Images

ひとの家見て、わが家を直せ。

がんばって家を建てた人の裏話ほど素敵な話はない!
片づけ・収納設計で人気の建築家と建築専門誌元編集長の聞きたくても聞けない家づくり事情。
会員限定

【第83回】読者のお悩み相談 結露その他編(3)

藤山:では、つぎのお悩み。


miyamiyaさん

「洗面所(洗面ボール)は、陶器と人工大理石とどちらがいいですか。20年後も考えてください。洗面所は引出しタイプだと収納が少ないような気がしますが…。洗面所もキッチンも値段にすごい差がありますが、何がそんなに違うのでしょうか」洗面室に関するお悩み3連発。「陶器と人工大理石とどちらがいいですか」とありますが、この場合は何をもって良い悪いを判断すればよいのでしょう。


鈴木:耐久性で勝負するなら陶器の勝ち。100年経っても陶器は陶器。人工大理石は大理石といっても人工のアクリル樹脂だから、結局はプラスチック。耐久性の勝負では分が悪い。そうはいっても、陶器にも人工大理石にもそれぞれランクがあって、人工大理石にも高いものから安いものまである。最高級品は医療用などにも使われていて、硬度が高く傷がつきにくい。安いものは見るからに安っぽいプラスチック。それは陶器も同じ。最高ランクと最低ランクがあるから、どのランクとどのランクを比べるかで良し悪しも変わる。

藤山:でも、一般的には陶器のほうがいいですよ、と。

鈴木:一般的にはそうだね。

藤山:別にリクシルさんに気を使っているわけではないですけど(笑)。

鈴木:つぎの、「引出しタイプだと収納が少ない」というのは、既製品の洗面台の引出しのことかな?

藤山:おそらくそうでしょう。

鈴木:たしかに、洗面室っていろいろな形のもの、特に化粧関係、美容関係のものが多く収納されるけど、それらの高さや大きさってまちまちだから、引出しの中にそのまましまうと確実にデッドスペースができる。そういう意味では「収納が少ない」というのはたしかにそのとおり。かといって、洗面台の下ががらんどうで観音扉がついているだけのタイプも、それはそれで工夫をしないとデッドスペースができる。


藤山:結局、どちらもそのままでは使いづらいってことですね。

鈴木:既製品の収納はどのようなものでも、工夫次第で良くなったり悪いままだったり……だね。

藤山:ちなみに、この手の収納の工夫は丁寧に解説している書籍やウェブサイトがたくさんありますから、そちらを参考にしてもらうといいかもしれません。


最後、3つめのお悩み。

「洗面所もキッチンも値段にすごい差がありますが、何がそんなに違うのでしょうか」とありますが……。


鈴木:これは「リクシルさんにお尋ねください」がベストの答えだろう(笑)。

藤山:材料のグレードが違うとか、そういうことですよね、きっと。

鈴木:実をいうと洗面台もキッチンも、普段の設計で既製品を使うことがほとんどないから、私はそのへんの事情にあまり詳しくない。きちんと答えられなくて申し訳ないです。

藤山:では、つぎのお悩み。これも、「どっちが良いですか?」系です。


みっちーのパパさん

「節電意識が高まるなか、太陽光発電や薪ストーブに注目しています。本当に節約になるのは、太陽光発電それとも薪ストーブ、どちらでしょうか?」


鈴木:なるほど。このお悩みは郊外と市街地ではかなり条件が異なるからなぁ……。まず太陽光発電だけど、これは太陽光パネルをかなり広い面積で設置しないと期待以上の効果は上がらない。いまは中国製、韓国製のパネルも普及し始めてだいぶ価格が下がってきたけど、それでも設置にかかるイニシャルコストを売電で取り戻すのはなかなか難しい。「自分は電力会社から電気を買うのがイヤだ」みたいな確固たる主義主張があって設置するなら別だけど、元を取ろうとして設置するのはあまりおすすめしないです。特に都市部では隣家の日陰になる時間帯があるようだと発電効率がかなり下がるから。

藤山:節電はともかく、お金の節約という意味では期待しないほうがいいかもしれませんね。薪ストーブはどうですか?


