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初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

何気なく訪れる建築物も、歴史的な背景やストーリーを知れば、その場所をぐっと身近に感じられるようになります。ヨーロッパの建築を通して、街歩きがさらに楽しくなる建築の見どころをご紹介します。

日常を支える住宅建築とインテリア|世界の住宅事情(前編)

住宅は、その国や地域における人々の日常がもっとも現れるもののひとつです。住みよくするためのさまざまな工夫を見ると、現地の人々が住まいや暮らしをどうとらえているか、知ることができます。海外で「常識」とされている住宅の在り方のなかには、私たち日本人があっと驚くようなものもあり、日常文化の違いから、新たな発見ができることもあります。


今回から2回に分けて、世界の住宅事情をご紹介していきます。前編では、住居としても古い建物を大切にする文化やDIYに焦点を当ててみましょう。


古い住まいを受け継ぐ文化が浸透しているヨーロッパ

ヨーロッパでは、住宅は築年数が古いほど、物件的な価値が高いとみなされる傾向にあります。歴史のある一棟一棟が街並みをつくり、国や都市のアイデンティティを生み出しているととらえられているためです。そのため、築古の物件を人々が修復しながら受け継ぐ文化が浸透しています。こうした文化を背景に、ヨーロッパでは100年以上前に造られた住宅が現役で使われることも一般的です。

例えば、こちらはベルギーのブルッヘ(ブルージュ)にある歴史地区の一角です。年月の経過により、くすんだ外観からは、歴史を経た建築ならではの趣が感じられます。15世紀頃からある建物ですが、今もなお住宅として残っています。


外観だけでなく、住宅内部でも数百年以上の歴史を感じる部分を見てみましょう。

こちらはオランダのアムステルダムにある、アパートメント式の個人宅の階段です。いたるところの塗装がはげ、長く使われてきたことがひと目でわかりますよね。私たち日本人の感覚では、「古いものより新しいもののほうが見栄えがいい」と、つい思ってしまいがちです。ですが、古い建物には、人々が手をかけ、大切に受け継いできた証が各所に残っています。リノベーションのたびに傷が刻まれた柱・梁などの躯体や、何度も塗装が重ねられた跡、年月による素材の色の変化。新しいものには感じられない風合いは、何とも味わい深いものがあります。


自分たちの手で住まいを造る・改修するのが「常識」

近年、日本でも「DIY(ディーアイワイ)」という言葉が知られてきていますよね。これは「Do It Yourself」の頭文字を取ったもので、「自分自身で(何かを)する」という意味です。ヨーロッパでは、この「DIY」がごく日常的に行われています。簡単な補修はもちろん、一から住宅を造り上げるまでの工程を自分たちの手で行う場合も。専門業者に全部お任せしてしまうことが多い日本とは大きな違いですよね。

こちらはドイツにある大手のホームセンター「Bauhaus」です。ヨーロッパの多くのホームセンターでは、「こんなものまで手に入るの?」と思うような専門的な材料も豊富に販売されています。色柄のバリエーションが豊かな壁紙や、水回りのインテリアに欠かせないタイル、バスタブやトイレといった設備まで。そして多くの人が、それらの材料を使って自らの手で施工しています。 ドイツの一部の地域では、市が運営するカルチャー教室で、タイル貼りや大工作業といったDIYのワークショップが開かれているとのこと。 市民が施工スキルを身につける機会も幅広く用意されているんですね。


賃貸物件であってもDIYが可能

日本の賃貸住宅では、自由に内装を変えられる物件はまだそう多くありません。一方、ドイツやオランダでは、貸主に許可を得られれば改装が可能な賃貸物件が多くあります。さらに、これらの地域では、工事をしなければ住める状態にならない、DIYを前提とした賃貸物件も。その一例が、床材が貼られていないケースです。入居時には自分で材料を調達したうえで、業者の手配をするか自ら施工しなければなりません。さらに、そうした物件の場合、退去時には床材を剥がした状態で引っ越しをするという決まりになっており、再度入居者自身による工事が必要になります。

こちらはオランダのホームセンター「Karwei」にある、水まわりや床材の商品コーナーです。初心者でも施工がしやすい、DIY向けの商品が豊富にそろっています。各コーナーでは、このように施工の仕方や、商品の選び方が視覚的にわかりやすく展示されているのが特徴です。

そしてこちらは、ドイツのホームセンター「Bauhaus」の水回りコーナーです。ドイツでは、キッチンは家具と同じ扱いのため、入居時に自らが設置をしなければいけない物件もあります。そして、床材と同じように、そういった物件では退去時にはキッチンも一緒に引っ越しをしなければいけません。改装には相当な手間と時間がかかりますが、自分好みに内装や水回りをアレンジできる楽しみがあります。賃貸物件であっても、入居者のオリジナル性がある住まいに改装できるのは、日本にはないユニークな文化ですよね。


住んでいて「心地がよい」空間を積極的につくる

こちらは、オランダのインテリア雑誌『vt wonen』が主催した、2018年の展示会で撮影した1枚です。 カラフルな色見本は塗料メーカーのブースのもので、多くの人がサンプルを求めて集まっていました。壁や家具の塗り替えや古い素材を補修するために、塗料はヨーロッパでは身近な材料のひとつです。オランダの人々は、ただ単に「古くなったから」というだけでなく、「気分転換をしたいから」「買い替えた家具に合わせるため」といった理由でも、気軽に壁を塗り直します。普段は倹約家のオランダ人ですが、「衣食住」の「住」にはお金をかける文化があるようです。自分が心地よくいられる空間を目指し、インテリアコーディネートを日常のなかで積極的に楽しんでいます。


ヨーロッパで多く見られる、古い住宅を活かしながら受け継ぐ文化や、DIYなどのインテリア事情についてご紹介いたしました。海外の街を訪れると、ふとした瞬間に、その土地の住宅や、そこに住む人々の暮らしが気になってしまうこともあるでしょう。住宅文化の背景を少しでも知っておくと、実際に街を訪れた際に見所を発見でき、散策する楽しみも広がります。後編では、世界にあるユニークな住宅や、モダンなデザインの住宅などをご紹介します。

初心者でも楽しめる!世界の建築を楽しむ街歩き

オランダ・アムステルダム在住のインテリアコーディネーター/ライター/バイヤー。約10年間住宅・店舗の設計、インテリアコーディネーターとして従事したのち、より本物の建築やデザインに触れたいとの思いから渡欧。これまでに15ヶ国の建築や見本市、ショールームを巡り、現地を通した建築・インテリアデザインのテクニックやライフスタイル情報をライターとして発信中。フリーランスのインテリアコーディネーターとして日本の住宅やリノベーションプランのデザインも手がけています。建築やインテリアを通して暮らしが楽しくなるヒントを日々集めています。

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