるようにする目的があります。都市の中の緑は心をいやすためだけでなく、こうした機能的な意味も持ちながら、建物と関連づけられて配置されています。

こちらが、7月に同じ場所を撮影したものです。冬季には少し寂しげな風景でしたが、夏には隣の建物が見えなくなるほど青々と葉が茂りました。窓から見える風景もまったく違うものになり、街の印象が一変します。

Alt-Tempelhof 44 周辺 12103 Berlin

都市の中に自然を取り入れ、また建築にもそれらの自然を感じられるデザインを採用することで、より過ごしやすい街が実現されている例をご紹介しました。心身を健やかに保つために、私たちの暮らしと自然は切っても切り離せない関係にあるといえるでしょう。

後編では、環境への配慮や、人と街がよりよい関係を築ける工夫がなされた街づくりの見所をご紹介していきます。

初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

オランダ・アムステルダム在住のインテリアコーディネーター/ライター/バイヤー。約10年間住宅・店舗の設計、インテリアコーディネーターとして従事したのち、より本物の建築やデザインに触れたいとの思いから渡欧。これまでに15ヶ国の建築や見本市、ショールームを巡り、現地を通した建築・インテリアデザインのテクニックやライフスタイル情報をライターとして発信中。フリーランスのインテリアコーディネーターとして日本の住宅やリノベーションプランのデザインも手がけています。建築やインテリアを通して暮らしが楽しくなるヒントを日々集めています。

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