鈴木:これは、基本的には趣味のものだと捉えたほうがいい。特に都市部では、煙突から煙が出るせいで近隣からのクレームが多い。使うときの時間、曜日に制約が出るよね。あと、煙突の掃除を怠ると火災の原因になるから、少なくとも年に1回、屋根に上って掃除をする必要がある。専門の業者に依頼して毎年3万円くらいの出費。それから、燃料となる薪が手に入りにくい。うちのお客さんで薪ストーブを使っている人はどうしているかというと、当初は山に行って「軽トラの荷台いっぱいに積んで○円」みたいな単位で薪を買っていたらしいのだけど、だんだんその費用がバカにならなくなって、近頃は自分で山に行って、貰えるところを見つけて、自分で適当な長さに長さに裁断して、運び、自宅の軒下にぐるっと一周積んで、乾燥させて使っている。毎年春くらいから冬の薪の仕込みを始めている。

藤山:伐採する木は、誰が所有している木なんですか?

鈴木:街路樹を剪定したときに処分した枝があるじゃない?あれをまとめてストックしている場所があるわけ。そこに出向いて、必要な分だけ自分で小さく切って持って帰る。それはタダなんだって。だから、燃料の薪を確保する作業をいとわない人、なおかつその作業を趣味として楽しくやれる人。そういう人でないと長続きしないかな。

藤山:では、太陽光と薪ストーブを比較すると?

鈴木:どちらも節約にはならないかも(笑)。でも、「憧れ」という点では、ぜひ薪ストーブにチャレンジしてほしい。火を眺めて過ごす時間ってすごく贅沢だからね。家づくりって節約のことだけ考えていたらつまらないもの。

藤山:たまには贅沢もしないと。


鈴木:もし、太陽光や薪ストーブに使うお金があるなら、そのお金を断熱工事のグレードアップや窓ガラスのグレードアップに回せば、真冬でもほぼエアコン1台で過ごせる家ができる。それがいちばんの節約じゃないかなぁ。だけど、現実には建物の性能そのものにお金を掛ける人は少なくて、つい目先の便利系設備機器なんかにお金を使ってしまう人が多い。

藤山:電気代を節約したければ建物の性能を上げましょう、ですね。

鈴木:意外と知らない人が多いのだけど、あらゆる冷暖房機器のなかで本当に効率がよくて節電になるのはエアコンなんだよ。エアコンがいちばん電気を食わなくて効率がよい。それをうまく生かすような家づくりができれば、なにより経済的ということだね。



(つづく)

記事をすべて読むには 会員登録 が必要です

一覧へ

ひとの家見て、わが家を直せ。

(鈴木 信弘)一級建築士。神奈川大学工学部建築学科非常勤講師。1990年、横浜市に一級建築士事務所「鈴木アトリエ」を開設。収納・片づけに関するノウハウと生活者の視点に立ったきめ細やかな設計提案で世代を問わず人気を集める。2013年刊行の著書『片づけの解剖図鑑』(エクスナレッジ)は、散らかりにくい家のしくみを建築設計の視点で分析した“異色の片づけ本”として一躍ベストセラーに。いま注目の建築家の一人。

(藤山 和久)編集者。建築専門誌「建築知識」元編集長。2004~2015年、株式会社エクスナレッジに在籍。これまで延べ1,000人以上の建築士、業界関係者を取材。その豊富な経験をもとに、一般向け書籍でも数多くのヒット作を世に送りだす。2009年刊行の『住まいの解剖図鑑』(増田奏・エクスナレッジ)は、家づくりの入門書として絶大な人気を誇るロングセラー。著書に『建設業者』(エクスナレッジ・2012年)など。

【第84回】読者のお悩み相談 結露その他編(4)

がんばって家を建てた人の裏話ほど、素敵な話はない!片づけ・収納設計で人気の建築家と、建築専門誌元編集...

【第82回】読者のお悩み相談 結露その他編(2)

がんばって家を建てた人の裏話ほど、素敵な話はない!片づけ・収納設計で人気の建築家と、建築専門誌元編集...

【第81回】読者のお悩み相談 結露その他編(1)

がんばって家を建てた人の裏話ほど、素敵な話はない!片づけ・収納設計で人気の建築家と、建築専門誌元編集...
Icon SVG

関連記事